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「貪欲に、獣のように、愛し合おう」満たされぬ感情に涙して…

幻冬舎ゴールドライフオンライン

※本記事は、水無飛沫氏の小説『残滓』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

【前回の記事を読む】【小説】「約束通り、お前は私のものだ」…

孤蝶

夢……。滑るように口をついた、今しがたの己の言葉を思い出す。己は、一体どのような夢を見ていたのか。そもそも夢など見ていたのか。――胡蝶の夢。古い言葉が頭に浮かび上がる。現実と夢の違いなど、一体誰に理解できようか。

「ええ、これこそが夢の方」

ドキリとして彼女と目を合わせる。パチパチと燃え盛る火に照らされたその姿はとても幻視的で、(……あぁこれは夢なのか)と納得させられるだけのものがあった。そうであるならば……。そうであるならば、我らはまた別れねばならぬ。いつ目が覚めるともしれぬ、この刹那が悲しくてならない。

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「そう悲しむな。お前さんが求めてくれるのならば、私はいつだって会いに来る。けれども、お前さんからでなければならぬ」

己からでなければならぬ、と彼女は言う。まったくもって意地の悪い話だ。それでいて律義な女だとも思う。そんないじらしく不器用なところが、どうしようもなく愛おしくてしかたがない。

「己はいつだってお前を求めている。会いたいと思っているさ」

「夢に見るほどに、か」

目を細めて彼女がくすりと笑う。

「私は、嬉しかったのだよ。お前さんの言葉、お前さんの想いが。たとえそれが一時の気の迷いだったとしても構わぬ。お前さんが飽くまで、私を愛してくれればそれでよい」

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