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アルピー平子祐希「踏ん張ることをやめた」諦めることで気づいた、自分たちの才能

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平子 あれが素なんですよね。フラットな目線でフラットな話をフラットにし続けるのが僕自身の偽らざる姿であり、無理してない姿であって。自分でも思いますよ。芸人というフィルターを通したら、俺ずっとなにもボケてねぇなって。それはもちろん知った上でやってますけど、一周回ると自分でそれが楽しくなってくるし。っていう大ボケの可能性もあるし。

自分でも、ボケてるのか素なのか、わかんないんですよね。でも人間みんなそうですもんね。今、本音ででしゃべってんのか、上っ面の皮一枚かぶってしゃべってんのか、みんなわかってない。もったいぶってるだけで、僕もその中の普遍的なひとりなんだと思います。

──まさに今、どっちなのか戸惑ってます。打席に立つ回数が増えて、苦手だったことができるようになったり、逆にどれだけやっても苦手なことがわかったりというのはありますか?

平子 まず、大人数でしゃべるのは本当に苦手ですね。2~3年前まではあがいてたんですけど、この歳になっても苦手だってことは今後も克服はないなと割り切れました。43になってそこにかける時間があったら、照準絞っていったほうが良いなって。

芸人然としたかっこよさへの憧れがあって、でも僕はそこにいけなくて

──それでいうと、TVの予算が少なくなってコロナ禍もあって、大人数の番組は減ってますよね。結果として『バラバラ大作戦』のように尺は短くても自由度が高い枠ができたり、少人数でじっくり話す番組が増えたりしている。その状況は、今アルピーさんの仕事が増えていることと関係してるんじゃないでしょうか。

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平子 たしかに。だから多分、TVがラジオ的になってきたんですよね。それは大きいと思います。しゃべる時間も長尺でこっちに任せてもらえたり、少人数である程度の長さの番組を回したり、すごくラジオ的だなって。

──そうなると“ラジオスター”は相性がいい。

平子 芸人って、「否定笑い」と「肯定笑い」の大きくふたつに分けられると思ってて。否定笑いがなにかひっかかりをつくってケンカするとか誰かを蔑んでワーっとやるタイプだとしたら、肯定笑いは、一瞬空気がふわっとなってなにか知らないけど笑える、面白いというよりはおかしみにつながっていくようなタイプ。

今まではずっと否定笑い全盛期だったと思うんです。それは良し悪しじゃない。ケンカして罵ってそこから生まれる化学反応でもってバラエティが回っていた時代で、僕もそれが好きで観て育ってきました。でも僕、圧倒的な肯定笑いなんですよ。深夜帯で、一生懸命ケンカの図式をつくろうとしてた時期もありましたけど、やっぱり向いてないんですよね。だからもう、そっちでいこう、と。それも諦めのひとつなんですけど。そうしたら、ちょうど世の中全体的に、なにかを否定しづらいようになってきた。

お笑い業界も多分すごく大きな変革期で、個人の人権や人格を守っていこうって声がバラエティにもガッツリ届いて、そういう立ち回りが求められるようになった。僕は前からそうだっただけで、そこに立ってたらボールが転がってきたみたいな状態です。だから“ごっつぁん”なんですよね、結局。自分の技術が上がってるなんてことは本当に謙遜なしでゼロなんで。

──たまたま時流がめぐってきただけだ、と?

平子 僕の手柄ではないんでねぇ。「肯定おじさん」として呼ばれてる感じはしますね。芸人としての仕事を果たしているかっていうと、果たしてないし果たせてないし、果たせるだけの器量もない。また時流が変わったら消えるんでしょう。

──「肯定おじさん」(笑)。じゃあ平子さんが考える、時流に関係なく芸人として手柄を立てる理想形はどんなものですか?

平子 あー……でもやっぱり、パンイチで泥まみれのときかなぁ。パンイチでCCDカメラついたヘルメットかぶるときはハッとしますけどね。「今日、正装だ」って。僕が見てきた世代の方々のユニフォームなんで。

──ちょっと意外です。

平子 芸人然としたかっこよさへの憧れがあるんですよ。僕はそこにいけなくて雰囲気ものに逃げてた芸人なんで。芸人然とした人たちに強く憧れてて、でもそうはなれないから「最初からこっちがやりたかったんだよ」ってごまかし方でずっと逃げ続けて、そうしたらなんの因果か、そんな芸人が太田プロに入ることになった。聖地ですよね。有吉さんがいて土田さんがいて、みんながワーってやってグチャーってなってるその上にダチョウさんがいて。そこで一緒になってパンイチでCCDつけて泥まみれになったとき、すごく高揚したのを覚えています。「俺、やらせてもらえるんだ」って。

ホースから唐辛子水を吸い込んでむせて、鼻にわさび入れられて泣いて……なんだろう、感覚なんでちょっと説明難しいですけど、芸人にとってのエルメスなんですよ。「俺、エルメス持ってていいんだ」みたいな。その感覚はすごく覚えてますね。僕みたいにやれそうにない奴がやるっていう振り幅の部分を、先輩たちに教えてもらった。そういうネタバラシをしちゃうと醒める人もいるでしょうけど、それは僕にとって宝みたいになってます。その後ろ盾があるから、今、朝でも昼でもやれてるのかもしれません。芸人然とした仕事をしていなくても、俺はあの人らとそういうことをやってるし、できるんだからなって。

酒井は「ベネチアのレザー」のような高級品

──もともとコンビとして「天下を獲りたい」という意識はあったんですか?

平子 「いつかゴールデンでMCやるんだ」なんて言ってましたけど、じゃあゴールデンのMCやってひな壇を回したいかって言ったらそうじゃないし、回せないのも知ってるんで。ゴールデンなのに3人くらいしか出ない番組を回したいです。いずれ本当にそういう番組ができてきそうな気がするんですけどね。お金がないとかコロナとか、いろんな理由で。

なんにしてもやっぱりTVがやりたいなっていうのはありますね。メディアもコンテンツも多様化してるし、僕らもネットもやってるけど、本陣はTVにこだわりたいです。局行って子供のころ見てた人たちと一緒に仕事して、「なんでこの人は俺のこと知ってくれてるんだろう」とか、そういう高揚感はやっぱりTVじゃないと味わえないんで。

──意外とミーハーなんですね。でも、その志向はコンビでズレがない印象です。

平子 うん、そうかもしれないですね。そんなことしゃべんないですけど、向こうも「ネットに力入れて食っていこう」って感じじゃないのはわかるし。

──酒井さんについては以前、「まだどこの現場に行っても一番後輩のことが多くて、空気読んで出てないだけ」「本人がピックアップされはじめたら勢力図が変わる」と言っていました。状況は変わってきていますか?

平子 バレてるパーセンテージは格段に上がってると思いますね。制作サイドの人にも知られはじめてますから。もともと我が我がの人間じゃないし、そうじゃないから僕も一緒にやってこれた。だけど、ツッコミは相当うまいですよ。声を押さえた状態でも届く人には届いてる。ゆっくり気づかれるタイプじゃないですか? ここから徐々に歳取って、現場で一番年下だったのが真ん中になって、担わなきゃいけない年齢や立場になったとき……そうすね、酒井が52ぐらいのときですかね。

──だいぶ先ですね(笑)。

平子 プロの目に気づかれて徐々に紹介されていくタイプの人間だと思うんですよ。だから、高級品ですよね。イタリアのレザーメーカーみたいな。ベネチアの北のほうでやってる小さな工房のレザーメーカー。感度の低い人には届かないけど、現場で毎日レザーに触れてる人にはいかにそのステッチが優雅か、なめしの技術が高いものかっていうのが伝わる。

──ベネチアのレザーメーカー……? でもたしかに、ローカル局やラジオから着実に積み上げている状態は通じるところがあるかもしれない。

平子 僕、酒井って日本一の勝ち組だと思ってるんですよ。サウナとかサッカーとか自分の好きなものが仕事になって、楽しそうに自分のペースで仕事して裏では「酒井さんすごい」って言われて、奥さんできて子供生まれて、個別インタビューで相方にほめられて。ゴールデンのでっかい番組でバーンとハネてパツーンと消える人はいっぱいいますけど、あの位置入ったら長いですからね。だって制作サイドのプロが気に入ってるから。ネットから地方から、血気盛んなディレクターたちが「新しい番組立ち上げよう」「誰にお願いしようか」ってなったときに、酒井に白羽の矢が立ってるわけで。そこで名前が上がることのすごさはありますよね。

──本当にめちゃくちゃほめるじゃないですか。酒井さんが52歳になるまであと14年あります。ここからアルピーさんがTVの世界に残り続けるためにはなにが必要だと考えていますか?

平子 うーん………今残ってる人ってそこ考えてないような気がするんですよね。売れるため、生き残るために努力していろんなことに興味を持とう、こういう枠組みで戦ってみようって頭で考えてやってもうまくいかないんだと思います。今残ってる人たちは、いろんなものに興味があって人間が好きな人が多い。否定笑いを成立させられるのも、人間を肯定していて長所を見抜けるからなんですよね。だからこそ短所をくすぐることができる。

僕も人間に興味があるし、いろんな人の話をじっくり聞くのが好きです。そういう番組をやってみたいとも思う。でもそこのレベルでいうと僕は2ぐらいのもんで、冠番組持ってやり続けてる人たちは1000超えてますからね。そういう仕事をやればやるほど、あの連中がいかにバケモンかをただ知るだけの作業でちょっとぞっとする。「すごいな」って、「追いつかないな」って毎回思いますね。


周りを信じる力が身につき、踏ん張ることをやめたんです

周りを信じる力が身につき、踏ん張ることをやめたんです

アルピー平子祐希

──さきほど、今はたまたまボールが転がってきているにすぎないと言われていましたが、今のアルピーさんはどういう状態なんだと思いますか? なにかの道程の途中にいるのか、あるいはすでにひとつの完成形になっているのか。

平子 完成か……たぶん、もう完成してますね。自分たちが気づいてなくて「もっと完成させなきゃ」ってあがいてただけで、何年も前から実は完成はしてるんだと思う。下手したら12、13年前にしてたんじゃないですか。それをどの角度で見てもらうかって問題だったんだと思います。

僕らの場合、そこで周りの存在が大きいですね。周りが「この角度のほうが映えるよ」って勝手に動かして、いい角度を見せてくれてる。自分らではどの角度がいいかなんてまったくわかんないんですよ。酒井もたぶんわかってない。周りのスタッフさんや先輩、後輩、事務所の人、リスナーやファンの人たちが、俺らが訳わからず直立不動で立ってるところをステージごとぐるっと回してくれてる感じですね。

──そこで「違う、俺たちはこう見せたいんだ」って踏ん張ることが尖りなんですかね。

平子 そう、その救いの手は昔からあったのに、踏ん張っちゃってた。それをやめたんですよ。そこから少しずつ、ちゃんと光が当たる角度に回してもらえるようになった。本当に俺らはそれだけですね。

──なぜ踏ん張らなくなったんでしょう?

平子 なんでだろう。それこそ年齢なのかなぁ。でも、周りを信じる力が身についたんでしょうね。周りの人が言ってくれることを信じて委ねられるようになって、踏ん張らなくなった。それはそれで才能が必要だと思うんですよ。回してもらえる才能は僕らすごいあると思います。下手したらそれだけですね。

芸人って、ある程度の年齢がきたら感度や感覚は落ちていく一方で、そこからは面白くなっていくんじゃなくてごまかし方がうまくなっていくんだと思うんですよ。経験値がついて、その場をどうにか取り繕う力が身についていくだけで。だから僕らが年々面白くなってきたとかじゃない。ただ回してもらえる才能はあった、ってことなんでしょうね。

──そう考えると、歳を取るのもいいことだなって感じがします。

平子 そうでしょうね。というか、踏ん張れなくなるんですよ。「踏ん張らなくなった」って、いい感じで言いましたけど。

──踏ん張るのも体力いりますからね。

平子 そう。「よし、こいつら力衰えてきたな、今なら回せるぞ」って周りがなって、「あ! 光当たってる! もっと早く回してもらえばよかったんだな」って、老いた体で今思ってるだけかもしんないすね。

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