6月11日と12日に行われた第33回日本パラ陸上競技選手権大会。2024年5月に開催が予定されている、パラ陸上の世界最高峰「世界パラ陸上競技選手権大会」と同じ神戸総合運動公園ユニバー記念競技場が会場だ。
各クラスの全日本チャンピオンを決める大会初日は、小雨が降る時間帯はあったものの、ホームストレートに追い風が吹く好条件。車いす選手にとって「漕ぎやすい硬さのタータン」とも言われ、世界パラで世界記録続出の楽しみが膨らむ大会になった。
ここでは陸上競技の花形100mに注目。国内のライバルと競い合い、高め合いながら、来年と再来年に開催される世界選手権、そして2024年のパリパラリンピックで表彰台を目指す選手たちを紹介したい。
日本のパラ陸上を盛り上げる新ライバル対決

T46(上肢障がい)の石田駆にとって今年は挑戦の年だ。昨年の東京パラリンピックは(T46よりも障がいの軽い)T47の選手とともに100mに出場。専門は400mだが、東京大会で11秒05をマークして5位と好成績だった。
「パリパラリンピックはいい色のメダルを獲りたい。だからいまは自分に合っている練習は何なのか、100mと400mの両立を図りながら探っていきたい」と抱負を語る。現在は400mのスピード強化にもつながる100mに力を入れている。

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そんな石田は5月のジャパンパラ陸上競技大会と、この日本パラの100mで見せ場を作った。京都教育大学に通う21歳の三本木優也と接戦を繰り広げたのだ。ジャパンパラでは三本木が勝ち、日本パラでは石田が勝った。パラ陸上界の新たなライバル対決はスタンドを大いに沸かせた。
「ライバルは絶対に必要な存在。今日は僕が勝つことができたけれど、三本木くんが別の大会で10秒90の好タイムを出したことも知っている。僕も(練習の成果で)確実に10秒台が出るところまで来ている。好条件の中でまた勝負ができたらうれしい」
今大会、11秒06で駆け抜けた石田は次の対決に期待を込めた。
T45、T46、T47の100mは同組で行われることが多いのだが、試合後、石田よりひとつ障がいの重いT45クラスで優勝した三本木は、同走の石田に敗れて悔しがった。
「一着でゴールすることが大事だったので……負けたことは正直に言って悔しい」
実はこの日、世界記録を狙っていたという三本木。記録は11秒11。コンディションなどが嚙み合わず「弱さが出た」と振り返り、ライバルに敗れた悔しさと狙ったレースで自己ベスト以上を出せなかった悔しさによる、二重のもどかしさを隠せなかった。
