それでは「自我消耗」を抑えるためにはどうすればいいのか。答えは意志力を鍛えるしかない。そのためには意志力を必要とする状況を繰り返すことが必要であり、常に物事をポジティブに考えることが求められる。
そこで、気軽にでき、すぐに行動に移せるトレーニングといえば運動だ。まずは自分で確実にやれること、例えば短時間のウォーキングなどを始める。それを毎日繰り返すことで、実行機能が高まる。定期的に運動をすることで、意志力は確実に鍛えられていくことだろう。
「やろうと思えば確実にできること」を習慣的に行うことが意志力を鍛えるコツですが、運動によって意志力を鍛えることには、他の方法よりも大きな効果が期待できるでしょう。というのも、セルフコントロールは、運動することで鍛えられる実行機能の働きの1つだからです。実行機能は「はっきりとした目的のある行動を計画・実行・コントロールする脳機能の総称」であり、セルフコントロールも脳に実行機能が備わっていればこそなせるワザです。実際、実行機能を構成するワーキングメモリー・抑制・認知の柔軟性それぞれの働きが優れているヒトほど、高い意志力を示します。(書籍から抜粋)
カラクリ5
運動を習慣化するための【脳がよろこぶ運動マニュアル】

運動すれば脳へ良い影響があることは分かったが、運動を始めてみたものの続けていくのはなかなか難しい。継続して運動をするために、どのような心構えでいればいいのだろうか? それが本書の中で8つのリストとしてマニュアル化されているので、それぞれの注目ポイントを紹介する。
①何はともあれ有酸素運動
脳への良い効果を生み出すには、とにかく有酸素運動が必要。ウォーキングでもジョギングでも、ちょっと息が弾むくらいでいいので、普段から有酸素運動を取り入れることを心掛けよう。
②5分だけでもかまわない
わずか5分ほど運動するだけでも脳へ良い効果が表れるとの研究結果がある。仕事帰りにちょっとだけ長く歩くなど、ちょっとした行動が効果を生み出す。
広告の後にも続きます
③なるべく早めの運動を
午前中または午後の早い時間に運動をすると脳への効果もアップ。ちょっと早起きして軽く身体を動かすと、仕事の効率も上がる。
④できることなら自然のなかへ
自然の中は「フィトンチッド」という生物活性物質で溢れており、リラックス効果やストレス軽減、さらには免疫力も高まる。運動するなら近くの公園でもいいので、緑があるところを選ぼう。
⑤継続はやっぱり大事
運動することによる脳への良い効果は、単発よりも継続的にやるほうが効果を発揮し、根本から変わってくる。やはり、なんでも続けることに意味があるのだ。
⑥自分で効果を検証する
運動を継続するために、自分がどのような気持ちのときに前向きに身体を動かしているかを検証してみるといい。例えば運動をした後にすっきりとした気持ちになるか、イライラが解消されるかなどを検証するのが運動を続ける動機になる。
⑦気持ち良さを感じる
運動をして気持ち良さを感じることが、継続するための大きなポイント。運動する時間やどの程度の強度で身体を動かすと心地良いのか、自分で探りながら運動を続けるのがおすすめ。
⑧ノリノリで身体を動かす
めんどくさいと思いながら運動するよりも、ノリノリの気持ちで身体を動かすほうが脳への効果も大きい。ポジティブな気持ちで身体を動かそう。
本書を読んで、体を鍛えることが、どれだけ脳を喜ばせ、絶大な影響があるのかがよく分かった。まずは5分からでいいので身体を動かす。そうすれば脳の実行機能が鋭敏に磨かれ始める。そして運動を続けていくことで、なりたい自分へと近づき、生活の質も高まっていく。人生がより豊かなものになっていくのだ。
text by Jun Nakazawa
photo by Shutterstock
<参考図書>
『頭を良くしたければ体を鍛えなさい 脳がよろこぶ運動のすすめ』
陳冲、望月泰博/中央公論新社
医学博士の陳冲、理学博士の望月泰博という二人の研究者が、世界中で行われている脳や心の様々な研究例をはじめ、自身の面白いエピソードなどを交えながら運動することで脳にどのような良い効果を与えるかを厳選して記した一冊。