
image credit:NASA/JPL-Caltech/MSSS
赤茶けた火星の地表からニョキニョキと生え出ているねじれた構造物。実に興味深い光景である。これぞSF的異世界だ。
生命の可能性を探るためたった1機でこつこつと火星を探る探査機ローバー「キュリオシティ」が発見したものだ。
前回の「花のような岩」に引き続き、頑張っていろいろ探し回っているようだ。
この物体は、硬質な岩でできているのだが、飴のように引き延ばされ、ねじられたような形を保っているところが不思議でもある。
火星探査機キュリオシティが撮影した奇妙な形の岩
先月26日NASAとSETI(地球外知的生命体探査)研究所が、火星の無人探査機キュリオシティがとらえた奇妙な形の岩をツイッターで公開した。撮影日は今年5月17日。場所はゲールと呼ばれるクレーター内で、周辺には浅く積もった砂や岩が広がっているという。
にしてもどうしてここだけいきなり柱のようなものが立ってるのだろう?

岩盤の亀裂を埋めていたセメントのような物質
専門家によるとこの岩は、かつて岩盤の亀裂を埋めるセメントのような物質だったという。今となってはその岩盤の痕跡すら見当たらないが、はるか昔ここにあった岩盤が浸食で徐々に削られ、亀裂に埋まっていたセメント並みに堅い物質が露出した。
それであたかもここに立てられたかのようにみえるという。
火星のゲイルクレーターにあるもう1つのクールな岩。この岩はかつて堆積岩の亀裂を埋めていたセメントのような物質と考えられています。より柔らかい周りの岩は侵食されてしまいました。
#PPOD: Here is another cool rock at Gale crater on Mars! The spikes are most likely the cemented fillings of ancient fractures in a sedimentary rock. The rest of the rock was made of softer material and was eroded away. 📷: @NASA @NASAJPL @Caltech #MSSS fredk, acquired on May 17. pic.twitter.com/RGfjmRBfI7
— The SETI Institute (@SETIInstitute) May 26, 2022
日本の「阿波の土柱」も。地球でも同様の岩が存在
その過程も見た目もかなり個性的だが、実は地球でも似通ったものがみられる。侵食によって形成された背の高い柱のような岩は、日本で「土柱」と呼ばれ、海外では「フードゥー」「テントロック」「フェアリーチムニー」「アースピラミッド」とも呼ばれる。
日本国内の名所は徳島県の「阿波の土柱」

image credit:Saigen Jiro, CC0, via Wikimedia Commons
米ユタ州のブライス・キャニオンにあるフードゥーも有名

image credit:I, Jonathan Zander, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
土柱はたいてい乾燥した環境ででき、なかには10階建てのビルに相当するほど高くそびえるものもある。
一般的な土柱は、より柔らかい堆積岩の中に蓄積する硬い岩層により形成される。雨、風または霜により、周りの岩が長年かけて侵食されることで、細長い塔のような岩層が現れるのだ。
前に発見した「花のような岩」もほぼ同じ?
また見た目はかなり異なるが、以前キュリオシティが発見した「花のような岩」も、形成過程は今回の塔とほぼ同じと考えられている。シメオン・シュマウス氏より。この石の3Dモデル。 この石に関してNASAの広報は以下のように説明していた。(1/3) Your Friday moment of zen: A beautiful new microscopic image from @MarsCuriosity shows teeny, tiny delicate structures that formed by mineral precipitating from water.
— Abigail Fraeman (@abbyfrae) February 26, 2022
(Penny approximately for scale added me)https://t.co/cs7t11BWAj pic.twitter.com/AU20LjY5pQ
浮上した理論の1つに、この岩は一種のコンクリーションだという説があります。コンクリーションとは、既存の岩の割れ目や亀裂に入った水などによって形成した「天然のセメント」のようなものです。
コンクリーションはまとめて圧縮されることもあり、周囲の岩より硬度も密度も高いため、周囲の岩が侵食された後も残ることがあります。
火星の重力なら倒れない。岩の塔は古代の火星を探る手がかりに
なお今回見つかった岩の塔はいつ倒れてもおかしくない見た目だが、地球の重力の10分の1しかない火星の重力下であれば十分に頑丈なんだそうだ。また一方でこんな見方もある。2つのねじれた岩の塔も今は寂しげに見えるが、形成過程を考えると数十億年前はそこに大きな石造りの何かがあって、生命も繁栄していたかもしれない。
また現場のゲイルクレーターは、干上がった湖の底と考えられているが、その深さは当初考えられていたよりも浅く、湖だった期間も短かった可能性があるという。
火星の古代の湖と周辺の岩層。キュリオシティの発見はこのエリアの真の歴史をさぐる手がかりになる。
土柱と同じような過程でもあんなにねじれた形になって、しかもそのまま立っていられるとは、火星の自然と地球の自然ってやっぱり相当違うのね。
References:sciencealertなど /written by D/ edited by parumo