
■社会保険料の金額が決まる仕組み
社会保険料がどのように決定されるか聞いてみた。
「『社会保険』とは、厚生年金保険、健康保険、介護保険の総称です。『資格取得時決定』、『随時改定』、『定時決定』という3種の方法により決定された『標準報酬月額』に基づいて算出されます」(岡さん)
保険料が決定される方法が3種あるという。
「『資格取得時決定』は、厚生年金保険にはじめて加入するときの決定方法です。定められた初任給などの給与を標準報酬月額として厚生年金保険料を算出します。『随時改定』は、昇給や降給などにより報酬が大幅に変動した際、標準報酬月額の変更を行うことです」(岡さん)
「定時決定」は、どのタイミングでの算出だろう。
「『定時決定』とは、既に決められている標準報酬月額と、実際被保険者に支給される報酬が大きくかけ離れていないか、毎年1回、4~6月の報酬を確認し保険料算定する方法です。具体的には、4~6月の各月の報酬を『算定基礎届』に記入し年金事務所に提出すると、その平均額を元に報酬月額を算定し標準報酬月額が決定されます。決定された標準報酬月額は9月~翌年8月まで適用されます」(岡さん)
ユーザーからの疑問は、この「定時決定」を知ることで解明できそうだ。
■4~6月は給与額を抑えたほうが得?
「定時決定」という標準報酬月額の決定方法を踏まえると、4~6月は残業などで稼ぎ過ぎないほうがよさそうだが……。
「先述の通り、『定時決定』により算出された標準報酬月額は9月~翌年8月まで固定されるため、純粋に社会保険料を抑えるためには、給与額も抑えたほうがよいという考え方もあります」(岡さん)
とはいえ業務の状況により、残業せざるを得ないときもあるだろう。その場合は、泣き寝入りするしかないのか。
「4~6月の報酬の平均額で標準報酬月額を算出することが著しく不当である場合は、申立書を『算定基礎届』に添付すれば、年間報酬の平均額で算定することができます」(岡さん)
年間報酬の平均額で算定するよう、申し立てをすることもできるとわかりひと安心だ。会社員の人は、社内の担当部署に相談するとよいだろう。だが、社会保険料を多く支払うことは、デメリットばかりではないとのこと。
「将来的な厚生年金の年金額や、健康保険の傷病手当金の給付額に加え、出産を控えている人にとっては出産手当金の給付額や、間接的に雇用保険の育児休業給付額にも影響します。目先の社会保険料だけにとらわれず、将来的に受けられる恩恵も考慮するとよいでしょう」(岡さん)
社会保険料を多く納めれば、それに応じた厚生年金額が保証されたり、病気、出産、育休などの際に相応の給付が受けられる。納めた社会保険料は、いつか自分に還元される社会保障なのだ。そう思えば、保険料を多く納めることになっても「損」とは言い切れないかもしれない。
●専門家プロフィール:岡 佳伸
社会保険労務士法人岡佳伸事務所代表。特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。大手人材派遣会社やメーカーなどで人事労務を担当後、労働局職員としてキャリア支援や雇用保険給付業務、助成金関連業務に携わる。開業社会保険労務士として各種講演会講師や媒体記事執筆、TV出演などにも対応している。
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教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)