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インド神話学者が読み解く、「FGOとインド神話」。

ホンシェルジュ

DL数2400万を超え、不動の人気を誇るアプリゲーム「Fate/Grand Order」。作中に登場するサーヴァントの中には、インド神話に登場するキャラクターたちも多く存在します。

今回は、日本のエンタメをインド神話と比較しながら考察する『すごい神話』(著:沖田瑞穂)から、「FGOとインド神話」を解説した章を、記事に再編集してご紹介いたします。

少女母神として考えてみる――FGOの「エウリュアレ」と「メディア・リリィ」

著者沖田 瑞穂 出版日

FGOには重要な少女神が存在する。FGOメインストーリーの第一部第三章に登場する女神のサーヴァント、「エウリュアレ」である。

エウリュアレとは、もとはギリシア神話に登場する恐ろしいゴルゴン三姉妹のひとりで、姉妹にステンノとメドゥサがいる。二人の姉は不死であるが、一番下のメドゥサだけが不死ではない。それゆえメドゥサは神話では英雄ペルセウスによって退治された。

FGOでは、エウリュアレはわけもわからず迷宮に召喚され、迷宮の怪物・ミノタウロス=アステリオスと出会い、この怪物の保護者のように振る舞うようになる。エウリュアレは彼を、怪物の名「ミノタウロス」ではなく、「アステリオス」という名で常に呼んだ。このことを彼はとても嬉しく思っていたとされる。

興味深いのはその姿だ。あどけない少女である。そしてきわめて愛くるしい顔立ちをしている。特徴は肉体的な「弱さ」にある。怪物であるがゆえに知能が制限されているアステリオスの保護者であるが、同時にそのひ弱さゆえに彼に庇護されてもいる。

FGOは大きく分けて第一部と、第一・五部(という設定だ)、第二部からなる。その第一部第三章のストーリーのはじまりは次のようなものだ。特務機関「カルデア」において異変が察知されたのは、一五七三年の、ある海のまっただ中であった。「聖杯」を発見し回収することを目的にその地点に移動した主人公らは、「フランシス・ドレイク」(史実とは異なり女性である)の船に乗り、彼女と協力して事態の解明に乗り出す。黒幕として出てきたのは、「イアソン」、ギリシア神話の金羊毛の冒険で有名な英雄であった。なおこのストーリーはFGOのオリジナルなので、ギリシア神話のイアソンが活躍するアルゴナウタイの話(英雄たちがアルゴ船に乗り込んでコルキスにある金羊毛を取りに行く)とは直接の関係を持たない。

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この章にはもうひとり、「少女」が登場する。「メディア・リリィ」だ。

イアソンの妻となる女で、恐るべき魔術師であるが、第三章で召喚された時点では結婚前の少女の姿をしている。このメディア・リリィがイアソンをだまして、女神であるエウリュアレを「契約の箱・アーク」に捧げれば無限の力を手に入れられるとして、そそのかし続けた。実際には、アークは死をもたらすものであるから、女神エウリュアレがそこに捧げられるような事態が起これば、それはすなわち世界の滅亡を意味する。メディア・リリィはそれを望んでいたということになる。

生の側にあるエウリュアレと、世界と自分たちの死を望むメディア・リリィ。この二人の少女が同じ時代に召喚されたことは偶然ではないだろう。少女の生と死が対比されているのだ。

エウリュアレにしても、メディア・リリィにしても、姿は少女だが、役割は「母」である。エウリュアレはミノタウロス=アステリオスの保護者であり、知能が低い彼を母のように導く。メディア・リリィはイアソンに対して、ことあるごとに助言を与える、母的な役割を引き受けている。

前講※から、キングプロテア、エウリュアレ、そしてメディア・リリィと、FGOの「少女母神」たちを見てきた。
※書籍では、前章でインド神話における「呑みこむ」という行為と女神との役割について解説している

少女の姿と母なるものとしての性質が、彼女たちの中では融合していたのであるが、このような特徴は、処女と母が一体化していたアルテミスや、デメテルとペルセポネの一心同体の母子など、古い神話にすでに表われているものであった。おそらくFGOの作者は、意図してではなく無意識に、神話の領域に入り込んで、神話における構造を現代に再生産したものと私は考えている。人間の心理には神話を再生産する機能が備わっている、と思えるのだ。

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