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脂肪肝が「肝硬変や肝がん」に繋がるワケ…体内で起こる「怖い変化」【医師が解説】

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ところが同じ炎症でも“良い炎症”と“悪い炎症”があります。体を守るために強力な免疫反応が必要である一方で、長期的に続く炎症となると深刻な問題を引き起こすことがあります。これを「慢性炎症」といいます。

良い炎症、悪い炎症

炎症にも色々ありますが、大きく分けると急性炎症、慢性炎症、そして加齢による炎症の3つがあります。このうち人の体に害を与えてしまうことから、近年要注意とされているのが慢性炎症と加齢による炎症です。

急性炎症は短期間に収束する炎症のことで、ケガをした時や風邪など数日間で治る一過性の炎症がこれに当たります。通常は炎症反応のピークを過ぎると、傷ついた細胞は健康な状態に戻っていきます。熱が出たりするのは不快な症状かもしれませんが、感染や病気から体を守るという意味では必要な反応です。

対して慢性炎症は、低レベルの炎症が何年にもわたり続いている状態のことを指します。炎症が収束しないために、常に細胞間で炎症を収束させようとやりとりが続きます。火事でいえばボヤのような、小さな火種が燃え続けているイメージです。

慢性炎症を伴う病気にはさまざまなものがあります。ウイルスが肝臓の中に居続けるB型・C型肝炎や、歯周ポケットに細菌が居続ける歯周病、過剰な免疫反応が続くことで起こるアレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎や喘息、関節リウマチなどの自己免疫疾患も含まれます。

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ここで忘れてはならないのが炎症が起きた部分は、一度は傷ついた状態になるということです。同じ場所で炎症が何度も繰り返されると傷の修復が追いつかなくなり、細胞や組織が傷んで劣化していきます。この積み重ねが、細胞や組織の機能低下を招き、さまざまな全身疾患へとつながってしまうと考えられています。

もう一つの「加齢炎症」は、細胞が老化することによって起こる炎症です。老化した細胞は普通の細胞のように死なずにそのまま体の中に存在し続けます。そして周囲に炎症性の物質(医学用語では、細胞から分泌される低分子のタンパク質で生理活性物質の総称であるサイトカインや、サイトカインの一群であるケモカインといった炎症性サイトカインという)を多く分泌し続けます。これも、さまざまな疾患へとつながっていく原因となります。

これらの炎症性の物質は、一つの細胞が老化すると、周りの細胞も同調して周囲に広がっていくという特徴があり、この現象は、細胞老化関連分泌現象(SASP)とも呼ばれています。こうしたメカニズムが明らかになるにつれ、慢性炎症を軽視することが恐ろしいということが知られるようになってきたのです。

慢性炎症や加齢炎症は、徐々にゆっくりと起きてくるため自覚症状がありません。気づきにくいから放置されてしまう、非常に厄介なものです。

慢性炎症と老化は切っても切れない関係

慢性炎症は、多くの人が大なり小なり抱えているといっていいでしょう。なぜなら慢性炎症は加齢に伴って起きやすくなるものだからです。

その理由はいくつかあります。

【死んだ細胞が増える】

死んだ細胞は体にとって異物となるため、通常は免疫細胞のマクロファージ(白血球の一つ)が食べて処理してくれています。しかし加齢に伴って免疫力が低下してくると、死んだ細胞の食べ残しが増えていきます。すると免疫細胞にとってそれが刺激となり、慢性的に炎症が続くことになります。

【細胞の老化】

老化した細胞は処理されず、そのまま体内に残りやすくなります。すると炎症シグナルが分泌され続けるという状況になります。結果として、周囲の組織に炎症が広がり発がんを促すような環境が作られてしまいます。

【中性脂肪の増加やホルモンの変化】

肥満は全身の組織に炎症を誘導することが分かっています。食べ過ぎや運動不足などによって、消費されなかったエネルギー(中性脂肪)が増えていくと、皮下脂肪や内臓脂肪、異所性脂肪(肝臓、筋肉、骨髄など)に脂肪がたまっていくのです。その過程で炎症が起こることになります。なかでも内臓脂肪は、慢性炎症を活発にする厄介な脂肪です。

年齢に伴う代謝やホルモンの変化も、炎症を促進する可能性があります。特に女性は閉経後エストロゲンの分泌が激減する影響から、ケモカインというサイトカイン物質が分泌されるようになり、低レベルの炎症状態が誘導されるといわれています。また閉経後は、女性ホルモンの作用が弱まることから中性脂肪の値が増加します。つまり肥満になりやすい体質となり、かつ慢性炎症が誘導されやすくなります。

さらに老化により慢性炎症が起きると、老化が加速し慢性炎症も増大するという負の連鎖が起きてくるようになります。体をじわりじわりと蝕む慢性炎症を、抑える方法はあるのか、またどれだけ抑えることができるのか。この問題は、長寿社会に生きる私たちすべてに関わる課題といえるかもしれません(※1、2)

※1 池谷敏郎『体内の「炎症」を抑えると、病気にならない!』三笠書房、2017年

※2  熊沢義雄『ガン、動脈硬化、糖尿病、老化の根本原因 「慢性炎症」を抑えなさい』青春出版社、2017年

慢性炎症は全身に「飛び火」する

慢性炎症が体のどこかで起きていると、他の臓器にも影響することが分かっています。

歯周病を例にすると分かりやすいと思います。歯周病は、歯周組織(歯の機能を支持する周囲の組織のことをいう)における歯周病菌の感染で発生する慢性炎症で、重症化すると歯がグラグラしてきて抜けてしまう病気です。

歯周病が進行すると歯周病菌が歯肉の上皮を破って血管に入り込み、全身を巡り始めます。本来なら無菌状態である血管が、歯周病菌によって汚染されてしまうのです。この状態は、医学用語で「菌血症」と呼ばれます。歯磨きで出血する人は菌血症を引き起こすと考えられます。

ただし通常は、細菌が入り込んでも、免疫細胞に捕まって速やかに排除されるので大事には至りません。しかし加齢とともに免疫機能が弱くなってくることで体の防御メカニズムがうまく機能しなくなり、細菌を十分排除できなくなる恐れがあります。

また歯周病はそのままでは自然に治ったりしないものなので、口の中を清潔にしておかないと初期段階である歯肉炎となり、その後も歯周病へと進行していきます。大量の炎症性物質が分泌され続けている状態です。歯周病が悪化した歯や歯茎では、歯周病菌が出す毒素によって炎症性物質(炎症性サイトカイン)が作られ、歯周病菌と炎症性物質の両方が、食事の際にものを噛むだけでも血管へと入り込むようになります。そのような状態になると血管壁が傷つけられ、動脈硬化の発症につながることが分かってきました。

菌血症(血流中に細菌が存在しているという状態である)は、血管の老化を進める要因の一つとなるだけでなく、動脈硬化から狭心症や心筋梗塞を引き起こすこともあります。そのほか糖尿病を悪化させ、脳梗塞や誤嚥性肺炎、リウマチ、がんなどの病気とも関連があることが指摘されています。

歯だけの問題だと思っていた歯周病が、じわりじわりと全身に広がって、あちこちで新たな疾患につながってしまうことが慢性炎症の恐ろしさです。

■実際、歯周病治療によってNASH患者の肝機能の数値が改善

歯周病は、20歳以上の約8割がかかっているといわれるほど有病率の高い慢性疾患です。10年ほど前に、この歯周病がNASHの発症に関与しているとの報告が出ています。

この研究では、NASHの患者の口腔内の唾液を調べたところ歯周病菌のなかでも悪玉菌であるジンジバリス菌の保菌率が高く、5割にも及ぶことが分かりました。さらに興味深いのは、悪玉菌が見つかったNASH患者らに歯周病治療をしてもらったところ、肝機能検査の数値であるALTとASTが改善したそうです。歯周病治療により炎症が治まり同時にNASH進行の原因も取り除かれたと考えられます。

つまり歯周病菌が血液中に入り込み、それが肝臓にまで到達することで再び炎症が起こり、その刺激が元になって、NASHの病状が進んでいくと考えられています。

歯周病は国民病といわれるほど有病率の高い慢性疾患ですが、定期的に歯科医院などで治療や経過観察を続けることで予防することができます。

川本 徹

みなと芝クリニック 院長

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