今から12年前のこと。代官山に、手づくりのエッグタルトや杏仁豆腐を出す小さな店『蜜香(ミーシャン)』がオープンした。
香港をイメージした中華スイーツの店として、当時は珍しかった女性の店主が切り盛りしている店だった。代官山という立地や、ガラス戸にくすんだゴールドで描かれたロゴのレトロな愛らしさ。店主のセンスに共鳴し、足を運んだ方もいるだろう。
そんな『蜜香』が店名を改め、軽井沢に拠点を移したのは2022年のゴールデンウィークのこと。信濃追分の緑豊かな場所に、一軒家のアフタヌーンティーラウンジ『mi-shang Karuizawa』を開いたのだ。



空気も空間も美しい、軽井沢の一軒家をラウンジに
店舗には、別荘として使われていた家をレストラン仕様に全面改装。外観の佇まいのよさもさることながら、内装にも目を見張るものがある。
シノワズリテイストのインテリアは、隅々まで村木さんのこだわりとセンスが詰め込まれたもの。軽井沢の空気も手伝って、座った瞬間、非日常へといざなってくれる。



スープや春巻に軽井沢の季節を映したアフタヌーンティーコース
広告の後にも続きます
一般的なアフタヌーンティーは、スイーツを中心に構成されていることが多いが、『mi-shang karuizawa』では、スープ、前菜、点心などを味わった後、デザートや焼き菓子などが並ぶコース仕立てだ。
そのスタイルは、広東料理の飲茶でもなく、洋風のサンドイッチやケーキ尽くしでもなく、中国料理で培った技術や素材を使ったオリジナル。振り返れば、神戸『オリエンタルホテル』でキャリアをスタートし、茶芸館の店長としても活躍していた村木さんらしい表現ともいえる。
さらに、これまで村木さんが多く手掛けてきたケータリングのノウハウや料理だけでなく、新たなチャレンジも反映されている。そのひとつが、軽井沢という立地から、地場の食材を生かしたつくりたての料理を提供することだ。
オープン直後の4月下旬は、新たまねぎと菊芋のすり流しに始まり、上田のビタミン大根を軽やかな春巻にするなど、南信州の春を感じる料理が目白押し。前菜に岩魚(イワナ)なども登場し、山の恵み、川の恵みが軽やかにプレートに盛り込まれる。


また、2020年から通販で販売してきた愛農ナチュラルポークやほうき鶏を使った点心も、アフタヌーンティーで登場。こちらの店でいただけるのは、ファンにとっても嬉しいことだろう。

えび蒸し餃子をはじめ、手づくりの澄麺皮を使った蒸し点心にも力を入れている。澄麺皮とは、蒸すと半透明に透き通る、広東点心で使われている生地のこと。