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【小説】喧嘩別れした友人「実は去年夫が亡くなったの」の事情

幻冬舎ゴールドライフオンライン

※本記事は、水木三甫氏の書籍『「本当の自分」殺人事件』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

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のぞみの結末

約束の時間になっても、あかねは現れなかった。淳美はアイスコーヒーをゆっくり飲みながら、『喫茶プレリュード』と書かれた入り口のドアをただぼんやりと見つめていた。氷はとうの昔に溶けていて、グラスの上部に透明な層を作っていた。

あかねが時間にルーズなのには、淳美もすっかり慣れっこになっていた。この日も20分遅れで店に入ってくると、あかねは待たせたことを詫びるでもなく、淳美の向かいの席に腰かけ、レモンスカッシュを注文した。

「久しぶり。元気にしてた?」

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「こっちは元気にやってるわ。あかねも元気そうじゃない。でも突然どうしたの?」

「実はね、うちの旦那が去年死んじゃったの。それでいろいろとごたごたしちゃって。遺産相続だとか、後片づけだとか。田舎だからよけい面倒くさいの。あっちゃんは知っているでしょ、あたしってそういうの苦手なこと」

「そう、大変だったね。それで、あかねは大丈夫なの?」

「うちの旦那、もともと体が丈夫じゃなかったから。年も相当上だったし、いつ死んでもおかしくなかったの。でも、まさかこんなに早く逝っちゃうとは思っていなかったけど」

あっけらかんとしたその口調には、夫の死を悲しんでいる様子はまったく感じられなかった。

「長野って思った以上に田舎でさ。退屈で退屈でしかたなかったの。それに旦那が遺産をたっぷり残してくれたから、そのお金で渋谷にマンション買っちゃった。今年の初めに東京へ帰ってきたの。そうしたら、この前日本橋のデパートで光彦とばったり出くわして。話をしていたら久しぶりにあっちゃんにも会いたくなったの。何か喧嘩別れしたままで終わるのも嫌じゃない」

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