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【小説】腫れた足首を安全靴で蹴られ…汲み取り屋さんのイジメ

幻冬舎ゴールドライフオンライン

※本記事は、橋本俊幸氏の小説『ニコニコ汲み取り屋』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

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建一の入社経緯

現場の廃棄物収集の作業は、ほとんど午後三時頃には終わってしまう。その後は休憩室で横になったりテレビを見たりして、退社時間の四時になるまで待機しているだけだ。

そして退社時間の三分前になると、全員タイムカードを持って出口のタイムレコーダーの前に整列して待っていて、時計の針が「カチッ」と四時を指した瞬間に我先にとばかりに「ガシャ、ガシャ」とカードに打刻して、あいさつもしないでさっさと帰っていく。

しかし健一は、その後も、運転作業日報のデータの打ち込みなどをしなければならないので、帰るのはどうしても最後になっていた。健一の給料は、他の社員とほとんど変わらなかった。それでも健一は、会社に心から感謝し、いつもニコニコ微笑んで仕事をしていた。

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健一は藤倉産業に雇ってもらえて本当に良かったと思っている。それは、他の会社ではまともに雇ってくれるところなどなかっただろうし、たとえあったとしても障害者雇用率を上げるために、哀れみをかけられながら、ただその会社に在籍しているだけの存在だったに違いない、ましてや、こんなに自分の能力を引き出してもらうことはなかったと思うからだ。

だからといって健一は、障害者雇用枠を使って就職した人たちがすべて自分と同じだと思っているわけでは決してない。それどころか、健一の知り合いには、障害者枠で就職のチャンスを掴み、努力してその会社でなくてはならない第一人者になった人や、自分で起業して多くの障害者の人たちを雇用して成功し、社会から障害者への偏見や誤解を払拭することに大きく貢献している人もいる。

健一がこの会社に大きく感謝しているわけは、社長の紘一のおかげはもちろんとして、この会社の業務が健一の能力を引き出し鍛えるのに、ちょうどいい負荷を与えてくれ、彼の持つ知識や経験を役立てるのにピッタリだったからだ。

健一が藤倉産業への入社の経緯は、こうだった。健一は障害者だ。先天性の脳性小児麻痺で言語障害があり、全身が硬直して特に手は人前で作業しようとすると激しく震える。顔は筋肉の硬直で不自然に歪む。

心ない人たちは、そんな彼の顔を見て「化け物、妖怪」と呼んで蔑んだ。そんなこともあって、健一は大学卒業後の就職活動にことごとく失敗した。

それだけではなく不採用通知に、「貴殿は、あまりにも人に与える印象が悪いので、採用できません」と書かれたり、面接では、「あなたは働くより、どこか特別な施設で暮らされたらいかがでしょうか」と言われるなど、自尊心をズタズタに切り裂かれた。

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