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【小説】「お久しぶり」耳元で囁いた“女の正体”…振り向くと?

幻冬舎ゴールドライフオンライン

太陽が、西の空から沈み始めた。日没の時が訪れた。西日が射し光が遠くの山から消えようとした。

そのとき、一条寺さん、お久しぶり──。私の耳元で、誰かが囁いた。振り向くと、風の女が立っていた。長い髪の毛の風の女だ。

風の女とは、この地方で、突然、姿を現し、風が吹くと消えていく女のことだ。その女は、魔法を使うことができる。僕が、タイムカプセルから、タイムスリップして、小学二年生のときに住んでいたこの場所に来たのは、この風の女の魔法のせいか。

いや、タイムカプセルを小学校に埋めたのは、僕だ。タイムスリップして、未来から過去へと来たのは、僕のタイムカプセルがいざなったタイムスリップのせいだ。

風の女の魔法か。それとも、僕のタイムスリップか。この風の女を見ていると、そんなことは、どうでもよくなってきた。

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長い髪の毛の風の女。僕には心臓の鼓動が聞こえる。風の女の心臓の鼓動か。それとも、僕の心臓の鼓動か。

風の女の顔は、日が暮れてしまい、うっすらとしか見えない。

──風よ、吹かないでくれ。僕は、心の中で叫んだ。風が吹くと、風の女は、消えて、どこかへ行ってしまう。

僕の願いもむなしく、風が吹いた。すると、風の女は……消えた。西の空に、星が、ひとつ瞬いている。風は、止まったままだ。

僕は、星に向かって、歩き始めた。しばらくすると、風が吹いたが、風の女は現れない。風の女は気まぐれな女なのか。

僕は、僕の過去に漂いながら、僕の未来を見つめていた。

星が流れ、また風が吹いた。すると風の女が現れ、遠くで、僕を見ている。途方もなく、何かを考えている自分と風の女が、重なり合う。風の女は、僕に何かを伝えようとしているのか。それとも、僕の身勝手な願望や欲望が、僕の頭の中にあるのか。

──そうよ。と、風の女が、遠くから、囁いたようにも聞こえた。また、風が吹いた。風の女は、消えた。風が、吹いた。風の女が、僕の目の前に現れた。寄せては消える波のように、風が吹くたびに、風の女は現れては消え、を繰り返している。

僕をからかっているのだろうか。僕の心が揺れていることに合わせているのだろうか。

風の女は、長い髪の毛をしている。長い髪の毛……シャドーと同じ長い髪の毛。

僕は、風の女に、君は、どうなんだと聞いた。僕の夢の中にも現れるのかい?と聞いた。僕の夢の中で、君は何をしたいのかい?と聞いた。

風の女は、少し微笑んで、消えた。風の女が、残していった香り。どこかの香りと似ている。この香りのする場所で、風の女と、以前、出会ったような気がする。しかし、風の女は、風が吹けば、気まぐれに僕の目の前に現れたり、風が吹くと消えていなくなったりする。まるで、夢の中で僕を追いかけたり、僕に掴まったりするあのシャドーのようだ。

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