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【小説】俺の名前は「にゃん太郎」 榎本さんちに飼われてる

幻冬舎ゴールドライフオンライン

※本記事は、榎本ひとみ氏の書籍『おもしろうてやがて悲しき』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

第一章 俺はにゃん太郎

「高貴な血筋の出」は妄想なのか

俺は榎本さんちに飼われている真っ黒な雄猫だ。名は、ある。「にゃん太郎」というんだ。猫にはピッタシの名だろ。俺はとても気に入っている。今でこそありきたりの名だが、これは榎本さんが即座に思いついた榎本さん特製のオリジナルだ。よって、その頃の日本には俺以外に同名の猫はいなかったと断言する。

「元祖・にゃん太郎様」のお出ましだ。はがきに榎本さんちの住所で、宛名を「榎本にゃん太郎様」と書けばちゃんと郵便も届くんだよ。ほんとうだよ。にゃん太郎という名の猫が他にいなかったから、郵便屋さんはまさか猫の名とは思いもしなかったんだろう。今ではにゃん太郎は猫の名として広まっているから、郵便屋さんは「ふざけるな」と言って怒るよ。きっと。

生まれは分からない。母親のことも覚えていない。年齢も分からないが、榎本さんちに飼われた時の榎本さんの見立てでは、生後4か月くらいだろうということだ。

 

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しかし俺の出自についてはひとつ気になることがある。

後になって、俺が1歳くらいの時だ。猫好きの人が俺を見て、「こいつかっこいいな。王者の風格だ。ヒマラヤンとチンチラのミックス種だろうな」と言っていたんだ。俺はその言葉を真に受けて舞い上がってしまった。ヒマラヤンとチンチラの両親を持つ猫は他にもいるだろう。

けれど、俺はそいつらとは違うと。その挙句に何の根拠もないのに「高貴な両親から生まれた高貴な猫」かもしれないと執着するようになったんだ。人間はそれを「妄想」と言うだろうね。

確かに。俺が子猫の時は毛が短かかった。だが、その頃の俺は、もう長毛が全身を覆いフサフサで、均整の取れた美形の体形をしていた。顔つきは、目は大きくて結膜の色は黄色。日本猫離れした容姿の超イケメンで、品もいい筈だ。

ヒマラヤンとチンチラの高貴な両親から生まれたのだとしたら、何でノラ猫になっていたのだろう。いったいこれまでに何があったというのだろう。知りたくても知りようがないのに、気にしている。そのせいで、俺の気性や身のこなしに、高貴な血筋である証が宿っているのではないかと探し求める癖がついてしまった。

 

やったぞ。榎本さんちの飼い猫になった

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