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【小説】あの時トイレで一人泣いた。あなたも、一人なの……?

幻冬舎ゴールドライフオンライン

本記事は、北沢いづみ氏の書籍『ギフト』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

【前回の記事を読む】【小説】一目惚れからはじまった恋の相手は…佳奈の壊れた初恋

明日の私と私の明日

店の前の街路樹の根元まで、佳奈は思いっきり走った。木の根元ギリギリを歩けば、枝や葉が傘の代わりになり雨が凌げた。猛スピードの車が来たら、並木の後ろに隠れて水飛沫(みずしぶき)を避けて歩く。スカートの裾と靴が少し濡れた程度で、何とか駅前のロータリーに着いた。そこから今度は、いくつか並んでいるバス停の長い屋根をうまく通り抜けながら駅の方へ向かった。

改札までの距離を確認しようと顔を上げた時、あまり見かけないブレザーを着た男の子が、真っ直ぐ正面を見てこっちに歩いて来るのが見えた。

サラサラの黒髪は前髪が少し伸びた感じで、七対三くらいの割合で分かれている。髪の毛で目の辺りが隠れているのに、その綺麗な顔立ちはちゃんとわかる。肌の色素が薄い感じで、だから余計にぽってりした唇の赤が妙に艶っぽい。

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(男の子、だよね?)

思わず自分に聞いてみた。ふと彼の手元を見ると、細く白いステッキを持っている。左右に小さく振り地面をカツカツ叩きながら前へ進んでいる。

(あ、もしかして……)

色白で綺麗な顔立ちの、そして盲目の彼から、佳奈は目が離せなくなった。

彼の右側が駅前の駐輪場になっていて、彼と駐輪場の間の地面が、黄色くて丸いたこ焼きのようにデコボコした視覚障害者用の、点字ブロックになっている。彼がステッキで周りを確認しながらその黄色い突起物の上を歩いていると、少ししてパシッと音がして、その音と同時に彼の足もその場で止まった。

駐輪場の一台の自転車が列を飛び出し、それに揃えて皆んなが自転車を止めてしまい、段々と自転車の列が歪んで黄色い点字ブロックの上にまで自転車が置かれていた。はじめに飛び出した自転車にステッキが当たり、彼はどうしていいかわからない感じで、動かなくなってしまった。

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