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セクハラ職場を経験した私が惹かれた「器の大きい」人とは

幻冬舎ゴールドライフオンライン

その翌日、いつもは夜にしか来ないメールが、珍しく昼間に届いた。

「送り返していただいた拙稿を見て、感激しています。こんなに丁寧に読んでくれたなんて。まだ全部読み直していませんが、確かにあなたの言う通りにすれば、読みやすくなりますね。取り急ぎ、御礼まで。また夜にメールします」

器の大きい人だな、と思った。Nissieさんの存在を意識した最初だった。

彼が独身であることは、その夜のうちにわかった。

「朱字の部分、半分まで検証したけれど、まだ終わっていません。まあ、独り者の特権で時間は自由に使えるので、今夜、ゆっくり吟味します」

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私も「ご質問があれば、いつでもどうぞ。私も独り者なので、何時に電話されても大丈夫です」と返事した。

そうやって、私たちのやりとりが始まった。

Nissieさんは議論好きだった。チャットでも掲示板でも、異文化交流や国際問題関連がちょっとでも話題に上ると、相手が誰であれ、どんどん話しかける。質問をし、意見を述べ、反論には反論を。だが、どんなに白熱しても、自説にこだわって相手をつぶそうという態度ではなく、気持ちの良い議論をした。

あるとき、十人ほどでのチャットの最中に、一人のメンバーが「韓国の人々の日本人に対する反日感情は絶対になくならないよ」と述べた。

それに対するNissieさんの返しが「百年河(か) 清(せい)を待つ」

あれ? いつも言っていることと違う。ひょっとしたら、ことわざの意味を間違えていないか、と思い

「Nissieさん。百年河清を待つ、とは、待ってても無駄、という意味ですよね? 黄河が清く澄むのを待っていても見込みないよ、という話でしょ?」

「えっ。あきらめないで百年待ち続けよう、という意味じゃないの? 希望を捨てるな、という意味だと思っていた」

みんなで大笑いした。

彼はあっさりと「大変失礼しました。無知をさらけ出しましたね。いやあ、おかげで、一つ賢くなれました。大感謝です」

間違いの認めっぷりが潔かった。

私が大失敗したこともある。

Nissieさんに出すべきメールを、アドレスの語尾がちょっと違う別人に送信してしまった。

「あのぉ、るまさんがNissieさん宛に出したメールが、僕のところに届いているのですが……」

間違われた方がチャットの場で公開した。

ギョッとした私が返信するより早く、Nissieさんが

「あれま。すみませんが、うちの郵便受けに入れ直してください。

るまさん、オッチョコチョイ。笑」

と、コメント。途端に、その場にいた人々から

「アハハ。それ、聞いたことはあったけど、実際にやらかした人、初めて見た」

「るまさん、手紙の中身は何だったの? ラブレターとか」

冷やかしの言葉が続いて、その夜は大いに盛り上がった。

「オッチョコチョイ」そんなおおらかな言い方が、とても気持ちよかった。周りの空気を楽しくしてくれる人だと思った。

彼に惹かれていった。彼もまた、私のことを憎からず思ってくれていることを感じた。しかし、私は恋愛に進むことには用心していた。

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