
※本記事は、萬野行子氏の書籍『朱の洞窟』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。
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探検
まず、はるなが身をかがめながらするりと洞窟の中に滑り込み、あとの三人もそれに続いた。すぐに真っ暗になり、はるなはカンテラを取り出して灯りをともした。洞窟の壁は杵(きね)で削ったままなのだろう。いびつででこぼこ、一言で言えば、整っていない。上からの圧力を感じるほどに天井も低い。這(は)いながらでないと進めない。人間の頭ほどもある尖(とが)った石が一面に敷(し)き詰(つ)められている。
さゆりが持ってきた軍手をした。四つん這いで進んでいると、手のひらも膝(ひざ)も痛くなるが、それでも暗闇に誘われ、小さなカンテラの明かりを頼りに、四人は奥へと進んでいった。五メートルほど進むと少し広くなっている。目も暗闇に少し慣れてきた。カンテラの明かりの届かない所でも少しは見える。天井は小柄(こがら)なちさでも立ち上がれないくらいに低い。
しかし幅は二人が並んでも十分に広い。入り口あたりには土が少しあったが、このあたりは土がなく、ただゴロゴロとグリ石が敷き詰められているだけだ。前へ進もうと手足を動かすと石がぐるっと崩れる時がある。
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「あっ、石が体重を乗せられるのをいやがっとるわ」
「気ぃ付けぇ。ゆっくり行きぃよ」
とさゆりが言った。
「見て、見て。この石、筒(つつ)状に、ばか、きれいに磨(みが)かれとるだに」とみやが石を一つつかんで言った。
「どれ?」
「ほんま」