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喉元にはガーゼが巻かれ…夫が酷く狼狽した「病院での妻の姿」

幻冬舎ゴールドライフオンライン

本記事は、島崎二郎氏の書籍『ALS―天国への寄り道―』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

作業療法士から声をかけられ…

それは思ってもみない出来事だった。

「今日二時半頃までおられますか?」

いつものように、少量の嚥下食と胃瘻(いろう)からのミルクの注入も終わった病室で、突然声をかけられた。

同室の患者の容態は個々に違っていても、身体の不自由な者ばかりの六人部屋のため、患者の車椅子での出入りを考えてか、病室のドアは常に開け放たれていた。ベッドはカーテンで仕切られていて、それも半開きの状態が多く、病室はいつもざわめきの中にあった。振り向くと、いつの間にか、顔なじみの作業療法士がカーテンのこちら側に入って来ていた。

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「私がいた方がいいのであれば」

突然のことで、何のことか分からず、少し戸惑いぎみに返事をした。

「車椅子で移動する練習です」

作業療法士は、仕事が立て込んでいるのか、そっけない答え方で出て行った。一カ月前京子は、生命維持装置を装着するための気管切開の手術をした。予想した以上に気管支に弾力がなく、「急遽、男性用の太いカニューレ(気道確保のための管)を使用せざるを得なかった」と、医師の説明を受けた後、看護師に案内されるまま術後控室に入った。

事前の簡単な説明とは違い、私の面会の後、一晩、ICU室に移して様子を見るとのことだった。

ホースでカニューレに空気を送る「スコン、スコン」という音が、白い布の下に横たわっている物体と一体化していた。無造作に被せられ、盛り上がった白布の端には血の気を失った人の顔があり、それが京子だと気付いた私は、いたたまれないほど狼狽した。白い布は京子が着ている手術着だったのだ。

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