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「ギターソロ不要論」は繰り返されてきた。花形楽器ゆえの苦悩とは

日刊SPA!

「ギターソロ不要論」は繰り返されてきた。花形楽器ゆえの苦悩とは

◆若者の“ギターソロ離れ”は本当か?

 若者の“ギターソロ離れ”は本当か? サブスクで音楽を聞く世代は、曲中のギターソロを飛ばしているらしいのです。16日放送の『スッキリ』(日本テレビ)が特集し、話題になっています。

『スッキリ』が100人に調査したところ、イントロのギターソロを飛ばすと答えた人が14%、間奏のギターソロをスキップすると答えた人が18%。合わせると、3割もの人がギターソロを聞かないという結果になりました。

 “そんなに飛ばして聞いているのか” “まだまだギターソロ粘ってるな” 

 皆さんの感想はどちらでしょう。

◆ネット上で一大論争に
 
 ことの始まりは、アメリカ「ニューヨーク・タイムズ」紙の記事。今年のグラミー賞、ロック部門のノミネート曲の多くには、ギターソロがないと報じられました。これに、ミュージシャンで京都精華大学特任教授の高野寛氏が「ギターソロが始まるとスキップする若者多いみたい」とツイートし、ネット上で一大論争となったのです。

 Z世代にとって、いまやドラマや映画も1.5倍速が当たり前。となれば、音楽だって退屈なパートを飛ばしてしまうのも、やむを得ないのかもしれません。ギターソロに限らず、いまどきのヒット曲はイントロも短縮傾向。おまけに全てのパートがサビになるほどキャッチー。

 飽きさせないための刺激に満ちた音楽の中では、ギターソロが邪魔だと感じる人もいるということなのでしょう。
 
 こうして、世代間ギャップの象徴として注目を集めてしまったギターソロ。 

「SEKAI NO OWARI」のボーカル、Fukaseの「今時、まだギター使ってんの?」という2014年のツイートからも、ギターを過去の遺物にする態度が主流なのではないか。そして今や、特に“ダサい”ものとして敬遠されているのではないか。

 ギターを愛する音楽ファンの心中は穏やかではないはずです。

◆ギターソロ不要論は繰り返されてきた

 しかし、音楽史を振り返ると、この数年で初めてギターソロが憂き目を見ているわけでもないのですね。実は40年以上前からギターおよびギターソロ不要論は繰り返されながらも、したたかに生き抜いてきているのです。

 最初は70年代後半。パンクムーブメントが“ギターソロの死”を宣告しました。象徴的な存在が、アメリカのパンクバンド、ラモーンズです。ギターソロはなし、一曲3分、使うコードはせいぜい4つまで。潔い姿勢でロックの初期衝動を追求し、ハードロックやプログレッシブロックのバンドが20分以上もギターソロを披露していたトレンドに反旗を翻しました。

 一方で、ラモーンズがデビューした翌年、1977年はイーグルスの「Hotel California」がリリースされた年でもあります。1分近いギターのアルペジオが印象的なイントロ。曲の後半からは2分以上ものツインギターのソロがエンディングまで続く。問答無用のギターづくし。アンチへの強烈な返答に聞こえてきますね。

 日本のロックギターの第一人者、Charの「気絶するほど悩ましい」がリリースされたのもこの年でした。

◆不要論が巻き起こっては、それを覆すヒット曲が生まれる

 つづく80年代。大量のヒット曲が生まれたシンセサイザー全盛の時代も、ふたたびギター不要論が持ち上がりました。でも実際はどうだったかというと、シンセポップと同じぐらいハードロックやヘヴィメタルが売れた時代でもあったのです。ヴァン・ヘイレンやボン・ジョヴィなどが次々とビッグセールスを記録。

「Jump」や「Livin’ On A Prayer」といった誰もが知っているヒット曲にも、当然ギターソロがあります。テキサスのブギーバンド、ZZトップもシンセサイザーを駆使しつつ、「Legs」や「Gimme All Your Lovin’」などの骨太なギターロックでチャートを席巻しました。

 そして、このあたりから日本でもギターソロのあるシングル曲がヒットしだします。そのパイオニアが、BOØWY。1987年リリースの「MARIONETTE」は、布袋寅泰のギターを大々的にフィーチャーし、鮮烈な印象を与えました。
 
 ハードロックが下火になった90年代も“ギターソロ不要論”が巻き起こりましたが、異なるジャンルで生き残っています。ブリットポップの雄、オアシスの「Don’t Look Back In Anger」に、グランジロックの立役者、ニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」。形は変わっても、きちんと間奏のソロは残っていますね。

 邦楽シーンでは、なんと言ってもB’z。ミリオンヒット15曲中、すべてにギターソロがある! 特に「Love Phantom」は、稲葉浩志のボーカルと同じくらい松本孝弘のギターが歌いまくる、忘れがたい一曲です。

◆ストリーミングサービスが変えた音楽の聴き方
 
 そして現代。「もうみんなギターソロなんて聞くヒマがないんだよ」と語るビリー・ジョー・アームストロング(グリーン・デイ)をよそに、ギターヒロインが活躍する時代になりました。

 セイント・ヴィンセントやH.E.R.など、新世代の女性アーティストが素晴らしい演奏で楽しませてくれています。特にH.E.R.の活躍は目覚ましく、2020年のグラミー賞でのライブや、2021年のNFLスーパーボウルのハーフタイムショーで「America the Beautiful」をストラトキャスターの弾き語りで披露した姿は、改めてギターという楽器の美しさを教えてくれました。

 今後、日本でもソロを弾きまくる女性ギタリストがチャートを賑わしてくれたら、どんなに楽しいことでしょう。
 
 こうして振り返ると、ギターのサウンドが途絶えた時代はただの一度もないことがわかると思います。

 確かに、サブスクという鑑賞方法は音楽の聴き方や作り方を変えています。それによって、ギターソロが整理縮小のターゲットにされてしまう状況も避けがたい現実なのかもしれません。

◆折に触れてオワコン扱いされる理由は…

 それでも、ギターソロにはいつの時代にも人の心をとらえて離さない魅力がある。ニューヨーク・タイムズは、こう表現しています。

<しかしながら、ソロという形式が持つ感情を呼び起こす力は時の流れに耐えうる。単にエンターテイナーとしてのプライドを見せつけたり、楽器の腕前やアーティストとしての確固たる自信があることを示すためにギターソロを弾くのではない。最高のソロとは、アーティスト自らの中にある甘美な危うさを惜しげなくさらけ出す瞬間のことを言うのだ。>
(『Why We Can’t Quit The Guitar Solo』2022年4月2日配信 筆者訳)

 折に触れてオワコン扱いされるのも、そもそもギターが花形楽器だから。朝のワイドショーで盛り上がれるぐらい、まだまだ廃れちゃいない。

 色々なものが合理化されていく世の中だからこそ、ギターソロの豊かなムダがますます貴重になっていくのだと思います。

文/石黒隆之

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