top_line

【 最新ニュースをアプリでサクサク読むなら! 】

【小説】記者会見の場で見せつけた、主演俳優のカリスマ性

幻冬舎ゴールドライフオンライン

本記事は、長谷川敬二氏の書籍『マルト神群』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

【前回の記事を読む】始まった撮影リハーサル。悲痛な歌に託された男の想いとは…

リハーサル

ミュージカル映画「ショウ・ボート」を観たものとして感想を述べたい。あの映画でこの歌を歌ったのは黒人俳優だった。歌は全くの素人。しかし、切々とした情感は画面を圧倒していた。ラストシーンでも歌われるが、ミシシッピ川を下っていくショウ・ボートにかすかに手を振る主演のエヴァ・ガードナーよりも、船の後方で歌うこの黒人俳優ウィリアム・ウォーフィールドに感情を揺さぶられたのを記憶している。

婆須槃頭は黒人になり切り独唱し、再度男声合唱団と声を合わせて「オールマンリバー」を歌い切った。交響楽団の伴奏も文句のつけようもない完璧さだった。録画が終わった。あとはこのシーンをいかに番組の中へ取り込むかだ。私のナレーションはその都度内容が少しずつ変化していったが、大幅な変更はなく無事終わった。

婆須槃頭は私との対話で目新しいことは言わなかったが、新藤由美子が監督する最新作については、目を輝かせて抱負を述べた。しかし私は近々予定されている制作発表の共同記者会見の方が気がかりだった。映画そっちのけで、婆須槃頭の正体を暴こうとするのが目に見えていたのである。

広告の後にも続きます

共同記者会見の日がやってきた。放送局特番「インドから千年の暁を超えて」が放映される前である。

「山名戦国策」の制作発表という名目での記者会見となった。会場となったのは、タレントの記者会見でおなじみとなった老舗ホテルのホールである。午後一時の開始ということだったのにすでに報道陣は満席であった。私は壇上の末席に座ったが中央の席は空席のままである。そこに婆須槃頭が座るはずだ。新藤監督と佐々木プロデューサーはその右脇に座った。

時刻は午後一時五分前である。共演者の一人、ベテラン俳優の河村凛風も中央隣に着席した。山名宗全の役である。プロデューサーの佐々木洞海が河村と気安く会話を始めた。時折小さな笑い声も出てくる他愛ない会話である。時折、佐々木は報道陣のほうへ視線を投げかけるがたいした値踏みでもなさそうだった。

一時きっかりとなった。司会の男性が口火を切った。

「皆さんこんにちは。司会をやります田伏(たぶせ)明です。ただ今から、東活映画と関東テレビ放送の共同提携作品『山名戦国策』の制作発表記者会見を行います。この映画の制作にあたり概要などの発表は、製作の佐々木洞海さんにやっていただきますがそのあとご質問を随時承ります」

「その前に質問、ちょっといいですか」

  • 1
  • 2

TOPICS

ジャンル