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つき合う女性が「他者の所有物」となると、かえって安心する…

幻冬舎ゴールドライフオンライン

本記事は生田仁真氏の書籍『ミレニアムの黄昏』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部抜粋・再編集したものです。

【前回の記事を読む】【小説】崩れ始めた三角関係…きっかけは真理の「見合い話」

来栖・葛城・真理の三角関係

真理から結婚を前提として見合いをするかもしれないという話を聞かされて後、葛城のほうは個人的に真理に連絡を取り二人で頻繁に会うようになっていた。もとよりこれは後から分かったことだ。もっとも来栖自身も短期間に終わったが真理と二人きりで会っていた時期があったので葛城を一概に責められない。

したがって両人共に真理から一定の距離をおき、その美しさを愉しむだけの関係を保ち、親しくなってしまうことにはならないように努める、という暗黙の不文律を一時期だけとはいえ守っていなかったということになる。もっともこのような約束事を来栖は葛城とはっきりと交わしていたことはなかった。葛城と暗黙の了解をしたとの思惑にすぎない。それとも何ら根拠のない思い込みだったと言った方がより正確かもしれない。

つき合いの長さや深さなど一切端折り、帰結の面から見れば来栖は真理を葛城に譲ったのか、あるいは彼女に捨てられたということになる。そして来栖の判断とは裏腹に、葛城のほうは女性に対し高校時代と同様、積極的に働きかける意欲を捨ててはいなかったということだ。それとも当時葛城が積極的に近づいていったのは真理に対してだけで、他の女性に対してはあくまで距離を置いて対応していたのだろうか?

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葛城が高校時代に較べると変わったのか、それとも同じままなのかについても判断がつきかねた。それに加え、来栖はつき合う女性が他者の所有物となると、かえって安心して当の女性とその後もつき合えた。自身の性向としては、敗北者の立場に転落するというようなことは想定外のことで、気にもならないことだ。これは負け惜しみではなく自分自身が生涯結びつくことになってしまうと思った異性の相手には、急に心が反転して拒絶感というのか、それどころか恐怖心という感情まで芽生えてしまう。彼の場合は理屈抜きでそうなってしまう。

自身のエゴイズムで明確に自覚できているのは、男性が女性を所有物とみなす考え方をしてしまうということだ。それ以外では自己の劣性の性格が周りにどのような影響を及ぼすかについてはぼんやりとしたイメージしか持てなかった。逆に、自己の性格には人に喜びや感動をもたらせるような麗質などあるのかどうかも、突き詰めて考えぬいたことがなかった。

自分自身でも持て余すような考え方が身についてしまっているようだとは多少自覚しながらも、堂々巡りを脱け出し、何とか納得のいく結論を得ようともがいているというのが実情だった。或いは真理と葛城の二人を主体に考え、両人が深く結び合っていると、はっきり判ってしまうようなことになれば、かえって来栖のほうとしては自分なりの新しい生き方を模索し、何とか本来の自己を取り戻すこともできるだろう。彼は楽観的な見方が出てきたところでその先を思案するのをやめてしまった。

葛城を出し抜く意図など全くなかったが、来栖のほうも結婚に至る前の真理と二人きりでつき合った時期があった。葛城と真理の結婚に至る関係など全く知らないまま、たまたまの成り行きで真理とハイキングや映画鑑賞など普通のデートを重ねた。三人共によく参加していた音楽サロンの例会に葛城が来ないことが何回か続き、散会後に真理と二人きりになったのが発端だった。

葛城が音楽サロンから足が遠のいた理由としては、仕事が忙しくなり過ぎたのではと勝手に推量していた。部署が違うのではっきりとは断言できないが、葛城が中間管理職として仕事に追われているような姿を役所の中で何回か見かけていた。来栖もその当時同じ区役所に勤めており、実際に葛城は同年齢の同輩より一足早く課長代理となり、本当に多忙そうだった。

担当課も異なる上に、来栖が役所で補助要員としての働きしかしなくなってからは、二人が職場で接することがほとんどなかった。まれに共同のプロジェクトに加わって仕事をする場合も含め、挨拶と仕事の打ち合わせをするだけで、どちらかというとむしろ疎遠な関係になっていた。

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