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脳死の定義がくつがえる?死んだ人間の目の活動を復活させることに成功

カラパイア


 アメリカの研究グループが、死んだ人間の目を復活させることに成功した。

 死後5時間経過していた目に酸素と栄養を与えると、細胞のコミュニケーションが回復。「網膜」を光で刺激すると、これに反応して「b波」という電気信号が発生したという。

 b波は生きている細胞で見られるもので、モノを見るときに重要な働きをする「黄斑」の細胞同士がコミュニケーションを交わしているサインだ。

 死亡した人間の目のこのような光への反応が確認されたのは史上初だという。

死後の酸素不足に脳はどう対処しているのか?

 人が死んでしまったとしても、一部の臓器を移植することは可能だ。だが、「ニューロン(神経細胞)」のような中枢神経系は、心臓が止まって酸素が供給されなくなるとすぐに活動を停止し、二度と回復しない。

 しかし、どのニューロンも同じタイミングで機能停止するわけではない。場所や細胞の種類によって生存メカニズムが異なっているからだ。これは脳死が複雑な現象である要因でもある。

 もし脳が酸素不足にどう対処しているのか理解できれば、失われた脳機能を回復させるヒントになるかもしれない。

 これについて、いくつか有望な研究がすでにある。例えば2018年、イェール大学の研究グループが、死んだ豚の脳を36時間生かし続けることに成功した。

 このグループはさらに死後4時間経過後に、わずかだが脳の反応を回復させることにも成功している(ただし、脳波として計測できるような組織的な反応ではない)。

 こうした成果は、人工血液・ヒーター・ポンプで脳に酸素と栄養を補給して実現されたものだ。

Photo by David Matos on Unsplash

死後5時間経過した人間の目を復活させることに成功

 これと同じことは、マウスと人間の目でも可能であるようだ。ここは神経系で唯一、外に露出している部分である。

 今回これを試したのは、米ユタ大学とスクリプス研究所のグループだ。

 彼らはすでに死んでいる臓器移植提供者の目に酸素と栄養を補給し、ニューロン同士の同期活動を回復させることに成功した。

 「網膜細胞同士の会話を復活させました。視覚を司る目が生きているときにやっていることです」と、ユタ大学のフランス・ヴィンバーグ氏は語る。

 「過去の研究では、臓器提供者の目の電気活動を限られた範囲で回復させることはできましたが、黄斑で、しかもこれほどの範囲で成功したのは史上初のことです」

 この研究では、死後5時間経過している網膜細胞が光に対して再び反応。酸素不足のためか、その後すぐb波は低下したという。

Photo by unsplash

脳死の定義がくつがえる可能性

 一時的に網膜の細胞が復活したからといって、もちろん目が見えているわけではない。そもそも脳が活動していないので、映像が作られ、それが認識されることもない。

 しかし脳死は「ニューロン間の同期活動の喪失」と定義されることもある。この定義に従うなら、今回の人間の目は完全には死んでいなかったことになる。

 網膜は中枢神経系の一部だ。ゆえに今回確認されたb波の回復は、脳死が現在定義されているように、本当に絶対に回復しないものなのかどうか疑問を抱かせる結果であると、『Nature』(2022年5月11日付)に掲載された論文で述べられている。

photo by Pixabay

網膜の移植手術にも期待

 「光受容体」という特殊なニューロンをある程度回復させられるのなら、将来的には移植手術で、目を患う患者の視力を回復させることもできるかもしれない。

 それは長い道のりになるだろう。移植する側の網膜細胞を、移植される側の網膜回路に自然につなげる必要があるからだ。これは今、研究者が取り組んでいる難題だ。

 だが、目のドナーや動物モデルにとっては大きな意味を持つ。

 「今回の研究により、実験動物では無理だった方法で、人間の視覚を研究できるようになりました」と、ヴィンバーグ氏は話す。

 こうした結果が、臓器移植に関連するコミュニティ、ドナー、アイバンクなどを前向きに動かすことになれば、と彼は願っている。

References:Scientists Have Revived a Glimmer of Activity in Human Eyes After Death / written by hiroching / edited by / parumo

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