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「結婚前に妊娠してしまう」という目標を達成した女。それは、ある“最低な秘密”を隠すためで…?

東京カレンダー

「結婚前に妊娠してしまう」という目標を達成した女。それは、ある“最低な秘密”を隠すためで…?

恋に落ちると、理性や常識を失ってしまう。

盲目状態になると、人はときに信じられない行動に出てしまうものなのだ。

だからあなたもどうか、引っ掛かることのないように…。

恋に狂った彼らのトラップに。

▶前回:結婚まで考えた元カノと再会し、4年ぶりに一夜を共にした直後…。女から聞かされた衝撃の事実



夏原裕樹「28にもなって、授かり婚だなんて…」


「母さん、こちらが美紀さん。…来月、籍を入れようと思ってるから」

土曜日の昼下がり。僕は婚約者を紹介するために、松濤の実家まで来ていた。

「斉藤美紀と申します。…これ、よかったら召し上がってください」

そう言って『空也』のもなかを差し出した美紀を、母さんが見つめている。表情は穏やかで、彼女に対して好意的な印象を持っていることはすぐにわかった。

「裕樹が素敵なお嫁さんを連れてきてくれて嬉しいわ。お茶を入れてくるわね」

そう言って、リビングを後にした母さんの背中を見た瞬間。スーッと肩の力が抜けていく。

「…緊張してたの?」

「そりゃそうだよ。28歳にもなって授かり婚だなんて。母さんが驚くんじゃないかって」

「どうせ結婚する予定だったんだからいいじゃない。少し予定が早まっただけよ」

僕の顔を覗き込みながら、美紀が優しく微笑む。僕たちは同じ広告代理店に勤める28歳。部署は別だが、偶然一緒になったプロジェクトで出会い、交際に至った。

いつかは結婚をと考えていたが、1ヶ月前に想定外の妊娠が発覚し、予定していたよりも早く籍を入れることになったのだ。

「さぁ。いただいたもなか、召し上がりましょ」

母さんがいれてくれたお茶を飲むうちに緊張もほどけていき、雑談に花が咲く。

「美紀はね、大学時代に演劇をやってたんだってさ」

「まぁ、そうなの…!きっとお父さんと話が合うわね」

「はい。裕樹さんが、あの夏原裕次郎の息子だと聞いたときは、すごく驚きました」

「裕樹とお父さんはあまり似てないものね」

僕の父である夏原裕次郎は、デビュー40周年を迎えたベテラン俳優だ。23歳のときに刑事ドラマでブレイクして以来、甘いルックスと渋い声のギャップで、今もマダムを中心に人気を博している。

「…残念ながら俺は、母さん似だな」

「失礼ね~」と口をとがらせる母さんを見て、美紀がクスクスと笑った。

「ぜひ今度、お父様にもご挨拶させてください」

そう言って、彼女がもなかを口に運ぼうとしたそのとき、玄関から声がした。


裕樹の前に姿を現したのは…

そこには白いTシャツにジーパンを穿いた父が立っていた。

「あれっ、今日は丸1日撮影じゃなかったの?」

「半日巻いたんだ。なんだ裕樹、来てたのか。実家に帰ってくるなんて久々じゃないか」

「父さん、久しぶり。今日は結婚の挨拶に来てて…」

隣で小さく会釈する美紀をジッと見つめた父さんは、少し間をおいて右手を差し出した。

「よろしく、美紀さん…。君と会うのも久しぶりだね」

彼女を見て、父さんが目を細める。付き合う前に一度、2人で父さんの楽屋を訪れたことがあったのだ。それを覚えていたようだった。

― あぁ、本当によかった。

美紀と父さんが握手を交わす姿を見て、僕は心の底から安堵した。想定外の授かり婚だったが、両親は温かく僕たちを迎え入れてくれたから。



それから9ヶ月後。僕と美紀の間には、可愛い男の子が生まれた。

そして出産をキッカケに、父さんが購入してくれた実家からほど近い松濤のマンションで、新生活をスタートさせたのだ。

可愛い息子に、大好きな妻。僕は大きな幸せの中にいた。



斉藤美紀「私、あなたとの子どもがどうしても欲しくて…」


「すごく、よかった」

円山町にあるホテルの一室。乱れた髪の毛に手櫛を通した私を、ゆうくんがそっと優しく引き寄せてくる。

「愛してるよ、ゆうくん」

「あぁ。俺もだよ」

耳元で囁く彼の声を聞くたび、私は全身の毛が全て奮い立つような快感を覚える。

しばらくして寝息を立て始めた彼を横目に、私は体調管理アプリを立ち上げた。カレンダーには「妊娠可能性・高」と書かれている。

― よし、完璧だわ。

私は幼い頃から、すべてを手に入れてきた。ルックスもよく、勉強も運動もできたし、欲しいと思った男はすぐ彼氏にしてきたのだ。

そんな私が今、どうしても手に入れたいもの。それは目の前にいる、ゆうくんとの子どもだった。



それから2ヶ月後の、ある夜のこと。

「ねえ、子どもができたみたい…」

仕事から帰宅したゆうくんに打ち明けると、彼は大きく目を見開いて、戸惑いを隠せない様子だった。

「えっ、マジ!?いつだろ…」

「そうだよね。私もびっくりしちゃって…」

私の告白に、一瞬の沈黙が流れた。しかし数秒後、何かを覚悟したような表情をしたゆうくんは、私の目を見てこう言ったのだ。

「美紀、結婚しよう。来週ご家族に挨拶しに行こう」


幸せな授かり婚のはずが…。女が隠していた衝撃の事実

「初めまして、夏原裕樹と申します」

三軒茶屋にある私の実家を訪れたゆうくんは、震える声でそう挨拶した。母は彼をジッと見つめたまま、微動だにしない。

3歳のときに夫を亡くし、私を女手1つで厳しく育ててくれた母。

今回の授かり婚のことをどう思うのだろうかと心配だったが、母から飛び出したのは予想外の言葉だった。

「美紀をよろしくね」

そう言って、母はゆうくんに握手を求めたのだ。

「ありがとうございます。必ず幸せにします」

彼は安堵の表情を浮かべ、柔らかく微笑む。しかし母は、不思議そうに私の顔を覗き込んできた。

「ねえ美紀。名前はひろきさんなのに、どうしてゆうくんと呼んでるの?」

母の言葉に一瞬ビクッとしたが、私は平静を装って答える。

「裕樹の“裕”は、ゆうとも呼ぶでしょ?」

「まぁ、そうだけど…。ひろくん、のほうが自然じゃないかしら」

「僕の父は裕次郎というんです。僕もそこから一文字とって、裕樹と名づけられました。父は“ゆうじろう”ですが、僕は“ひろき”なんです」

「だからって、ねぇ?おかしな子ね」

母の言葉を聞きながら、私は初めてゆうくんと出会った日のことを思い出していた。



ゆうくんを初めて知ったのは、5歳のときだ。

母の部屋にあった1枚のDVD。私は、その映画の主演を務める彼の甘いルックスに引き込まれ、演劇の世界に興味を持った。

彼のことを「ゆうくん」と呼び、同級生たちがセーラームーンに夢中になっている中、1人刑事ドラマの中の彼に心を奪われていたのだ。

そして18歳のとき。ゆうくんが以前所属していた劇団に、3度目のオーディションで合格した私は、彼が主演する映画の脇役として参加した。

色男と言われていた彼は噂通り、若い女優たちと不倫を繰り返していた。しかしスキャンダルが何度出ても、絶対に離婚することはない。

「僕が愛しているのは妻だけです」

そう言って妻へ土下座をするシーンが放映されると、彼の出演するドラマは軒並み高視聴率を叩き出すのだ。

私はそんな彼を追いかけ、22歳まで演劇を続けた。しかし芽が出ることはなく、夢を諦めて就活にシフトしたのである。

幸運にも2人目のゆうくんと出会ったのは、その後だった。

就活も終盤に差し掛かった頃「夏原裕次郎の息子が、大手広告代理店に就職する」という噂を掴んだ。私は死に物狂いでOB訪問を続け、100倍を超える秋採用の倍率から内定を獲得した。

そして入社3年目。ついにゆうくんと同じプロジェクトのメンバーになり、猛アプローチを仕掛けたのだ。

「ねぇ、ゆうくんって呼んでいい?」

「えっ。僕の名前はひろき、だよ?なんでよ」

「ひろくんだと、みんなと被っちゃうでしょ?それがイヤなの」

デートの帰り道。私が放った言葉に、ゆうくんはまんざらでもない表情を浮かべた。

「まぁ、いいけど。…じゃあ、また明日」

「うん!お父さんの舞台、楽しみにしてるね」

翌日。楽屋で夏原裕次郎に会わせてもらった私は、彼にも猛アプローチを仕掛けた。そして、一夜をともにする仲にまでなったのだ。





「おじいちゃんにそっくりね」

裕樹のお母さんが微笑みながら、息子を抱いている。

「ほんとだな。僕にはちっとも似てないけど、可愛いな」

そう言って嬉しそうなゆうくんを横目に、私は少し離れた場所にいる、もう1人のゆうくんに目を向ける。

彼はひきつった笑顔を浮かべ、私を見ていた。


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