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月の土で植物を栽培することに成功。ただしはあまり好みの土ではない模様

カラパイア


 さて前回カラパイアでは、長らく密封されていた、アポロ計画で持ち帰った月の土が、新たな実験を行うために開封されることをお伝えした。

 フロリダ大学の研究グループは、アポロが持ち帰った月の土を使って植物を育てる実験を行い、これに成功したという。

 将来的に人類が月に移住するとしたら、そこで食料を生産できなけばならない。月の土で農作物を作ることは可能なのか試すためだ。

 ただし植物からはかなり不評であるらしく、成長が遅く、ストレスに関連する遺伝子が大量に発現したそうだ。月の土と地球の土では、成分が大きく異なることが原因であるようだ。

 それでもで月で植物を育てる最初の一歩を踏み出したこととなる。

地球とは大きく違う月の土「レゴリス」

 月の表面は、「レゴリス」という土に覆われている。小さな隕石が絶えず衝突したことで形成された、緩い塵状の堆積物だ。

 1960年代~70年代のアポロ計画でレゴリスが地球に持ち帰られたとき、そこに地球の生命を脅かす病原菌が含まれている可能性が懸念された。

 そこで植物や種を一時的にレゴリスにさらし、成長に変化があるか検証する実験が行われたが、当時はレゴリスで作物を育てようとは試みられなかった。

 その後NASAは、地球の物質から月の土を模した「JSC-1A」という模擬レゴリスを開発。しかし模擬レゴリスは、本物とまったく一緒なわけではなかった。

 まず化学的に違う。本物に比べ、JSC-1Aはチタンなどの鉱物が少ない。また地球では物質が酸化するために、鉄の状態も違う(鉄は光合成に利用される酵素などの重要な要素だ)。

 さらに物理的な違いもある。月に隕石が衝突すると、レゴリスが急激に溶け、次いで一気に冷却。そのためガラス質の小さな球が形成される。

 これを再現するために、JSC-1Aでは火山で作られたガラスが利用されているが、それでも完全に同じなわけではない。

 今回、本物のレゴリスで植物を育てる実験が行われたのは、こうした背景がある。

Researchers planting thale cress seeds in lunar soil

 使われたのは、アポロ11号・12号・17号によって持ち帰られたレゴリスだ。いずれも火山性の地域から採取されたものだが、年代は違う。

 一番長く月面に存在したのはアポロ11号のもので、17号のものが一番新しい。

植物の発芽には成功、ただし重度のストレス反応で成長が困難

 実験では、1グラムのレゴリスが詰められたトレイに種を植え、栄養入りの水を下から給水した。

 なお種は「シロイヌナズナ(アブラナ科)」のもの。研究によく使われ、遺伝子の機能もよく理解されているために選ばれた。

 種を植えてから1週間、どれもごく普通に発芽。まったく問題ないように思われた。

 ところが、それから数日後に根を調べてみると、レゴリスに植えられたものは成長に遅れがあることがわかったのだ。

各土の成長比較。上からa)6日後、b)6日後、8日後、c)16日後。左からJSC-1A(月の模擬土)、アポロ11号、アポロ12号、アポロ17号が持ち帰ったレゴリス(月の土) / image credit:Paul et al., Communications Biology, 2022

 レゴリスで育てられた植物は、全体的に成長が遅く、ばらつきがあった。葉を開くまでに時間がかかり、大きさも小さかった。背が低く、色素にも変化があった。明らかに欠陥があるものもあった。

 こうした問題はレゴリスの年代と関係があるようで、一番よく植物が成長したのは、もっとも新しいアポロ17号のレゴリスだった。

 レゴリスで育てられた植物では、重度のストレス反応が確認されている。ストレス反応に関連するものが数多く発現していたのだ。

 そうした遺伝子の7割は、リン酸不足・金属毒性・活性酸素に関係しており、特に最後のものは鉄の状態の違いによるものだと考えられる。

 また小さくてもほぼ正常に成長した植物の場合、JSC-1Aと比べて100~150個ほど遺伝子の発現に違いがあった(多くは旱魃と塩のストレスに関連)。一方、欠陥があった植物の場合、1000もの発現に違いがあった。

レゴリスはとても貴重なので、NASAは各12gだけを科学者に貸し出した。/ image credit:Tyler Jones, UF/IFAS

月で畑を作るメリットはあるのか?

 どうやら月の土は、植物にとって強いストレスになるようだ。

 レゴリスに栄養入りの水をまいても、有機物と混ざることもないし、金属毒を封じ込めてくれる微生物が増殖することもない。植物にとってはかなり育ちにくい土ということになる。

 月の土を植物に適したものにするには、手間も物資も必要になる。どちらも宇宙では貴重なものだ。

 このような視点からみると、月の土を使った農業は、それほど物資の節約につながらず、あまりメリットがないということになる。

 少なくとも鉄の状態なら、化学処理で地球のものに似せられる可能性も指摘されている。だが、一応成長はできるとしても、植物がレゴリスを好んでいないことは明らかだ。

 ゆえに、そうしたからといって十分な作物を収穫できるとは期待できそうにない。

 今後の研究を通じて、月の土に強い植物を選び、さらに品種改良することもできるかもしれない。

 ネックになるのは、そうした研究を行えるだけのレゴリスが地球上にないことだ。月で畑づくりをするには、まず本物と同じ模擬レゴリスを開発せねばならないようだ。

 この研究は『Communications Biology』(2022年5月12日付)に掲載された。

References:A first: Scientists grow plants in soil from the Moon – UF/IFAS News / Plants will grow in lunar regolith, but they don’t like it | Ars Technica / written by hiroching / edited by / parumo

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