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気合を入れて参戦した食事会、個室の扉を開けると…。そこにいた招かれざる客とは

東京カレンダー

気合を入れて参戦した食事会、個室の扉を開けると…。そこにいた招かれざる客とは

―…私はあんたより上よ。

東京の女たちは、マウントしつづける。

どんなに「人と比べない」「自分らしく」が大切だと言われても。

たがが外れた女たちの、マウンティング地獄。

とくとご覧あれ。

◆これまでのあらすじ◆
アイドル・凜香はパパラッチされ、仕事が減ってしまう。そして、自分を売ったのが友人の真帆だと知り、真帆の身辺を探り、そして…。

▶前回:週刊誌に売られたトップアイドル。SNSの裏アカをのぞいて確信した、自分を売った犯人とは



凜香:「なるほどね」


ある男から、報告が上がってきた。

…大きい声では決して言えないが、お金を積めば暗躍してくれる、芸能界の裏ではちょっと知られた男だ。

『郷田真帆、27歳。総合商社勤務。恵比寿在住』

私がIT企業の社長たちと食事会しているシーンをパパラッチし、週刊誌に売ったのは高校時代の友人・真帆だとすぐにわかった。

けれど、この怒りを真帆に直接ぶつけても意味がない。ただの喧嘩で終わるだけ。そんな意味のないことをするほど、私も愚かじゃない。

― 真帆には、もっとちゃんと苦しんでもらわなくちゃ。

「それにしても、こんなしけたマンション住んでんだ…。犬小屋みたい」

自宅から東京タワーを見下ろしながら、男から送られてきた真帆の情報を眺め、ほくそ笑む。

家も、年収も、ステータスも、知名度も。

今の彼女は、私に何ひとつ敵わない…。

― 下手に私に喧嘩なんて売らなくちゃよかったのに。バカな女ね…。

そして、メンソールに火をつけようとした瞬間、男から真帆にまつわる続報が入った。


アイドルの凜香は、天敵である真帆が○○であるということを知ってしまい…

<郷田真帆はどうやら婚約中で、婚約者は名古屋に赴任中だそうです>

その一行は、私をぞくっとさせた。

「これ…、めっちゃ使えるじゃん」

どう、この切り札を使おうか。考えるだけで、楽しくなる。

人の不幸は蜜の味。

嫌いな人の不幸は、…なんと表現したらいいのだろう。



自分がくだらないことをしているという自覚はある。頭では理解している。

だけど、間違ったことをしているとは思っていない。やられてやり返さない人間を、私は軽蔑する。

華麗にスルー。相手にするだけ無駄。同じ土俵に立ったら負け。無視すればいい。

そういう言葉たちが、私は嫌いだ。

そんなローエネルギーな人間に、何ができるのだろうか。

アイドルの世界だってそう。売れている人間ほど、表ではいい顔をしながら、裏では悪態をついていたりする。でも、別に何ら不思議はない。

気に食わないことには物申す。怒る。怒り狂う。そんなエネルギーがある人間だからこそ、ちょっとやそっとの理不尽をものともせず上に行けるのだと思う。

私は、そっち側の人間でありたい。

自分が気に食わないことや人間と私は徹底的に戦う。

何と言われようと。




真帆:「ノンストレスな日々」


タクシーはちょうど六本木交差点に差し掛かったところだった。

交差点から少し乃木坂方面に直進したあたりの商業ビルに、凜香がイメージモデルをしているカラコンの広告があった。

癪に障る笑顔で、目を大きく見開いた広告がでかでかと貼ってあった。

けれど、今は取り外されている。

広告掲出の期間が終わったのか、それともモデルを降ろされたのか。一般人の私にその真偽のほどを知る術はないけれど、あれ以来、本当に凜香の露出は一気に減ったように思う。

TVCMも1本降ろされたとか。私の日常にまた平穏が訪れた。

「あ、そこ右折してください」
「かしこまりました」

ストレスがなくなってからか、肌艶もいい気がする。

― 今日も、モテちゃうな…。

私はるんるん気分で、今日もお食事会へと向かっていた。


食事会に向かう真帆。凜香の仕掛けた罠があるなんて、露知らず…

時間より早くついてしまった私は、指定された店の少し手前で降りた。

時刻は18:45。

徐々に薄暗くなり、夜の活気を帯び始める六本木を歩いていると、ようやく1日が始まるなという感覚がする。

別に夜の仕事経験があるわけじゃないし、どちらかというとお堅い会社で働いている。

それでも、ギラっとした男たちに女として見られることを生き甲斐に感じる私にとってやはり、夜の街がホームタウンなのだ。

気分よく散歩していると、ブブっとスマホに新着メッセージが届いた。

<大志:今日の夜、少し電話できる?>

この高揚感に、水を差す。…いや、自分が悪い事はわかっているのだけれど。

<真帆:ごめん、今日ちょっと仕事なかなか終わらなさそうで…。明日でもいい?>

何も考えずに、つらつらとあることないこと出てくるあたり、自分大丈夫かなと不安がよぎる。

彼は名古屋の老舗企業の跡取り。

仕事で東京に来ているときに出会った。彼が一目惚れしたとすぐにアプローチしてきて、すぐに付き合いはじめた。

男からチヤホヤされることを生き甲斐に感じる私だけれど、今年で27歳。“女”として、強く求められ続ける未来はそう長くないということは理解していた。

だから、どこかで引き際を設けなくてはいけないと思い、諸条件揃っている彼からのプロポーズを受けたのだ。

けれど、幸か不幸か彼とは遠距離恋愛。

私の仕事がひと段落する今年の夏から、名古屋で一緒に暮らし始めようという話をしている。

さすがの私も人妻になったら落ち着くつもりだ。だから、東京の男たちにチヤホヤされるのはそれまで。

私に残された時間は、約半年。最後のモラトリアムなのだ。

それまではラストスパートをかけて、自分が“女”であるということを享受しようと決めている。

<愛華:ちょっと早いけど、ついちゃった!今日はイケメン弁護士だよ~>

高校時代からの友人からの連絡に、ついつい速足になる。

― 大志、ごめんね。結婚してからはちゃんとするからさ!

心の中で彼への罪悪感を消化し、私は指定された店へと急いだ。

はじめて行く店で少し迷ってしまったこともあり、約束の時間を少し遅れてしまった。

案内された個室は、扉を開ける前から盛り上がってる様子が伝わってくる。

手櫛で髪を整え、口角をキュッとあげ、私はその扉を開いた。

そこには愛華の予報通り、金色のバッチを胸に付けたイケメンが数名並んでいたのだが…。

「お待たせしました~」

そう言って、部屋に入った瞬間―。

私の背筋は凍り付いた。



「真帆~、久しぶり~!!」

不気味な笑みを称えた女が、私に手を振っている。

「…え」
「どうしたの!?そんなびっくりしないでよ~」

その笑顔の主は、…凜香だった。

「え、何、女の子たちみんな知り合いなの?」
「やっぱ可愛い子たちって繋がってるんだね~」

驚く男たちを横目に、凜香は微笑み続ける。

その笑顔が、本心から湧き上がっているものでないことは、きっと私しか知らない。

「久しぶり…」

私は、引きつった笑顔でそう返すしかなかった。


▶前回:週刊誌に売られたトップアイドル。SNSの裏アカをのぞいて確信した、自分を売った犯人とは

▶1話目はこちら:清純派のフリをして、オトコ探しに没頭するトップアイドル。目撃した女は、つい…

▶Next:5月22日 日曜更新予定
次回:お食事会に突如登場した、因縁のライバル・凜香。彼女の思惑とは…?


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