
本記事は、北沢いづみ氏の書籍『ギフト』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。
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明日の私と私の明日
少し前のクラス替えの後、学級対抗のバレーボール試合の為の、男女混合練習があった。
全クラスを混ぜた合同練習で、隣のクラスの村上君が同じ練習チームだと聞いて、佳奈はトイレで何度も前髪を直した。
村上君とは殆ど話した事がないけど、それでも密かにファンクラブがあると言われるほどモテる顔で、よくある一目惚れだった。
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背が高く、勉強、スポーツの文武両道がイケてる男子なら、いつの時代だってモテるだろう。
練習が始まり、佳奈と同じクラスの朋子が頻繁にミスをした。背が小さくて、やった事がないバレーボールでルールも知らないなら、仕方ないかと思っていた。
「おいお前、やる気あんのかよ⁈」
突然村上君が右腕と腰の間にボールを挟んで、朋子に歩み寄る。
「できないなら誰かと代わるか、できるように練習しろよ!」
自分はバレー部だからって、ルールを知らない人にそれはないんじゃない?という気持ちと、何でもいいから村上君と話してみたい、ちょっとでも自分を覚えてもらいたい、という真逆の心理が佳奈の背中を押した。