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【小説】「もっと積極的に私に近づいて!」という意思表示とは

幻冬舎ゴールドライフオンライン

本記事は生田仁真氏の書籍『ミレニアムの黄昏』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部抜粋・再編集したものです。

【前回の記事を読む】話の内容は思い出せないが…華やいだ雰囲気は鮮明に覚えている

来栖・葛城・真理の三角関係

来栖のほうは真理とどのように接するかとか、真理をどのように思っているかについては葛城も同様だろうと勝手に早合点していた。ところが三人のつき合いが続いていく過程で、単なる人間同士の関係というだけでなく、何か男女関係というものも三人の間に次第に入り込んできているような気がしてきた。もちろんこれも彼の勝手な主観的判断である。

葛城も真理と二人きりの時には彼自身とよく似た言動を彼女に対しとっているはずと思い込むようになっていた。少し強引すぎると思える推量が当たっているかどうかには頓着しないで、そのような思い込みを持ってしまうことに違和感を覚えることもなかった。

彼の見方からすると、「のどかな三角関係」といったものが崩れたのは彼女のほうからの一種の挑発行為が発端となったような気がする。

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彼女はそれまで三人でいるときには、クラシック音楽とバレエという二つの趣味について語り、ときたま真面目に文化全般に関わる問題提起をしてくるというのが常だった。ところがあるとき「わたくし事」だが趣味のようなものではなく、きわめて個人的な問題に関わることを持ち出してきた。

見合いで結婚するかもしれないという、プライベートで男女の関係に直接かかわってくるような話を二人にほのめかした。これには二人とも当惑したというかたじろいだが、その後彼女の持ち出した話題に迅速に対応したのは葛城のほうだった。もちろんこのことは来栖には後になって初めて判ったことである。

真理が見合い話を切り出したことはあったものの、三人のつき合いは大した波乱もなく淡々と続いていくのか、それとも終わるのか、終わるとしても唐突にか、あるいはゆっくりと自然消滅の形で終わるのか、男二人には皆目見当がつかないままだった。

来栖自身、自分の身に即して考えると、このような選択肢があるようだと漠然とこれからを展望しているだけだった。彼から見て葛城のほうも同様の状況にいるように見えた。もっともこの推測が当たっているか否かは別にして、真理の気持ちのほうはどうかということになると、彼には彼女から引き出せるような材料も見つからないままだった。隠しているようだと思われる彼女の気持ちも、確認することはもちろん、推し量ることさえもできない。

当時を振り返ると、できないというよりも、あからさまに言えばそうしたくなかったのだ。まったく与り知らぬ真相など知らないままで、今の緩い三人の関係がこのまま続けば良いと、当時は考えていた。見合いの話も彼女の口から一度出てきたきりで、その後は三人共に話題にすることもなく立ち消えになったようにみえた。

しかし来栖のほうは彼女の見合い話については何が何でもはっきりさせたいというほどの強い意志はなかったが、一人で彼女の真意をいろんな風に臆測することはあった。一昔前に言われていた女性の結婚適齢期からみて、少し年がいきすぎている彼女がこのような話を持ち出したということは、二人の独身男の反応を確かめたいという思いを持っているということなのか?

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