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前代未聞の取り組み!? 長野県に学ぶ、共生社会実現のヒント

パラサポWEB

2022年3月1日、スポーツ庁が主催する「第一回Sport in Life アワード」の授賞式が行われた。「スポーツ人口の拡大に役立つ取り組み」に与えられる同アワードの記念すべき第一回では12団体が選ばれたが、自治体部門では以前に本サイトでも紹介した「パラウェーブNAGANOプロジェクト~(公財)日本財団パラスポーツサポートセンターと協働で取組む長野県発の未来社会プロジェクト~」(以下、「パラウェーブNAGANO」)が受賞。その喜びの声と、スポーツ人口拡大はもちろん、共生社会実現のヒントとなる取り組みについて、プロジェクトの担当者にお話を伺った。

前代未聞!? 100チーム参加のボッチャ大会を県が開催

「ボッチャ競技大会第1回パラウェーブNAGANOカップ県大会」でプレーをする参加者たち

パラウェーブNAGANO」は、2018年6月に長野県と日本財団パラスポーツサポートセンター(2022年1月日本財団パラリンピックサポートセンターより改称。以下、パラサポ)が、「スポーツを通じた共生社会の創造に向けた連携・協力に関する協定」を締結したことから始まった。2019年にはプロジェクトの一環として「ボッチャ競技大会第1回パラウェーブNAGANOカップ県大会」を開催。この大会の参加資格は小学生以上で長野県在住・在学・在勤または県内出身であること。年齢、性別、障がいのあるなしに制限なしとしたことで、なんと大会には100チームが参加したそうだ。

「本来ならば予算も限られているので、最初はある程度小さい大会を開催して育てていけばいいという案もあったんです」と、この大会を企画した長野県健康福祉部障がい者支援課障がい者スポーツ支援係の金井大地さんは当時のことを振り返る。

「参加人数を少なくしてしまうと、常にボッチャをやっている人しか集まらない可能性がありました。長野県は広いですが、私たちとしては全県網羅をして多くの人に参加してほしかったんです」(金井さん)

そこで、金井さんたちは北信・東信・中信・南信の4つの地域で地区大会を開催し、その後、各地区大会の上位5チームが県大会に進むというルールにした。こうして複数の場所で大会を行ったこと、参加資格を緩やかにしたことなどが功を奏し、自治体開催としては他に類を見ない100チーム参加の大規模なボッチャ大会が実現した。

とんがったことをやれ!

オンラインで取材に対応してくださった、長野県健康福祉部障がい者支援課障がい者スポーツ支援係の金井大地さん

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ボッチャ大会は多くの県民が参加し、無事に終了したが、開催までの道のりは決して平坦ではなかった。大会では1チーム3~6名としたため、100チームの参加があるということは単純に参加者だけでも最低300人。その他、審判や大会スタッフなどを含めるとかなり大規模なイベントになる。

「100チームで開催するのが大変なのはわかっていたので、60チームぐらいに抑えた方がいいんじゃないかという意見もありました。でも、100というインパクトのある数字にこだわりたかったんです。私のわがままを聞いてくれた上司をはじめとする関係者には本当に感謝しています」と金井さんが言うと、上司の田嶋弘之係長は「彼は前例のない方、厳しい方へと進んでいくので、当時の上司も含め、周囲は『また大変なほうへ行くのかな』と思っていたんじゃないでしょうか(笑)。でもいざやってみると、県民の皆さんから評価をいただくことが多くて、こうやっていいものができるんだなと勉強させてもらいました」と笑う。

こうした一見無謀とも思える試みに踏み切ったのには、金井さんが2017年4月から2年間、日本財団パラスポーツサポートセンターに研修派遣として勤務していた際に、ある役員からかけられた言葉が影響しているそうだ。

「とんがったことをやりなさい。反対する人間は絶対いるだろうけど、ついてくる人間もいる。だから前を向いてとにかくやれ、と言っていただいたんです」(金井さん)

その言葉通り、金井さんはボッチャの大会以降も、前例の有無にかかわらず、スポーツを通じた共生社会の実現に向けてあらゆることを模索し続けてきた。そのひとつがSport in Life アワードでも高い評価を得た「パラ学」だ。

プロジェクトの認知には宣伝よりも中身の充実

パラ学の一環「車いすボールチャレンジ」に挑戦する児童たち

パラ学は長野県内の小学校を中心とする学校を対象としたプロジェクト。県独自のパラスポーツ体験型授業や、パラスポーツを題材にした各種プログラムなどを提供し、児童の「多様性」と「しなやかな心」を育もうという試みだ。

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