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この世から不平等がなくならない理由。人は本質的に平等を望んでいないという研究結果

カラパイア


 理想とは裏腹に、人は不平等を減らすことをあまり好まないという研究結果が報告された。例えそうじゃなくても、誰かが得をすると、自分が損をすると感じてしまうことが原因だという。

 社会的に不利な立場にある人々の平等性を高めることを目的とした政策は、依然として誰かの反発を引き起こしているが、こういった本質が根底にあるという。

 『Science Advances』(2022年5月6日付)に掲載された研究によると、多くの人は無意識のうちに、「ゼロサム」思考で考えているという。

誰かの得は自分の損と考える「ゼロサム」思考

 「ゼロサム」思考とは、一方が利益を得たならば、もう一方は同じだけの損をし、全体としてはプラマイ”ゼロ”になるという考え方だ。

 ゼロサムの考え方だと、他人や他グループがチャンスを手にすると、たとえそれが自分にとっても得な状況であったとしても、自らのチャンスが失われると誤って認識してしまう。

 それゆえに格差を是正しようという動きは、必ず誰かから反対されるという。

 カリフォルニア大学バークレー校博士課程の学生デレク・ブラウン氏らの過去の研究では、米国の高等教育で多数派(マジョリティ)を占める白人とアジア人は、少数派(マイノリティ)の大学院進学率を上げる政策について、自分たちの進学率の低下につながると考えているこたことが判明している。

photo by iStock

多数派のゼロサム思考をさらに調査

 そこでブラウン氏の最新の研究では、大学院の進学率だけでなく、より幅広い社会的状況における格差是正に対して、多数派がどのように反応するのかを調べた。

 重要なことは、今回の研究で扱っているのはゼロサム的状況ではない。つまりどちらかが得をすればどちらかが損をするわけではない。

 少数派の状況を改善しても、多数派の現状は維持(あるいは改善される)ような状況に対して、多数派がどう反応するのかを調べたのだ。

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多数派は「誰かの得は自分の損」と考えている

 その結果、ある実験では、白人(米国では多数派)の参加者に、「2018年、白人の住宅購入者は銀行から3863億ドルの住宅ローンを受けた。一方、ラテン系は126億ドルだった」と説明した。

 その上で、人種間の格差を縮小するため、「白人への融資枠を”維持”しつつ、銀行はラテン系への住宅ローンを増やすべきだろうか?」と質問した。

 すると、白人への融資枠は維持されると明言されているにもかかわらず、「ラテン系への融資枠が増えれば自分たちの枠は減る」と白人の参加者は考える傾向にあった。

 それどころか「ラテン系への枠を減らせば、自分たちの枠は更に増えるはずだ」と考えた者もいた。

 このような誤解は、多数派と少数派双方にとって有利な状況でも当てはまるようだ。

 例えば、ラテン系の人々への住宅ローン枠を増やすために、融資枠全体を広げてはどうか? と質問に対して、白人の参加者はそれでも「自分たちへの融資条件は厳しくなるだろう」と考えるのだ。

 一方、ローン枠全体を縮小したとしても(白人もラテン系も融資枠が減る)、白人は自分たちに実害はないと考える傾向にあった。

 さらに奇妙なことがある。住宅ローンに制限がなく、借りたい人なら全員が借りられるような状況はどうだろうか? と質問すると、白人の参加者は、「いずれにせよラテン系へのローン枠を増やすなら、白人は借りにくくなるだろう」と感じるという。

 ちなみに、自分たちが損をすると誤解されないのは、自分が属するグループ内の格差が是正されるときだけだった。

 例えば、男性間の給与格差を縮小すると伝えれば、そう信じてもらえるが、男女間の給与格差を縮小すると伝えてもダメなのだ。

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実際に、平等性を高める政策が反対されている

 こうした傾向は、現実世界ですでに起きており、研究グループは、そのことをカリフォルニア州の「法案16」への投票で確認している。

 同州では、雇用・教育・契約において、公的機関が人種・性別・肌の色・民族・出身国を考慮することを禁じていた。

 法案16は、弱者救済のために、状況によっては人種や性別をもとに優遇措置を与えられるようにするためのものだった。

 ご想像通り、白人とアジア人の大半は、法案によって自分たちの教育や就職の機会が失われると考えており、そう考えている人ほど法案16に反対していた。

 この調査では、反対している人と政治思想・支持政党などとの関係も分析されたが、一番関係していたのは、この法案が通過すれば自分たちの機会が失われると考えているかどうかだった。

 なお、調査から2週間後に行われた追跡調査では、反対票を入れた人の機会が失われると言う認識は、さらに強まっていたという。

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架空の所属グループであってもゼロサム思考に陥る

 ブラウン氏らの最後の実験では、所属グループが完全に架空のものであっても、格差是正を拒むかどうか確かめられた。

 この実験では、多数派の白人だけでなく、多種多様な人種・民族が参加した。

 彼らには、性格テストの結果に基づきガラガラヘビチームに配属されたので、ワシチームと競ってほしいと説明した(実際のところ、性格テストとチーム分けは無関係で、ワシチームは存在しなかった)。

 その上で、これまでガラガラヘビチームはワシチームより多く金銭ボーナスを与えられてきたので、もっと均等にボーナスを配分する方法を考えるよう指示した。

 すると即席のグループであるというのに、ゼロサム思想の傾向が現れたのだ。

 ガラガラヘビチームは、自チームのボーナスを5ポイント増やし、相手チームは50ポイント増やす提案(つまり両チームとも得だし、依然としてガラガラヘビチームの方がボーナスが多い)を拒否。

 あろうことか、自チームのボーナスを5ポイント減らし、相手チームは50ポイント減らす提案を選んだ。つまり両チームとも損し、しかも格差が広がる方を好んだのである。

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人間は相対的な優位性の低下を嫌う

 こうした結果は、外より内をひいきする、社会心理学でいうところの「社会的アイデンティティ理論」を裏付けている。

 同理論によれば、自分が所属するグループと他所のグループとの資源の配分を考える際、人は”相対的”に有利な配分を好む。

 その一方で、たとえ自分が得していたとしても、相対的な優位性が低下するなら損失とみなすのである。

 格差は世界にとって社会的・経済的コストであることを考えると、こうした傾向は非常に厄介であると、ブラウン氏は語る。

 人種の不平等によって失われるGDPは16兆ドル(約2000兆円)で、男女の給与格差は世界経済を160兆ドル(2京円)押し下げているとの試算すらある。

 ブラウン氏らは、不平等が社会全体にとってどれほど重荷なのか、人は誤解しているのではないかと指摘する。

 こうしたゼロサム思考は、格差是正をする上で大きな障害になるだろう。

 何しろ、この研究が示しているのは、全員が賛成することなどなく、「必ず反対者がいる」ということだからだ。

References:Despite ideals, people don’t really like redu | EurekAlert! / written by hiroching / edited by / parumo

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