
マレーシアのボルネオ島では、長年にわたりパーム油生産のための森林伐採によりオランウータンが生息地を奪われている。
カラパイアでは前回、森を荒らすショベルカーと戦おうとしたオランウータンの映像が本物であることを伝えた。
現在、人と動物の対立を少しでも減らすよう、過去に破壊した森林地域に再植林する取り組みも検討されているという。
その試みの1つとして、パーム油プランテーション会社がオランウータンを取締役に任命した。企業で「非人間」の取締役を就任した世界初の例である。
森林伐採でオランウータンの生息地が喪失
マレーシアでは、パーム油生産者がパーム油の生産を増やし活動を拡大するために森林を伐採し、オランウータンの生息地の喪失が顕著となっている。ボルネオ島のオランウータンの個体数は、この約50年で3分の2まで減少した。
棲みかを奪われたオランウータンが、森林伐採するブルドーザーなどに向かっていく姿が捉えられた光景は痛々しい。
こうした対立を軽減するため、地域のパーム油生産者は過去に破壊した森林地域に再植林することで埋め合わせするという取り組みを検討中であり、多くの企業がこれに同意している。
パーム油プランテーション会社『Mun Kee Ma-Jik Bhd(マンキーマジックバーム油社)』も設立以来、東京ドーム約855個(4000ヘクタール)のオランウータンの生息地を奪い、年間14万トンのパーム油を生産してきた。
しかし、今回同社はパーム油産業で長年議論されてきた人と動物の対立を緩和させるためのユニークな試みとして、世界初の究極の多様性にチャレンジした。
パーム油会社、オランウータンを取締役に就任
Mun Kee Ma-Jik Bhdは、今年4月1日付で、同社の取締役特別顧問にオランウータンの“アマン(7歳 メス)”の就任を発表した。今後、アマンは取締役として全ての利害関係者の関与、責任ある進歩の計画を進めることを支援する仲介の立場となる。Palm oil company appoints orangutan to board of directors in diversity world first https://t.co/3cz4rQEEa3
— Eco-Business (@ecobusinesscom) April 1, 2022
新たな植栽を開発または実施する前に、地元の人々からの全ての同意を企業側が確認するという原則に沿って、アマンの承認を通じて非人間コミュニティ、つまり仲間のオランウータンからの合意を得る必要があるというわけだ。
同社の最高持続可能性責任者グリン・ウォッシャー博士によると、親を森林火災で失くして孤児になったアマンは、社交的なスキルと落ち着いた態度を持っており、ストレスのたまった仲間に共感を示すことができるという。

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一説ではオランウータンは人間のDNAとの類似点が多く、チンパンジーよりも人類に最も近い非ヒト霊長類と言われている。
アマンは、生息地にいる仲間とのコミュニケーションを図り、意思表示にはタッチスクリーンを利用するそうだ。
マレーシアでは、女性の取締役はわずか7%未満だが、近年様々な企業において取締役の多様性は見直されてきている。
Mun Kee Ma-Jik Bhdは、オランウータンを取締役に任命することで、性別や年齢、更には人種を超えた究極の多様性を目指しており、アマンが高い社交性スキルを活かしてオランウータンコミュニティに、責任ある森林開発同意を求める役割を果たしてくれることを期待している。
なお、アマンへの報酬はお金ではなくバナナとなり、毎年8月19日の国際オランウータンデーは休日を取ってもらうということだ。
written by Scarlet / edited by parumo