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人間の尿が世界を養うかもしれない。農作物の肥料として尿を活用する動き

カラパイア


 生きることは食べることだ。食べる為には農作物を育てなければならない。だが、大量に育てるためは合成肥料に頼らざるを得ない。

 合成料による環境汚染を懸念する科学者は、とある身近な、それでいて意外なものに注目している。それは人間の尿だ。

 私たちが数時間ごとに排泄する尿には、植物の成長に欠かすことができない窒素やリン、カリウムなどがたっぷりと含まれており、環境に優しい代替肥料として期待されている。


合成窒素を使った肥料が環境に悪影響を及ぼす

 100年ほど前に発明された「合成窒素」を使った肥料は、作物の収穫量を増やし、増加した人口の食を支えるうえで多大な貢献をしてきた。

 しかし大量に使用すると、河川などに流れ込んで藻類を大量に繁殖させ、魚などの水生生物に被害が出る。

 また窒素肥料の原料である「アンモニア」は、車の排ガスと結びついて深刻な大気汚染を引き起こす。さらにそうした肥料は、強力な温室効果ガスである「亜酸化窒素」も発生させる。

 だが肥料に含まれる物質は、畑以外のところからもやってくる。

 米リッチアース研究所のジュリア・カビッキ氏によると、現在起きている環境汚染の主要な原因の1つは、トイレに関係しているのだという。

 排水に含まれる窒素の8割とリンの半分以上は、実は尿由来なのだ。

 ならば尿を排水に流さず、集めたものを畑に届けることができれば、環境汚染も避けられ植物も育てられる。それが今回の研究の趣旨だ。

尿を利用するならトイレや下水の設計から見直しが必要

 合成窒素を生産すれば、環境を汚染するうえに、温室効果ガスが大量に排出される。またリンは量に限りがあり、再利用することもできない。

 窒素とリンをたっぷり含んだ尿が、代替肥料として注目されているのは当然かもしれない。

 国連の推計によると、世界の排水を利用すれば、農業用の窒素・リン・カリウムの13%をまかなえる可能性があるという。

 だが、尿の転用は「言うは易く、行うは難し」だ。

 代替肥料と述べたが、そもそも化学肥料が登場する以前、都市部で出た人間の排泄物は肥やしとして利用されていた。

 今日、人間の尿を利用しようというのなら、トイレや下水の設計から見直さねばならない。

photo by Pixabay

尿回収専用トイレを導入する試験的プロジェクト

 現代社会で尿を肥やしとして利用する試験的プロジェクトは、1990年代初頭にスウェーデンのエコヴィレッジで始まっている。

 そして今ではスイス、ドイツ、米国、南アフリカ、エチオピア、インド、メキシコ、フランスにまで拡大した。

 「革新的エコ技術が導入されるまでには時間がかかります。尿の分離のような過激なものならなおさらです」と、スイスのイアワグ水環境研究所のトーベ・ラーセン博士は話す。

 初期の尿分離トイレは、見栄えが悪く、使いにくい上に、悪臭までしたという。

 しかし尿を別の容器に流し込む最新モデルなら、そうした問題はクリアされるはずだと、ラーセン博士は説明する。

 集めた尿は処理しなければならない。尿は一般に病気の感染源ではないので、世界保健機関(WHO)は一定期間放置するよう推奨しているが、低温殺菌してもいい。

 そうして集めた尿を濃縮や脱水する。こうして堆積を減らせば、農地まで運ぶ輸送コストを下げることができる。

Photo by Red Zeppelin on Unsplash

誰かの尿で育てた作物を食べることへの抵抗は?

 技術的な問題以外にも、クリアすべき課題がある。はたして、世間はそれを受け入れてくれるのだろうか?

 パリの公的都市計画機関パリ・エ・メトロポール・アメネジメントのギスラン・メルシエ氏は、「かなりプライベートな部分に触れるテーマ」だと話す。

 そのパリでは今、店舗と600棟の住宅でなるエコ地区の開発が進んでいる。ここでは尿を回収して、緑地を管理するための肥料として使う予定だ。

 メルシエ氏によれば、オフィス街のような大きな建物や、主要な排水路につながっていない住宅などには、大きな可能性が秘められているという。
尿から肥料を作る方法
1.専用トイレで尿を分離。分離した尿には水を加えず、専用の配管で流す
2.専用タンクで保存
3.マイクロ工場でアンモニアを硝酸に変換・殺菌・浄化する
4.完成した肥料は、園芸にも農業にも使える
 それはレストランも同じこと。パリ市内のレストラン「211」には、尿を回収するウォーターレス・トイレがある。オーナーによると、かなり好評であるらしい。

 「お客さまには軽く驚かれますが、すぐ違和感なく使ってもらえます」と、ファビアン・ガンドッシ氏。

 だが問題は、誰かの尿で育てた作物を消費者が選ぶかという点だ。

 これに関する研究では、人々の態度は国によって違うことがわかっている。例えば、中国・フランス・ウガンダでは普通に受け入れてもらえた一方、ポルトガルやヨルダンでは拒否感が強い。

尿の肥料転用をせざるを得ない状況

 ロシアのウクライナ侵攻で、合成肥料の価格は高騰しており、各国は食料の安全保障を強化する必要に迫られている。

 こうした情勢もあり、尿の肥料転用にはさらに注目が集まるかもしれない。

 人類学者のマリーヌ・ルグラン氏は、「克服すべき課題がまだ残っています」と話す。それでも、水不足や環境汚染に関心が集まれば、人々の考えが変わるきっかけになるだろうという。

 昔の人は畑の肥やしに尿や大便を利用していたのだ。一周回って時代が戻ったと思えば生理的抵抗もなくなるかもしれない。

References:Scientists Say Key to Feeding World May Be Human Urine / Can pee help feed the world? / written by hiroching / edited by / parumo

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