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かつて神として崇められていた動物を米国に呼び戻す計画

カラパイア


 大型ネコ科のジャガーは、南北アメリカ大陸に広く生息していた。遥か南のアルゼンチンまで分布し、かつては北米のグランドキャニオンでもその姿が見られた。

 現在、ジャガーの繁殖地の北限は。アリゾナ州との国境のすぐ南にあるメキシコ北西部のソノラ州だ。米国内では1949年、最後のメスのジャガーがアリゾナ州で殺された。

 アメリカでは、ジャガーは長いこと力の象徴とされ、神話、哲学、芸術など精神世界と結びついていた。

 メキシコにはまだ生息するジャガーを米国に呼び戻すための試みが始まっている。



ジャガーは戻って来るのか?

 ジャガーは生態系の頂点にいる捕食者で、85種以上の多様な獲物をエサにする。このため、彼らが生息しているそれぞれの生態系において、独特だが重要な役割を担っている。

 国際自然保護連合(IUCN)は、ジャガーを準絶滅危惧種に指定している。

 全生息数は、およそ6万4000頭から17万3000頭とされるが、南北アメリカ大陸の地域個体数の実情は、危険なほどの速さで減っており、この70年で、半分以下になってしまった。

 おもな原因は、狩猟と生息地の縮小だ。

 ジャガーが、アメリカ合衆国に戻ってくることはあるのだろうか? 専門家は可能だと考えている。

 メキシコ南部にいるジャガーを、以前の縄張りであるアリゾナ州やニューメキシコ州へ、人間の手で再び移住させることはできる。

メキシコでの現在のジャガーの生息地(緑の部分)。赤い点は目撃された場所を表わしている。数字はジャガーの保護地域。 / image credit:Ceballos et al., 2021

移動用の回廊を維持する重要性

 アメリカとメキシコの国境での生物多様性と野生生物保護の研究から、国境付近のジャガーの動きをまとめた。

 この研究から、ジャガーがアメリカに入るのに利用できるおもな”回廊”は、西部の国境付近にふたつしかないことがわかっている。

 ジャガーやクロクマ、ピューマ、オセロット、メキシコオオカミなどの哺乳動物のバラバラの生息地をつなぐためには、こうした移動用の回廊を維持していくことが重要だ。

 小さな生息地をより大きなネットワークでつなげる──連結性を増やすことは、広範囲に生息する大型動物を保護し、機能的な生態系コミュニティを維持するための重要な戦略となる。

photo by Pixabay

米国最後のメスのジャガーが失われる

 アメリカ南西部の乾燥した環境は、当然ながらジャガーの分布を制限している。

 かつて、ジャガーはアメリカ南西部の森林生態系の頂点にいたが、19世紀から20世紀初頭にかけて、捕食者数をコントロールする対策や狩猟によってその数が激減した。1949年、最後のメスのジャガーがアリゾナ州で殺された。

 1996年、アリゾナ州南東部のペロンチッロ山地で、ガイドとハンターがオスのジャガーの姿をカメラにおさめた。

 それ以降、ほかのジャガーも確認されるようになったが、メスや子どもは目撃されていない。

隣接するメキシコに生息するジャガー

 対照的に、メキシコのソノラ州の北東部には、ジャガーが生息していることが知られている。

 ここでは、大陸分水嶺にあるサン・ルイス山脈の西斜面から流れるカホン・ボニート川が、ジャガーを始め、クロクマ、アメリカビーバー、オセロットなどの大型動物の命を支えている。

メキシコとアメリカの国境地帯に棲むジャガーのエル・ボニートは、ソノラ州北東部のカホン・ボニート地区を利用している

 20年前から、この川周辺の土地は、両国国境の土地の保全と復元に取り組む非営利団体クエンカ・ロス・オヨスによる、再生プログラムの対象地になっている。

 これは現在、メキシコの自然保護区域制度に基づく自主的な保護区プログラムの一環だ。

 東のヤノス生物圏保護区には、ジャガーの生息地も含まれる。

 南北には、自然保護に熱心な牧場や自然保護区が連携して、ジャガーがメキシコとアメリカを移動するのに必要な、生息地の連結性を確保している。

メキシコから米国へ来たオスのジャガーを確認

 2021年、エル・ボニートと名づけた若いジャガーが、アメリカとメキシコの国境付近を歩き回っているのが撮影された。

 ジャガーの斑点模様は、個体によってそれぞれ違うため、このジャガーの両脇腹の模様が映った映像を入手して確認したところ、調査対象エリアには2頭のジャガーがいることがわかった。

 2頭目のジャガーは、ヴァレリオと名づけられた。最近、ヴァレリオは、カホン・ボニート川周辺で、エル・ボニートよりも頻繁に目撃されるようになった。

エル・ボニートの後、ソノラ州とアリゾナ州の国境地域でカメラにとらえられた、もう1頭のオスのジャガー。ヴァレリオと名づけられた。

 オスのジャガーは成獣になると、自分の縄張りを確保して交尾の相手を探すために、単独で放浪しなくてはならない。

 メスは、哺乳動物によく見られるパターンだが、生まれた場所に近いところに居座る傾向がある。

 メスのジャガーの縄張りの大きさは、獲物の豊かさや、利用できる隠れ家の数によって決まる。オスは、交尾の機会を増やすために、複数のメスの縄張りを移動するので、その生息域は35~1000平方キロメートルにも及ぶ。

 エル・ボニートとヴァレリオは、初めてカメラにとらえられたとき、まだ子どもだった。

 調査地でヴァレリオを初めて撮影したのは、2021年の1月のこと。それ以来、エル・ボニートもヴァレリオも、カホン・ボニート川を移動のための回廊として使っている。

 最近は、ヴァレリオが倒れた木に頬をこすりつけている様子が撮影され、これは彼がこの国境エリアに自分の縄張りを確立しつつあることを示している。

 最近、この2頭がアメリカとメキシコの国境から、わずか3キロ南の調査地で撮影された。

 ここの北側には、アリゾナ州とニューメキシコ州の境界でアメリカ側に流れ込む、ペロンチッロ山脈の自然回廊、グアダルーペ・キャニオンがある。

 2021年、グアダルーペ・キャニオンを横断する国境の壁が建設され、アリゾナ=ニューメキシコラインが通れなくなった。ペロンチッロ山脈とサン・ルイス山脈のニューメキシコ州エリアは、開放されたままになっている。

 アメリカ、メキシコ両政府機関と自然保護団体が協力して、絶滅の恐れのある西部の動物の数を回復させようとしている。

 メキシコオオカミ、クロアシイタチ、カリフォルニアコンドル、バイソンの数が増えていることから、ジャガーも増える可能性があると期待できる。

 2021年の研究によると、メキシコのジャガーの数は、この10年の間に増えて、今ではおよそ4800頭になったと言われている。

 ソノラ州のジャガーの数が増えれば、メスが国境にやってきて、オスと交尾する可能性が出てくる。

 いまだに生息地の喪失と違法な狩猟が、メキシコ北部のジャガーにとってのおもな脅威になっている。

 自然保護区を作って、繁殖できる個体数を支え、北へ広がっていくためのルートを提供することが、ジャガーがアメリカで再び生息する助けになるだろう。

 複数の機関や科学研究プロジェクトが、多様な動植物の生息地を維持するために、自然のルートを解放しておく必要性を強調している。

メキシコとアメリカの間の野生動物が移動するための回廊であるペロンチッロ山脈の眺め。メキシコの国境から北のニューメキシコ方面を撮影したもの / image credit:Ganesh Marin , CC BY-ND

 ジャガーだけでなく、カメラはオセロット、ピューマ、クロクマなど少なくとも28種のほかの動物もとらえていた。

 これらの動物が皆、長期にわたって生き延びるためには、少なくとも移動することができるつながった地形が必要だ。

 ジャガーが、アメリカの適切な生息地に自然に棲めるようにすることが、国境地帯での動物の移動を促進するまたとない機会だと考えている。

 このような地形のつながりを保つことは、野生動物の源であり、通り道でもある、生態学的にユニークなこの地域のすべての種の助けとなるはずだ。

References:Jaguars could return to the US Southwest – but only if they have pathways to move north / written by konohazuku / edited by / parumo

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