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宇宙犯罪も違法です。月で犯した罪も罰することができるよう刑法改正の動き(カナダ)

カラパイア


 NASAの「アルテミス」計画では2025年、人類を再び月面に着陸させる予定だ。また、多国間で月周回軌道上に有人宇宙ステーションの建設計画もあり、今後はアポロ時代に匹敵するほど各国で月面旅行が盛んになって来るだろう。

 そんな未来に備え、カナダ当局は、あらゆる月面の犯罪を阻止する準備を進めている。カナダの宇宙飛行士は宇宙で罪を犯すことは許されない。カナダの法律が遠く宇宙にまで適用されるようになるからだ。

 4月26日、議会に提出された443ページにわたる予算執行法の中には、月面での犯罪を含む法律の改正案が含まれている。

 すでに刑法では、国際宇宙ステーションへの宇宙飛行中に宇宙飛行士が犯罪を犯す可能性が想定されている。ここで犯した犯罪は、カナダ国内で犯した犯罪と同等とみなされる。

カナダ人が宇宙で罪を犯すと国内と同等の法律で裁かれる

 カナダは、各国が参加して、月軌道に有人の宇宙ステーションを作る「月軌道プラットフォーム・ゲートウェイ(以下ルナ・ゲートウェイと省略)」プロジェクトに参画しているため、連邦政府は新たな宇宙の目的地についても法律に組み込むために、刑法を改正することを決定した。

 改正法案書の「カナダ人乗組員」の小見出しの下にはこうある。
カナダ人乗組員が宇宙飛行中に、カナダ国内で行えば起訴される犯罪行為を行った場合、それはカナダ国内で行ったのと同等とみなされる
 改正案によると、これは、ルナ・ゲートウェイの中、ルナ・ゲートウェイへの往復移送中、月面で行われたあらゆる不正行為が対象になるという。

 つまりカナダ人は宇宙空間のどこにいても罪を犯せば、カナダ国内と同じ法律で裁かれるのだ。

image credit:Canadian Space Agency

宇宙犯罪が起きないとは限らない

 カナダは、このルナ・ゲートウェイ・プロジェクトに積極的で、2022年の連邦予算では、この計画のためのロボットツール「カナダーム3」の建設と運用に、24年間19憶ドルを投資すると発表した。

 2020年12月、カナダ宇宙庁(CSA)とNASAは、「ルナ・ゲートウェイ」プロジェクトにカナダが参加することを確認する条約に調印した。

 さらに、1972年以来の有人月探査である「アルテミスⅡ」計画にカナダ人飛行士も参加することも確認された。

 カナダはNASAと共に月に向かうことになっている。カナダ宇宙庁は、ルナ・ゲートウェイのためのロボットを構築し、ISSのための人口知能も開発する予定だ。

 宇宙飛行士たちが絶対に罪を犯さないとは限らない。その数が増えるにつれ犯罪の確率も増えていくことだろう。

 こうしたミッションを見越して、連邦政府は犯罪が起こった場合を含めた刑法を改正しようとしているのだ。

image credit:NASA

かつて宇宙で起きた犯罪

 宇宙で起こる可能性のある犯罪の問題は、2019年、NASAが宇宙初の犯罪容疑とされた案件を調査した際に浮上した。

 国際宇宙ステーション(ISS)に6ヶ月滞在していた、宇宙飛行士アン・マクレーンが、地球にいる別居中の夫、サマー・ウォーデンの銀行口座に不正にアクセスした疑いが持たれた。

 マクレーン氏は2019年6月に地球に帰還し、口座にアクセスしたことを認めたが、不正行為は否定した。

 その後、マクレーンの容疑は晴れ、ウォーデンは連邦当局に虚偽の供述をした罪で起訴されたそうだ。

 しかし、この事件は宇宙法に関する潜在的な問題を浮き彫りにした。

 この事件が話題になったとき、マギル大学航空宇宙法研究のラム・ジャクー教授は、この捜査が域外法の新たな法的ルールを確立するための緊急の警鐘になったと書いている。

photo by Pixabay

今後宇宙でも起こりうる犯罪

 今後も宇宙活動の急激な拡大が見込まれることから、将来的に宇宙での犯罪発生件数が増えると予想されると彼は言っている。

 宇宙での殺人や、宇宙への輸送機のハイジャック、宇宙での核爆弾の使用などさまざまな犯罪が考えられる。

 このようなルールは、地球上での国籍が違っても、宇宙へ向かうすべての人類に共通するものという考えが、論理的であり、必須になるだろう。

NASAが主導する月周回軌道宇宙ステーション「ルナ・ゲートウェイ」に導入される「カナダーム3」の巨大アーム想像図 / image credit:Canada Space Agency, NASA

もっとも効力のある国際宇宙法「宇宙条約」

 宇宙での活動を規定する国際条約は5つある。その中でも、カナダを始め100ヶ国以上が批准している1967年に発行された『宇宙条約』が、宇宙での犯罪に対処する上でもっとも効力があると、オーストラリア、ボンド大学で憲法と国際法を専門とするダニエレ・アイルランド=パイパー准教授は書いている。
宇宙での犯罪を誰が起訴するのかという問題について、簡単に言えば、宇宙で犯罪を犯した者は通常、その人間が国籍をもつ国の法律、または犯罪が行われた宇宙船が登録されている国の法律に従うということだ(パイパー准教授)
 ISSは独自の政府間協定をもっていて、カナダ、欧州パートナー国、日本、ロシア、アメリカは、それぞれの国民であるフライト要員に対して、刑事裁判権を行使することができるとなっている。

 しかし、ISSで起きた犯罪の被害者が、違うパートナー国の人間だった場合、その国の犯罪法が適用されるとしている。

 また、犯罪がISSのパートナー国の区画で行われた場合、その国の刑法が適用される可能性がある。

photo by Pixabay

カナダの予算案に関する考え方

 連邦予算が、宇宙での犯罪に関する問題までとりあげるのは奇妙に思えるかもしれないが、これは今年盛り込まれたいくつかの法案のうちのひとつで、必ずしも予算支出とは関係がない。

 例えば、予算案にはホロコーストを公に否定したり、軽視したりすると犯罪になるという刑法改正案も組み込まれている。

 また、カナダ更生局が、体内に禁制品を隠し持っている疑いのある囚人を24時間、水も与えず、こうこうと照明をつけたまま監視する問題の多い拘束法「ドライセル」を禁ずる、更生・条件つき釈放法の改正も提案している。

 2022年予算では、裁判官法、連邦裁判所法、カナダ租税裁判所法を改正し、新たに24の高等法院(上級裁判所)の役職を追加することを提案している。

 カナダのマギル研究所のダニエル・ベランド所長は、このような条項を織り込むことは、一般的なことになっていて、予算書は政府がさまざまな問題に対する立場を示すのに使用するため、膨大なものになってきているという。

「これらの文書には、レトリックあるいは背景といったものがたくさん加味されています。ただ単に、これこれに予算をかけますと言っているわけではないのです」

 実際に改正案を作るかどうかは、別途に行わなくてはならないことだが、予算に織り込むことは、”自分たちがなにを支持し、どこへ行こうとしているのかを表明すること”だとベランドはいう。

「つまり、なにかをするという意思を表わすことなのです」

References:Canada Says Astronauts Are No Longer Allowed to Murder Each Other / Crimes on the moon could soon be added to Canada’s Criminal Code | CBC News/ written by konohazuku / edited by / parumo

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