
「我々はあらゆる手段があり、必要があれば使用する」プーチン大統領が今回のウクライナ侵攻で、諸外国の介入に関して核の使用を仄めかしたことで、世界はその脅威を改めて思い知ることになった。
もしもアメリカとロシアの核戦争が本当に起きてしまったとしたら世界はどうなるのか?
プリンストン大学の科学者は、現実における米国とロシアの「軍の方針」「核兵器計画」「核兵器の標的」に基づいて、核戦争がどのように進むのかをシミュレーションした動画を公開した。
それによれば、わずか数時間で9000万人以上の犠牲者が出るという。
通常の戦争が核戦争にエスカレートする可能性
ウクライナを支援する国々は、ロシアの戦闘行為に対する報復として厳しい経済制裁を課し、ウクライナに武器の供給や資金提供を行っている。諸外国のこういった行為はロシアにとって容認できないもので、プーチン大統領は、核兵器の使用をほのめかしていた。
ロシアは4月20日、核弾頭を搭載できる、次世代型、極超音速の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「サルマト」の発射実験に成功したと発表。
更に先日、ロシアの国営テレビの60分ニュース番組では、「ロシアが保有する核兵器は、ロンドン、パリ、ベルリンの生存者をゼロにする能力を持っている」と伝えた。
番組内ではヨーロッパへの核攻撃がどのようなものになるか、恐ろしいシミュレーションを行い、「バルト海にあるロシアの飛び地、カリーニングラードから発射されたミサイルは、106秒でベルリン、200秒でパリ、202秒でロンドンを焦土にできる」と解説し、ヨーロッパの主要首都へのミサイル飛行時間を誇示
ロシアの政治家、アレクセイ・ジュラヴリョフは、「サルマトミサイルを1発発射するだけでよい」と述べた。
As Russia rages over its mounting military humiliation in Ukraine, Kremlin TV is vowing revenge and gloating over missile flight times to major European capitals pic.twitter.com/IOkcYmx5K2
— Business Ukraine mag (@Biz_Ukraine_Mag) April 30, 2022
米国とロシアで全面核戦争、シミュレーション「プランA」
プリンストン大学の科学者のシミュレーション「プランA」は、まずロシアとNATOとで通常の戦争が起きること想定している。しかしロシアが威嚇として1発の核兵器を使用したことで、ヨーロッパで核戦争が発生。主要都市すべてが爆撃された時点で、米国とロシアの全面核戦争に移行する。
このシミュレーションでは、ロシアが米国の主要都市に狙いを定め、住民には事前に何らの警報も出されないと想定している。
現実には、核兵器が使用されると事前に警告されれば、シェルターなどに避難するだけの時間があるだろう。

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最初の45分で310万人、最終的には9000万人を超える犠牲者
米国とロシアで全面核戦争が起きれば、最初の45分で340万人の犠牲者が出ると推定されている。ヨーロッパ、アジア、米国を合わせた最終的な死傷者は9000万人。これは核兵器による直接の犠牲者の数で、その後降り注ぐ死の灰などによる犠牲者は含まれていない。
これが世界の運命かと絶望する前に言っておくと、全面核戦争が起きる可能性はかなり低い。ロシアを含む国家間には、核戦争の発生を防ぐ、法的拘束力のある契約が存在するからだ。
ただし、もっと小さな国による核戦争であっても、地球全体に壊滅的な被害が出るだろう。
結局のところ、核戦争は勝者のいない戦いだ。指導者がこのことを忘れ、核兵器が発射されてしまえば、以下の動画のような結末になる可能性があるという。
PLAN A
この動画はロシアが威嚇の為NATO諸国に1発の核兵器を使用したことで始まり、全面核戦争に発展する「プランA」の経緯をシミュレーションしたもので、現実の軍の方針・目標・死傷者の推定に基づいたものだそうだ。
核の威嚇射撃
シミュレーションは、通常の戦争から開始される。米軍・NATO軍の進軍を食い止めるべく、ロシアはカリーニングラード付近の基地から核兵器による威嚇を実行。
NATOは戦術核兵器による空爆で報復する。

戦術計画
レッドラインを越えたことで、戦争はヨーロッパ全土における戦術核戦争へエスカレート。ロシアは爆撃機・短距離ミサイルで核弾頭300発をNATOの基地・軍隊に使用。
これに対して、NATOは核弾頭約180発を搭載した爆撃機で対抗する。死傷者:3時間で260万人。

反撃計画
ヨーロッパが破壊されると、NATOは米国内および潜水艦から戦術核兵器600発をロシアの核兵器施設へ向けて発射。
これを察知したロシアは、核兵器が無力化される前に、ミサイル格納庫・移動式車両・潜水艦からミサイルを発射して対抗。死傷者:45分で340万人。

一般市民への攻撃計画
敵の回復を阻止するため、ロシアとNATOは、相手陣営の特に人口が多く、経済的に重要な30都市それぞれに5~10発(人口に応じる)の核弾頭を使用する。

開始45分で死傷者は8530万人に
一連の核兵器の応酬による直接の死傷者数(死者3410万人、負傷者5740万人)である。放射性降下物やその後の長期にわたる影響により、犠牲者はさらに大幅に増加するだろう。
written by hiroching / edited by / parumo