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ウクライナ避難民の愛犬持ち込みで特例、「狂犬病」は大丈夫? 獣医師に聞く

オトナンサー

指定地域と呼ばれる豪州をはじめとした6地域(2022年4月時点。狂犬病清浄国)から輸入する場合は、事前にマイクロチップの装着、感染症にかかっていない旨の輸出国側での証明など、提出書類に不備がなく、かつ輸入時の動物検疫所での輸入検査で問題がない場合は輸入検疫証明書が交付され、輸入が認められます。条件を満たさない場合、最大180日間の係留が必要となります。

それ以外の多くの地域からは、これらの条件に加えて、定められた期間での狂犬病ワクチンの接種を2回行った後、狂犬病抗体検査によって抗体価が基準を満たしていることが必要です。さらに輸出前待期期間が設けられており、狂犬病抗体検査の採血日を0日目とした場合、日本到着まで180日間以上の日数が必要となります。

このように狂犬病が存在している地域から犬を輸入するためには、非常に多くの手続きと日数が必要となるわけです」

Q.猫や他のペットも、狂犬病の可能性の有無や、検疫は同様なのでしょうか。

増田さん「狂犬病は先述の通り、多くの哺乳類で感染、発症することが知られています。そのため、犬以外の動物に関しても、狂犬病の防疫対象になっています。伴侶動物として輸入することの多い猫に関しては、犬と同じ要領で検疫の対象となります。

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また、検疫法における指定動物には、ウサギや蜜蜂、牛や馬といった産業動物、これらに関連した食肉や卵なども動物検疫の対象となります。また、動物だけでなく植物に対しても、輸入植物検疫が行われます。植物や食品に付着した寄生虫や微生物の有無をチェックし、これらが日本国内での生態系や健康に影響を及ぼさないよう、日々監視を行っています」

Q.今回のウクライナ関係の特例について、ポイントを教えてください。

増田さん「検疫は、法律にのっとって、対象となる動物や食品、食物などの安全性をチェックして水際で対策をとり、国内の安全に寄与しています。通常、海外から犬を輸入(入国)する際に、狂犬病やレプトスピラ感染症について輸入検査が必要となり、それに対し、輸入できる条件を満たしていなければなりません。

今回、農水省は、ウクライナから入国する犬の検疫について、『省令に定める災害救助犬等の規定』を適用することで、特例措置を講じました。つまり、平時においてこのような特例が講じられることはありません。先述の通り、犬を輸入する手続きは、必要とされる検査や係留期間など細かい条件があり、今回のような緊急性の高いウクライナからの国外避難という特殊性を鑑みて、農水省は『マイクロチップ、狂犬病ワクチンおよび十分な抗体の確認等の狂犬病の侵入リスクを十分に低下させる措置がなされたことを確認できる場合に限って、1日2回の健康観察、咬傷防止対策等を守っていただくことを条件に、動物検疫所の施設以外における隔離管理を認めることとしました』としています。

この対策に対して賛否が生じている点が、今回のテーマとなっています」

管理の徹底がポイント

Q.今回の特例によって、ウクライナから日本に狂犬病が流入する恐れはないのでしょうか。

増田さん「今回、農水省は、戦禍による人道的配慮を理由として特例を適用しました。これに対する農水省の見解は『今回の対応は、輸入検疫措置の緩和ではなく、犬等の輸出入検疫規則に基づき対応するものです。この対応によって国内での狂犬病発生のリスクが増すことはありません』というものになります。

また、避難された人たちの滞在先で、ワクチンの接種や抗体価測定といった、本来輸出(出国)時に行われるものと同等の内容の措置を追って実施した上で、検疫所から『持ち出し許可書』や『指示書』が発行され、滞在先では、他の犬との接触制限や定期的な健康状態の報告などを行うように指示がされます。

抗体価等、狂犬病に罹患(りかん)している条件を限りなく除外した上での措置ということになりますが、咬傷などによる感染リスクは懸念材料となりますので、この部分の徹底は、必要になると思われます」

Q.万が一、狂犬病が流入した場合、想定され得る事態を教えてください。

増田さん「日本国内の法律や検疫などによって、幸いにも、狂犬病は長らく国内での発生事例はありません。ただ、一度発生した場合、再度清浄化に至るまでには、相当の期間や犠牲が伴うのではないかと危惧されています。

先述したように、狂犬病を発症した場合は、確立された治療方法がありません。ヒトの場合は、発症前に『暴露後ワクチン接種』(犬にかまれた後に狂犬病ワクチンを接種すること)を行うことで発症を食い止めることが必要となります。

また、狂犬病予防法10条に『都道府県知事は、狂犬病が発生したと認めたときは、直ちに、その旨を公示し、区域および期間を定めて、その区域内のすべての犬に口輪をかけ、またはこれをけい留することを命じなければならない』とあるため、実際に狂犬病が発生した地域で生活する犬にも、影響が及ぶことが考えられます。

世界情勢が不安定で、かつ人と物の往来が多い世の中、どのようなタイミングで狂犬病をはじめ感染症が国内に入り、流行するのか、心配事も多くなっています。検疫による対策をはじめ、私たちが行える範囲での『防疫』は重要です。いざ流行すると、瞬く間に拡大するものもあります。正しい知識をもって対策に臨むことが重要です。

そして何より、争い事によって、生活や生命に悪影響が出ないことを願ってやみません」

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