LUCKY TAPES ソウル/ディスコをポップに昇華する新世代バンドが、メジャー・デビュー・アルバムで魅せたスタイリッシュな進化。
LUCKY TAPES ソウル/ディスコをポップに昇華する新世代バンドが、メジャー・デビュー・アルバムで魅せたスタイリッシュな進化。
ブラック・ミュージックをポップに昇華し、今に響かせるバンド、LUCKY TAPESが、10月3日にメジャー・ファースト・アルバム『dressing』をリリースする。今年5月にメジャー・デビューした彼らは、2015年にデビ […]

ブラック・ミュージックをポップに昇華し、今に響かせるバンド、LUCKY TAPESが、10月3日にメジャー・ファースト・アルバム『dressing』をリリースする。今年5月にメジャー・デビューした彼らは、2015年にデビュー・アルバム『The SHOW』をリリースして以降、優れたポップセンスと音楽性で東京インディーの新世代バンドとして注目を集めてきた。バンドのフロントマンにしてソングライターの高橋海は楽曲提供やプロデュース・ワークでもその手腕を発揮。ホーン・セクションや女性コーラスなどを加えた総勢9名のライブ・パフォーマンスも評判を呼び、国内はもとよりアジア各国でもツアーをするなど着実に前進を続けている。メジャーに舞台を移し、通算3枚目の新作を発表するLUCKY TAPESの3人、高橋海、田口恵人、高橋健介に結成から現在までの歩みを訊く。

取材・文 / 佐野郷子 撮影 / 古渓一道

親が聴いていたマイケル・ジャクソンの“新曲”に触発され、バンド結成へ。

ーー 先ずはLUCKY TAPESの3人の出会いから。

高橋健介 僕は田口の高校の後輩で、逗子の高校の軽音学部で一緒だったんです。海くんは鎌倉の共通の知り合いから紹介されて知り合った。

高橋海 地元は同じなんですが、小・中・高はかぶってないんです。地元に音楽やっている面白い奴がいると聞いたのが最初ですね。

ーー 鎌倉〜逗子周辺に面白い音楽シーンがあったとか?

海 音楽やっている人は同世代ではそんなにいなかったんですけど……

田口恵人 ライブをやっていたりして独特な面白いシーンはありますね。

ーー 3人はLUCKY TAPES の前にSlowBeachというバンドを組んでいたそうですね。

海 SlowBeachはメンバーが大学を卒業してから進路が分かれ、1年くらいで解散。僕はその前から打ち込みで音楽をつくっていて、バンドの解散後もずっと自分一人で完結できる音楽はつくり続けていたんです。でも、何かしらプロジェクトとして動きたいなとは思って、久々に元メンバーと遊びでスタジオに入ったんです。

ーー そこで、マイケル・ジャクソンの「ラヴ・ネヴァー・フェルト・ソー・グッド」の話題で盛り上がったそうですね。

海 そうなんですよ。ちょうどあの曲がリリースされた頃で。

田口 あの曲は衝撃でした。

ーー 2014年にリリースされたマイケルの未発表曲を収めたアルバム『エスケープ』の先行シングルで、あの曲が1983年にすでにあったというのも驚きでしたね。

海 そうですね。それでスタジオで早速そのカヴァーをやって盛り上がったというのがLUCKY TAPES結成に至るきっかけにはなりましたね。

ーー その頃からマイケル・ジャクソンを含め、ブラック・ミュージックの要素の濃いポップを指向していたんですか?

海 マイケルは親が聴いていたんです。子供の頃からMTVの録画を観たりして自然と擦り込まれていったというか。

田口 うちも親がディスコ世代で。実際、ディスコにも行ってたみたいで。

健介 うちの親はビージーズとかアバが好きでした。

高橋 海(Vo/Key)

ソウルフルに歌い上げないことが、逆に新しい組み合わせになっているかもしれない。

ーー 結成当初、目指していた音楽性はありましたか?

海 ここを目指そうというのは特にはなかったんですが、3人が共通している部分がそのまま当時の音楽性にはなっていたと思いますね。その頃、僕は個人的にチルウェイヴやシンセ・ポップのようなリヴァーブを多用した音楽にハマっていたので、今より浮遊感のある音になっていますけど。

ーー 2015年にはデビュー・アルバム『The SHOW』をリリース。1stからすでにかなり完成度が高いトラックでしたね。

健介 基本は海くんが打ち込みでつくるんですよ。そのデモの完成度が、このまま出せるんじゃないかというくらい高い。

海 その方がメンバーに伝えやすいんです。歌と伴奏だけというデモだと、アレンジに行き詰まったりしたので、自分の中で鳴っている音を一旦カタチにして渡した方がスムーズで、このバンドには合っているのかなと。

ーー スタジオに入ってセッションしながら音をつくっていくのではなく、今、主流の音楽制作のスタイルともいえますね。

海 そうですね。そういう意味では従来のバンドっぽくはないかもしれない。

田口 海くんのデモがかなり出来上がっているので、世界観を共有しやすいというのはあります。ただ、それをプレイヤーとして超えていくのはなかなか大変で。デモに入っているベースラインがかっこよかったりすると悩むし、試行錯誤の繰り返しですね。

海 僕はそこを期待しているんですよ。僕がつくった曲をバンドなんだから、もっとカッコヨクしてよという甘えもあって。

ーー ポップ・ソウル寄りの音楽性で、特に印象に残ったのは海さんのヴォーカル・スタイルでした。

田口 そうですね。こういう音楽だと歌い上げる系が多いんですが、海くんのメロディと声は他にはない個性になっている。

海 僕は声が弱いから、ソウルフルに歌い上げることができないんですよ。自分が好きなものと自分が出来るものに差があって、それが逆に新しい組み合わせになっているのかもしれない。

田口恵人(Ba)

時代の波と自分たちの志向がたまたま合ったディスコ/ファンクの再評価。

ーー 確かにソウル、R&B、ディスコなどの影響もありつつ、その枠に収まらない新鮮な感触があった。

海 熱くなれる音楽もいいんですが、個人的にはどちらかというとチルできる、心地良くなれる音が好きなので歌い方も自然にそうなっていったんだと思います。ソウルやR&Bはあくまでも僕らの音楽の要素なんですよね。

ーー 2013年頃からダフト・パンクやブルーノ・マーズが人気を呼び、ディスコ/ファンクの再評価の動きもありましたね。

海 そうですね。当初はよく引き合いに出されていました。

健介 時代の波と自分たちの志向がたまたま合ったというか。

ーー 先日、NONA REEVESとの対バンを観ましたが、彼らのような90年代にデビューしたポップ・ソウル系のバンドと一緒にライブをしても違和感なく楽しめるのも発見でした。

健介 最初の頃はNONA REEVESさんが出てきた90年代の渋谷系っぽいと言われたことがありました。僕ら、渋谷系はまったく通ってない世代なんですけどね。

田口 渋谷系と同じ頃に流行ったジャミロクアイとかアシッドジャズは親が聴いていたので、ベースのコピーはしていましたけどね。

ーー 2015年頃から日本でも同時代のヒップホップやR&Bに触発されたり、新世代シティポップと呼ばれるバンドが登場しましたが?

田口 そういえば僕らもシティポップの枠にくくられていましたね。

健介 シティポップって僕らの世代だと、一十三十一さんのイメージですね。

海 分からなくもないという感じですが、あまり意識したことはないですね。むしろ、いわゆるJ-POPの王道を改めて聴き直してみて、発見したことの方が多かった。それが1stの後くらいでした。

高橋健介(Gt)

仲間が仲間を呼び、ホーンや女性コーラスをサポートに入れる編成に。

ーー 2016年の2ndアルバム『Cigarette & Alcohol』はホーンやストリングス、女性コーラスなどが加わり、スケール感がアップしています。

海 シングル「MOON」で初めて生のストリングスとホーンを3管入れたんです。自分の中では元々そういう音像を描いていたんですが、サポートを入れるのは大変だし、繋がりのあるミュージシャン仲間も最初はあまりいなくて。

田口 仲間が仲間を呼ぶ感じでだんだん輪が広がり、以降、ライブもホーンや女性コーラスをサポートに入れる編成になっていったんです。

海 やっぱり、打ち込みでつくっていると限界はあるし、特に弦と管は再現が難しい。ただ、生の楽器が呼べたから完成というわけではなくて、ミックスに納得がいかない部分があったり、また次の課題が生まれて。

ーー アルバムには共同プロデューサーにtoeの美濃隆章さんを迎えていますね。

海 3人ともCharaさんと韻シストがコラボしたシングル「I don’t know」(2014年)の音像が好きで、その曲のエンジニアを務めていた美濃さんにお願いしようとなったんです。今回のアルバム『dressing』にもCharaさんと韻シストのBASIさんに参加してもらっているんです。

健介 後から気がついたんですよ。そうやって繋がっていくのも面白いですね。 

ーー ライブを重ねていくことで作風に変化はありましたか?

海 個人的な嗜好とは別に、やっぱりライブで盛り上がる曲とかを多少意識するようになったのが2ndくらいでしたね。

何かが始まる時の胸が高鳴る瞬間を凝縮したメジャー・デビューEP『22』。

ーー 今年5月にはEP『22』メジャー・デビュー。その経緯と意識の変化は?

海 いくつかメジャーから声をかけていただいていたんですが、特にメジャーに行きたいというわけでもなく……

健介 正直、メジャーとインディーズの違いをそれほど感じたことはなかったんですよ。

海 メジャーだからというより、レーベルの特性と自分たちのやりたいことが一致したのがここに決めた理由ですね。ビクターの洋楽部に自分たちの好きなアーティスト、ベニー・シングス、ウーター・ヘメル、タヒチ80がいるというのはポイントでした。

ーー 『22』は、20代前半の揺れる気持ちがスタイリッシュに洗練されたアレンジとキャッチィなメロディによって強化されていますね。

海 『22』は、夜が深まってゆく22時、大学を卒業して社会人になる22歳、僕の場合はちょうどLUCKY TAPESを結成した歳でもあるんですけど、何かが始まる時の胸が高鳴る瞬間を数字で表してみたんです。

ーー 「MOOD」の〈好きなことばかり追いかけ回して 死にたい〉の歌詞は特に印象に残りました。

海 楽しい時間もいつかは終わってしまう、だからこそその時間が大切で美しいという感覚が自分にはいつもあるんです。歌詞ではそういう儚さを描きたいなとは思っていますね。

バンドとソロ・ワークの線引きを取り払い、やりたいことをバンドで表現した『dressing』

ーー 通算3枚目、メジャー・デビュー・アルバム『dressing』は、今まで以上に海さんのヴォーカルや歌詞を深く味わえる、聴かせるアプローチになっているように感じましたが。

海 ああ。僕はバンドを始める前は、歌うことがそれほど好きではなかったというか、人前で歌うのは苦手なタイプで。

ーー ライブでもMCは健介さんに任せていますもんね。

海 そうなんですよ(笑)。バンドを始めて、歌と向き合うようになって数年経ち、歌とグルーヴや譜割りに関して最近ようやく分かってきた気がするんです。歌でグルーヴをつくっていく感覚みたいなものが。

健介 楽器を演奏している僕らも以前は歌を意識していなかったんだけど、最近はメロディがこうだからこう弾こうと考えるようになってきましたね。

田口 僕もそうですね。今まで以上に手応えはありました。

ーー そのアンサンブルが3枚目の『dressing』の聴きどころでもあり、ゴスペル調のコーラスが光る「Joy」、マーチング・スタイルの「ワンダーランド」など、より深く進化していますね。

海 ゴスペルっぽいコーラス・ワークは1stの頃から目指してはいたんだけど、当時はそれを表現する技術がなくて、それをやっと僕ららしいカタチにすることができた感じですね。

ーー 今作は海さんが作詞作曲・編曲・サウンドメイクまでセルフ・プロデュースしていますが?

海 今回は特にその感覚が強かった。僕はソロでプロデュース・ワークやCM音楽なども手がけているんですが、今までは自分の中ではバンドは生音、ソロ・ワークは打ち込みと分けて考えていたんです。でも、それを線引きしてしまうのはもったいないと思いはじめて。

ーー 海さんはLUCKY TAPESと並行してソロでの活動も注目されていますね。

海 ソロ・ワークもいつかは作品として出したいと思っているんですが、バンドが忙しくなってからはなかなか出来なくて。だったら線引きをしないで自分のやりたいことをバンドで表現してもいいんじゃないかと。それが『dressing』には凝縮されている気がします。

ーー 今までのブラック・ミュージック云々というところから一歩も二歩も前進したのはそのせいだったんですね。

海 そうですね。僕自身もLUCKY TAPESはこういう音楽というイメージに囚われすぎていたのかもしれない。CM音楽はそれこそピアノ1本からオーケストレーションまでジャンルを問わないので、そこで培ってきたことが生かされているような気がします。

ーー Chara、BASI(韻シスト)というゲスト参加は?

海 「Lonely Lonely feat. Chara」も「COS feat. BASI」も、曲をつくったときから二人の声で勝手に脳内再生されていたんです。CharaさんもBASIさんも「この声しかない!」というイメージでした。

田口 Charaさんは自然と耳にしていて、自分でレンタル屋さんで借りてよく聴いていました。

健介 お二人とも声の個性が強いですから、曲がより鮮烈になりましたね。

ーー ライブも国内はもとより、すでに中国、タイ、台湾、韓国などアジア公演も行っていますが、今後の活動は?

海 海外はもっと出て行きたいですね。アジアでの反響がけっこう大きくて、これからの可能性をすごく感じたんですよ。

健介 タイはキャパも大きくて盛り上がりましたねー。

田口 その前に『dressing』のリリース・ツアーをぜひ観てほしいですね。今回はバンド最大規模の全国ツアーなので、僕らも楽しみにしているんです。

リリース情報

初回限定盤

通常盤

LUCKY TAPES 
『dressing』

2018年10月3日発売
【初回限定盤(CD+DVD)】
VIZL-1424 ¥ 3,700 (+税)
【通常盤(CD)】
VICL-65043 ¥ 2,700 (+税)

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ライブ情報

「”dressing” release tour 2018」

10月3日(水)  大阪・梅田Shangri-La
10月6日(土) 広島・広島CAVE-BE
10月8日(月祝)  福岡・福岡BEAT STATION
10月10日(水)  静岡・浜松FORCE
10月12日(金)  愛知・名古屋CLUB QUATTRO
10月14日(日)  大阪・梅田Shangri-La
10月19日(金)  岡山・岡山Livehouse IMAGE
10月20日(土)  香川・高松DIME
10月27日(土)  北海道・札幌Sound Lab mole
10月31日(水)  宮城・仙台MACANA
11月2日(金) 新潟・新潟GOLDEN PIGS BLACK
11月4日(日) 石川・金沢vanvan v4
11月8日(木) 東京・マイナビBLITZ赤坂

LUCKY TAPES

高橋海(Vo/Key)、田口恵人(Ba)、高橋健介(Gt)の3人組。2015年にデビュー・アルバム『The SHOW』をリリース。2016年にシングル「MOON」をリリースし、同年、映画『オオカミ少女と黒王子』(主演:二階堂ふみ)に挿入歌として新曲2曲を提供。7月には共同プロデューサーにtoeの美濃隆章を迎えた2ndアルバム『Cigarette & Alcohol』をリリースし、フジロック・フェスティバルへも出演。ホーン・セクションや女性コーラス、パーカッションなどを加えた総勢9名のライブ・パフォーマンスも高い評価を集めている。2017年9月にEP『Virtual Gravity』をリリースし、そのリリース・ツアーでは全国各地ソールドアウトが続出。2018年5月にメジャー・デビュー。EP『22』をリリースし、10月3日に待望のメジャー・ファースト・アルバム『dressing』を発表。

オフシャルサイト
http://luckytapes.com/

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(更新日:2018年10月10日)

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