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家族で楽しみながら防災スキルが身につく「防災スポーツ」が話題に

パラサポWEB

あなたは“もしも”のときの備えに、十分取り組めているだろうか? 地震をはじめ、台風や津波といった自然災害が起こりやすい日本では、日頃から防災対策に取り組む必要性が声高に叫ばれているが、「平時には危機感が生まれづらい」「なんだか難しくて面倒くさい」といった理由から、いま一歩広まらない現状がある。

それならば、防災を身近に楽しんで学べるよう、スポーツにしてしまえばいいのでは? そんな斬新な発想から誕生したのが「防災スポーツ」だ。これまでに開催されたイベントには親子を中心に3000人以上が参加、「スポーツ振興賞 スポーツ庁長官賞」や「日本オープンイノベーション大賞 スポーツ庁長官賞」といった名だたる賞も受賞するなど、いま大きな注目を集めている。ここでは、その考案者である株式会社シンク代表取締役社長の篠田大輔氏に、防災をスポーツ化するというユニークなアイデアが生まれた背景や防災スポーツが持つ可能性について話を伺った。

被災経験者だからこそ感じた、防災に“スポーツの楽しさ”が必要な理由

2014年に株式会社シンクを創業した篠田大輔氏。シンクでは防災スポーツのほか、スポーツコンサルティング事業や、マラソン大会などのイベントプロデュース、記録配信サービス「スポロク」といったITソリューション事業も展開する。

1995年1月17日の早朝。「ゴーッ」という、これまで聞いたこともないような大きな地響きが聞こえた次の瞬間、下からつき上げる激しい揺れが家中を襲った。家具や家電は倒壊し、自宅も全壊の認定を受けた。当時中学1年生だった篠田氏は、兵庫県西宮市の自宅で阪神・淡路大震災に見舞われる。

「倒れた本棚に埋もれた兄弟を助け出し、自宅周辺の惨状を目の当たりにしながら、安全な場所に避難しました。そのときは、自分や家族が生き抜くことで精一杯。避難先の小学校では、被災者同士で協力してプールの水をバケツリレーでトイレに運んだり、自衛隊から支給された支援物資を仕分ける作業に協力するなど、防災知識のない中でとにかく必死の毎日を送りました」(篠田氏)

篠田氏の父親が撮影した震災当日の様子。市街地の建物は、倒壊するなどの被害が出た。左上の写真は、倒れた食器棚で部屋が覆われてしまった篠田氏の自宅での一コマ。

こうした被災経験を通して篠田氏が学んだのは、災害時には知識に基づく判断力に加え、とっさに行動できる体力とスピードが必要であること。この教訓を体で覚えていた篠田氏は、体力や俊敏性を養えるスポーツに防災力を高められる可能性を見出し、防災とスポーツを組み合わせる「防災スポーツ」のアイデアを思いつく。

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「スポーツは、大きく『遊戯性=楽しむ要素』『運動=体を動かす要素』『競争性=競う要素』という3つの要素から成り立っています。そのうち、運動と競争性は、身体を動かして、より早く逃げるなどの災害時に役立つ要素です。それらに加えて、遊戯性という要素をもつスポーツには、防災に必要とされる能力を楽しみながら身につけられる効果が期待できると考えました。

また、災害はいつ自分に降りかかってくるのかがわからないため、どうしても他人事になりがちです。さらに人によっては、防災や災害に『怖い』とか『危ない』といったマイナスのイメージをもっていることも……。そこをスポーツが持つ楽しい力で払拭し、防災への心理的ハードルを下げたいという狙いもありました」(篠田氏)

防災スポーツが誕生する背景となった、スポーツを構成する3要素とそれぞれが持つ働き。

被災経験者だからこそわかる、防災の必要性。それをより多くの人に「自分事」として捉えてもらいたいとの想いから、防災にエンターテイメント性をプラスする形で防災スポーツは考案された。「いざというときに自分を守り、家族を守るためにも、日頃からスポーツを通じて楽しみながら災害に備えてもらいたい」と篠田氏は防災スポーツに込めた願いを語る。

競技型の体験プログラムと家庭での日常的なトレーニングを組み合わせ、防災を習慣化

子どもたちも楽しんで取り組むことができる防リーグ。競技のように身体を動かして覚えるからこそ、万が一のときに行動につながりやすい

そんな防災スポーツは、防災訓練を競技化した体験プログラムである「防リーグ」と、防災に関する正しい知識と行動を学び、実践する「防トレ」を中心に構成されている。共通のテーマとして掲げるのは、「防災の日常化」だ。

事業化に当たっては、篠田氏自身が学んだ被災体験の教訓に加えて、防災の日常化を目指すNPO法人プラス・アーツにプログラム監修を依頼し、東京大学大学院で防災研究に従事する廣井悠教授をアドバイザーに召くなど、防災に関する学術的な根拠もおさえたという。そのため、災害前、災害時、災害後とそれぞれのステージで必要とされる知恵と技を、的確に学べることが大きな特徴となっている。

防災スポーツの事業マトリクス。防リーグや防トレのほか、地域の防災を歩きながら学ぶことをコンセプトとした「防災ウォーク」や、アスリートやスポーツチームをはじめとするスポーツのアセットを活用して防災課題の解決を目指す「防災スポーツネットワーク」というプラットフォームも構築されている。

防リーグには現在、7種目の競技がラインナップされている。いずれも災害時に役立つさまざまな知識と技を楽しく習得することが目的。たとえば、毛布を使った担架で障害物競争を行う「レスキュータイムアタック」では、災害時に周囲の人たちと協力しながら負傷者を運ぶ救助体験ができる。

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