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益子直美さんが伝授!試合で結果を出す「怒らない」指導方法

パラサポWEB

小塩:今、益子さんがおっしゃった、選手が安心してプレーするというのは、最近では「心理的安全性」という言葉で語られます。これはスポーツだけでなく、生きていく上で何より大切な土台のようなものだと思います。これがきちんと保たれずグラグラしていると、大袈裟ではなく何もできなくなってしまう。心理的安全性が保たれていない中で、いくら厳しい練習をしたとしても何も積み上がっていかないと思います。そして自分にとっての目標や、そもそも自分とは何かといったことを考えたときに、偏った見方をすることに繋がるかもしれません。怒る指導にはそうした弊害もあり得るということを知ってほしいです。

益子:はい、やっぱり怒る指導って効果がないんだ、副作用の方が大きいんだという認識をもっともっと世に広めないといけないなぁって思ってます。怒る指導で成功を体験してきている監督さんもたくさんいるので、そこを卒業してもらうためにどうやってアプローチしていくのかというのは、すごく難しいところです。ただ、決して怒る指導者を排除するということではなく、子どもたちを取り巻くスポーツの仕組みといったマクロ的な部分から変えていく必要もあると思っています。

たとえば学校の部活動のように1年単位でチームが変わっていくような場合は、チームを作るのが凄く難しいんですね。ほとんどがトーナメント戦ですし、スポーツで学校を有名にしたいという学校からの圧力がある場合もあるでしょうから、そのあたりの仕組みを変えていかなくてはならない。スポーツ庁でも部活を外部コーチに依頼して教師の皆さんの負担を軽くしようという動きが出てきています。ヨーロッパではスポーツをやりたい子どもは学校の部活動ではなく、地域のクラブで学べるといった環境がありますから、日本もそんな風になるのが一番いいんじゃないかなぁと思っています。

指導者の方々に今、伝えたいこと

――最後に、子どもたちにスポーツを教えている指導者の皆さんにメッセージをお願いします。

小塩:子どもたちの心理的安全性を確保したり、のびのびとプレイできる環境を作るには、何より指導者が弱さをさらけ出すことが大事だと思うんですね。怒ってわーっと思いを子どもにぶつけてしまう前に、もっと前の「このままだと怒っちゃいそうだ」という段階で誰かに言えるといいと思うんです。そのためには、周りに聞く姿勢がある、聞いてくれる環境があることも大事だと思います。それが当たり前になっていくと、誰にとっても心理的安全性の高い社会、環境というのができていくのではないでしょうか。願いとしては指導者が率先して自分の弱さをさらけ出して欲しいなと。益子さんがやっていらっしゃることはまさにそうだと思います。

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益子:とにかく怒っている指導者さんたちに、もう1つ指導のやり方を持ってもらいたいと思っています。昔は「監督は孤独だ」と言われていましたけど、今はそうじゃなくって指導者の皆さんにも、悩みでも弱みでも何でも聞いてくれるメンターが必要なんじゃないでしょうか。そして指導者同士が繋がって、相談できて、学ぶ機会を持ってもらいたいと思います。その中から「怒る=厳しい指導」ではなくて、違う厳しさをもう1つ見つけていただけたら嬉しいですね。

益子さんは、昨年の東京オリンピック・パラリンピック、今年の北京冬季オリンピックで、たとえ試合に負けても笑顔でいる選手たちの様子を見て、すばらしいスポーツマンシップを見せてもらった気がすると語っていた。勝ち負けを追究するあまり、選手から笑顔を奪うような怒りによる指導は、もう卒業するべきなのではないだろうか。選手が自分の頭で考え、主体性を持って高い目標にチャレンジしていくことが、本当に強い選手を作ることになる。そんなことを教えられた対談だった。

PROFILE 益子直美
1966年東京生まれ。中学からバレーボールをはじめ、中学、高校と全国区で活躍。高校卒業後は、イトーヨーカ堂へ入社し、社会人チームで活躍。1990年には、イトーヨーカドー日本リーグ初優勝へエースとして貢献した。高校3年の秋から、日本代表選手を務め、世界選手権やワールドカップへ出場。91年に現役引退後は、タレント、スポーツキャスターへ転身。2021年4月「「一般社団法人 監督が怒ってはいけない大会」の代表理事に就任。
http://masukonaomicup.com/

PROFILE 小塩靖崇
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部 研究員(教育学博士, 看護師保健師)。子ども・若者のメンタルヘルス教育を専門に研究。人々が健康かつ幸せに育つ社会を目指して、研究と実践の橋渡しに取り組んでいる。日本ラグビーフットボール選手会(JRPA)と共に進める、日本スポーツ界におけるメンタルヘルスケアのあり方を考えるための研究プロジェクト「よわいはつよい」の研究代表者。
https://yowatsuyo.com/

text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)
写真提供:一般社団法人監督が怒ってはいけない大会

前編はこちら
スポーツ指導者必読! 益子直美さんが「監督が怒ってはいけない大会」を始めた理由(前編)

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