top_line

【 最新ニュースをアプリでサクサク読むなら! 】

21'年欧州リーグ優勝名門クラブの人材育成「教えない」黄金法則

パラサポWEB

昨年、発売と同時にたちまち重版となったビジネス書『教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』。この本の著者は2021年欧州リーグ優勝を果たし話題となったスペインの名門サッカークラブ「ビジャレアルCF」の育成組織で、コーチを務めていた佐伯夕利子さん。同クラブは「育成のビジャレアル」と言われるほど、堅実な育成機関を擁することで高い評価を得てきた。そんな育成のプロ集団で佐伯さん自身が学んだという人材育成や組織作りにおいて大切なことを伺った。

世界トップレベルのサッカー教育機関で始まった指導改革

スペイン3部「プエルタ・ボニータ」の監督、「ビジャレアルCF」の育成組織のコーチなどを歴任。現在は公益社団法人日本プロサッカーリーグ常勤理事を務める佐伯夕利子さん。

2003年、スペインのサッカー男子リーグ3部でスペイン史上初の女性監督に就任したとして佐伯さんは注目を集めた。その後も、女子チームの監督などを歴任し、『ニューズウィーク日本版』で「世界が認めた日本人女性100人」「世界が尊敬する日本人100」(2021年)にノミネートされるなど、サッカー界の指導者として輝かしい功績を残してきた。その佐伯さんが在籍していた名門クラブ「ビジャレアルCF」で2014年から始まったのが「指導改革」。クラブはこの改革のためにコーチデベロッパーの専門家であるセルヒオ・ナバーロ氏を招聘。トップチームを除く3歳児クラスからU23までの18カテゴリーと、女子や知的障がい者チームのコーチ、約120名が自分たちのこれまでの指導方法を見直すというプロジェクトをスタートさせた。

「正直に言うと、その時点までは自分たちが変わらなければいけないという改革の必要性を、現場の人間は全く感じていませんでした。むしろ、自分たちがやっていること、知っていること、行っていることは常に更新されているトップレベルのことだという自負がありました」(佐伯さん)

そんな佐伯さんが改革の必要性を感じるきっかけのひとつとなったのが、自分たちの指導を可視化したことだったと言う。

私たちはフランコ政権下の指導者だった!?

00~01年シーズン、レアル・マドリード・サッカースクール時代に選手に指示を出す
佐伯さん/ⓒJ.LEAGUE

佐伯さんたちはプロジェクトの一環として120人のコーチの指導風景をそれぞれ撮影。さらに撮影されるコーチはピンマイクと胸にアクションカメラをつけて、指導される選手の反応も記録した。その記録を見ながらコーチ同士でお互いに問題点を指摘し合う作業が行われたのだ。そこで佐伯さんたちが目にしたのは「なんで今のパス右にだすの? 左じゃないの?」「見えなかったの? 左がフリーじゃない」といった自分達の一方的な指導。時には大きな声で怒鳴るように言う場面や、それに萎縮する選手の様子も映し出された。

広告の後にも続きます

「もともとスペインは歴史的に内戦があったり、独裁政権下に置かれたりした時代がありました。その影響もあって当時の教育現場では、教師が生徒の背中を定規で叩いたり、チョークを投げたりと暴力や暴言で人を支配することが当たり前だったそうです。私たちは無意識のうちに、教えるというのはそういうものだと思い込んでいて、スポーツの現場でもずっと同じようなことが行われていたんです。でも、今はもう21世紀。それなのに私たちはいまだにフランコ政権の指導者のようなことをやっていたということに気づきはじめたんです」(佐伯さん)

これは日本にも通じるところがあるのではないだろうか。スポーツの世界や会社などの組織で指導者や上司は不機嫌さを隠そうともせず一方的に指導、時には威嚇するような言動で相手を萎縮させて自発的な行動にブレーキをかけてしまっているというシーンを見かける。しかし、怒りを表し恐怖を与えるだけではいい成果を生み出すことも、いい組織を作ることもできないと佐伯さんは言う。

いい指導者に必要な三本柱

04~05シーズンのアトレティコ・マドリード女子時代の佐伯さん/ⓒJ.LEAGUE

では、よりよい成果を生み出すいい組織をつくるには、どんな指導をすればいいのだろうか? その問いに佐伯さんは以下の「三本の柱」が重要であると教えてくれた。

1)相手を絶対に否定しない
2)ジャッジをしない(裁かない)
3)相手を絶対に攻撃しない

選手や部下が自分の思うような行動をしない、言った通りに動かない、思うような成果が出ないといった時、どれも無意識にやってしまいそうな行動だ。そうした無自覚な言動を自覚するために有効なのが佐伯さんたちも実践した動画。社内の様子を録画したりピンマイクをつけて仕事をするのは難しいが、たとえばコロナ禍の影響で増えたオンライン会議の様子を録画して見返して分析してみてはどうだろう。実際に佐伯さんの知人にも会社の会議の動画を組織作りに活用しているリーダーがいるという。

「その方は著名な経営者なのですが、会議の動画をAIを使って分析してもらっているそうです。最初の頃は自分が話すことで会議に参加しているメンバーがおどおどしたり萎縮したりと、ネガティブな感情ばかりが生まれていた。そこで自身のメッセージの出し方や言葉の選び方や表現を変えるとか、不機嫌さを出さないということを意識的にするようにしたところ、半年後にはAIの分析結果がよくなったそうなんです」(佐伯さん)

  • 1
  • 2

TOPICS

ランキング(スポーツ)

ジャンル