
「教えて!goo」に「犬の迷子札についてアドバイス下さい」という質問があるが、マイクロチップによってこのような心配は不要となるわけだが、これから犬や猫を飼おうと考えていた人、あるいは既に飼っている人。また繁殖や改良を行うブリーダーや販売するペットショップは今回の改正でどのような対応を迫られるのだろうか。
■そもそも動物愛護管理法とは?
今回は法律の専門家である富士見坂法律事務所の井上義之弁護士に改正動物愛護管理法の具体的な内容について話を聞いてきた。まずは動物愛護管理法が一体何を目的としている法律か伺った。
「動物愛護管理法とは、人と動物が共生する社会の実現を図ることを目的として、動物を適正に取り扱うためのルールを定めた法律です」(井上義之弁護士)
動物保護や福祉という点で日本は遅れていると言われている。例えばドイツにはペットショップが殆ど存在しない。犬や猫を飼う場合は、保護施設に行き、そこで動物を飼うに相応しいかどうかの厳しい審査を受ける。またアメリカには、動物専門の警察官がおり、動物を虐待する飼い主を逮捕する権限も与えられている。
■改正動物愛護管理法の内容とは?
次に6月施行となる改正動物愛護管理法について、ブリーダーやペットショップ、これからペットを飼おうと考えている人が取るべき対応を聞いてみた
「ペットショップやブリーダーなどの販売業者は、犬や猫にマイクロチップ(MC)を装着し、かつ、犬や猫の名前や品種、業者名などをデータベースに登録することが義務付けられます。また、それらの業者から犬や猫を購入した飼い主も、自身の名前・住所・電話番号などを届け出なければなりません」(井上義之弁護士)
では既に犬や猫を飼っている人はどうなるのだろうか。
「施行前から飼っている場合や上記のルート以外で譲り受けた場合などについては、マイクロチップ(MC)装着及び登録は努力義務です。なお、犬については、狂犬病予防法上、現在でも登録が義務付けられています。犬へのMC装着及び情報登録は、狂犬病予防法上の登録手続を兼ねることができます」(井上義之弁護士)
■動物愛護管理法が改正に至った背景や理由とは
どうして動物愛護管理法は改正に至ったのだろうか。
「阪神淡路大震災や東日本大震災の際に、多くの犬や猫が迷子になりました。また、2000年の動物愛護管理法の制定後も、虐待や遺棄など悪質な事件が絶えず、飼い主の管理能力を超えた多頭飼育による異臭や騒音も問題になりました。こうした状況を踏まえて、飼い主が迷子の犬や猫を見つけやすくし、かつ、飼い主と犬や猫との情報を結び付けることにより飼い主の自覚を促し適切に管理させる趣旨でマイクロチップ(MC)装着が義務化されるに至りました」(井上義之弁護士)
■動物愛護管理法の改正の課題とは
最後に動物愛護管理法改正の課題を聞いてみた。
「マイクロチップ(MC)という異物を犬や猫の体内に入れることに抵抗を感じる、飼い主が自身の情報を開示したくない、などの理由で、マイクロチップ(MC)装着及び情報登録がなかなかすすまないといった事態はありうるでしょう」(井上義之弁護士)
マイクロチップ(MC)は非常に小さいが、それでも注射して体内に埋め込むことに抵抗がある飼い主がいてもおかしくない。
「また、MC装着に伴う情報登録後、飼い主の連絡先変更・死亡などの際に変更手続が必要になりますが、そのような手続が面倒だとして、データベースに必ずしも正確なデータが集約されない可能性もあります」(井上義之弁護士)
井上義之弁護士は最後に以下のように締めくくった。
「制度の周知のため、行政の情報発信が重要だと思います」(井上義之弁護士)
専門家プロフィール:弁護士 井上義之 事務所HP ブログ
ライター o4o7
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教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)