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「女性の働きやすさ」はワースト? 元警察キャリアが描く女性警察官の現実。

BOOKウォッチ

女警(KADOKAWA)<amazonで購入>

 何か面白い警察小説はないか、と探したところ、元警察キャリアの古野まほろさんが書いた『女警』が、角川文庫に入ったと知り、買い求めた。「女警」は「じょけい」と呼ぶ。耳慣れない言葉だ。かつて「婦人警察官」を「婦警」と呼んだが、現在、警察内部では「女警」と呼ぶらしい。タイトルからして、警察内部に詳しいことがわかる。

 著者の古野まほろさんは、東大法学部卒の元警察キャリア。警察署、県警本部、警察庁などで勤務し、警察大学校主任教授で退官。2007年、『天帝のはしたなき果実』で第35回メフィスト賞を受賞し、作家デビュー。「天帝」シリーズのほか、『新任巡査』『新任刑事』(いずれも新潮社)など警察小説の系譜もある。覆面作家でもある。

 前著『新任警視』(新潮社)でも、地方の県警本部でのキャリアと地元組との軋轢が描かれたが、本書ではさらにエスカレートする。23歳の女性巡査が男性上官を射殺し、拳銃を持ったままミニパトで逃走、行方不明となる最大級の警察不祥事が起こる。この処理にあたる監察官室長の姫川理代が主人公だ。


 姫川は28歳だが、警察庁採用のキャリアで警視。別の県警で捜査二課長を務めた経験があり、相当優秀だ。監察とは「警察の警察」である。警察官が起こした県警が吹っ飛びかねないほどの不祥事なので、捜査はもとより警察庁やマスコミへの対応など、やるべきことは山ほどある。

 しかし、上司にあたる警務部長が心もとない。不要な緊急会議を招集し、彼女を罵倒する。

 「ちょっと東大出たからって、ちょっとキャリアだからって、何踏ん反り返っているんだ。冗談事じゃないぞ。俺はお前のような腐ったキャリアを何人も見てきた。お前はその中でも最悪だ。階級と地位に胡坐を掻いて、上官も現場警察官も鼻で嗤いやがって。お前が警察の何を解っているというんだ」

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 この後も延々と罵倒は続くが、理代は「冗談やめましょうよ」と切り返す。県警の警務部長は本部長に次ぐナンバー2。会社で言えば副社長、筆頭役員である。普通は中堅どころのキャリアの指定席だが、どうもそうではないらしい。この警務部長は「推薦組」と言い、県警ノンキャリアから警察庁に引き抜かれた警察官であることが明かされる。

 推薦組は警察庁で相当しごかれるらしい。「決裁書類を眼の前で破り捨て投げつけるキャリア、机の前に立たせたまま30分も40分も怒号を浴びさせるキャリアなど、めずらしくもないからだ」。そうしておかしくなり、部下に対してパワハラを繰り返すようになったのが、この警務部長だ。

県警本部長は女性だった

 本部長からの電話で理代が報告に向かうことになる。「やっぱりキャリアはキャリア同士か、畜生め。やっぱり女は女同士がいいんだろう。畜生め」という怒声が飛んだ。どういうことか、と思うと、県警本部長は女性だった。深沼ルミ本部長は着任以来、「女性視点反映プロジェクト」を立ち上げ実績をあげていた。かつて、警察庁で上司だった深沼本部長と対応を話し合っていると、警察無線が入る。「検索中のマル対。青崎小百合巡査を発見」。口に拳銃をくわえ、自死したものと認められた。

 ここから物語が動き出す。駅前交番・警部補射殺事件の記者会見が開かれる。本部長の過剰な女性重視の姿勢が規律の緩みにつながったのではという質問も出る始末だった。

 その後、事件の検証プロジェクトチームがつくられたが、トップは例の警務部長で地元ボスキャラの刑事部長が同格で並んだ。どこにも理代の名前はなかった。しかも、報告書は女性巡査のサボり、男性警部補のパワハラ、セクハラが原因だった、という線でまとめられるらしい。

 他県警への出張を命じられた理代はこれ幸いと休暇を取り、「独自捜査」に乗り出す。そこで浮かび上がった真相とは――。

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