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五輪前に犠牲強いられる農家 中国で再生可能エネルギー開発ラッシュ

時事通信ニュース




【保定AFP=時事】暴力を振るわれた、土地を奪われた、お金を約束通りもらえなかった、不当に収監された──。中国当局がグリーンエネルギーの発電量を増やそうと躍起になる一方で、農家は多大な犠牲を強いられたと訴えている。≪写真は中国・河北省保定市黄郊村に設置された太陽光パネルの近くで草を食べるヒツジ≫
中国政府は、来月開幕する北京冬季五輪は、動力源を100%風力と太陽エネルギーで賄う五輪史上初の大会になると明言し、電力供給量を拡大するための設備を多数建設してきた。だが、その過程で一般市民は「土地を収奪」されていると活動家は指摘する。
首都・北京に隣接する河北省の黄郊村に住む龍さん一家は、農地の半分以上を広大な太陽光ファームに提供した。収入はわずかとなり、冬場はトウモロコシの皮や穂軸などを燃やして暖を取っている。
電力会社に土地を25年間貸し出すことになり、提示された年間のリース料は1畝(ムー、約667平方メートル)当たりわずか1000元(約1万8000円)だった。
「同じ場所でトウモロコシを育てれば、倍以上稼げるのに。土地を失った今は日雇い労働で食いつないでいます」
中国は、風力タービンと太陽光パネルの世界最大の生産国だ。北京冬季五輪は、グリーン技術で世界市場を目指す同国が成果を披露する機会になるとみられている。
五輪会場に安定した電力を供給し、北京の冬のスモッグを解消するため、河北省には巨大な発電所が建設された。この1か所で生産されるクリーン電力は、年間140億キロワット時。スロベニアの年間エネルギー消費量に匹敵する。
しかしグリーンエネルギーブームによって、龍さんや、同じ村に住む皮さんら農家はさんざんな目に遭わされた。
皮さんによると、村民は中国の電力大手、国家電力投資集団(SPIC)が建設した太陽光発電パークに土地を貸す契約を無理やり結ばされた。AFPも契約書を確認した。
同意しないと警察官に殴られたと皮さんは話した。「入院する羽目になるか、拘束される人もいます」

■「マフィアと変わらない」
皮さんは40日間、拘留された。龍さんも抗議行動を起こした後、「違法な集会に参加し、治安を乱した」という罪状で9か月間収監された。
「これじゃマフィアと変わりませんよ」と皮さんは言う。「不満を漏らすと、弾圧されて収監され、刑に服することになります」
黄郊村を管轄する保定市の農村部の平均可処分所得は、年間1万6800元(約30万円)だが、龍さんや皮さんの収入は到底そこまで届かなくなった。
村近くにあるSPIC太陽光設備の電力は五輪会場に直接供給されるのかというAFPの質問に対し、同社は回答しなかった。
一方、五輪会場の一つとなる張家口市当局は、2015年に五輪の招致に成功して以来、同市は「ゼロからスタートして、中国最大の非水力再生可能エネルギー基地に変身した」とうたっている。
河北省の他の地区でも、公的助成金に支えられた再生可能エネルギー事業が加速され、五輪開催前に大気汚染を削減する取り組みが急ピッチで進められている。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、風力や太陽光発電事業で懸念される人権問題で多いのは、「強制退去、不法な土地収用、それに伴う生計手段の喪失」だとしている。
中国は2030年までに、電力源に占める非化石燃料の割合を25%まで増やす考えを示している。そのためには、風力と太陽光の容量を現在の倍以上にしなければならない。しかしその結果、ますます土地が収用されることになると環境活動家は指摘している。
政府は冬季五輪絡みで意欲的な目標を掲げているが、環境活動家がその方針に疑問を投げ掛けると大きな圧力をかけられる。数人の活動家はAFPに対し、報復される恐れがあるので、五輪に関する環境目標については、おいそれとは口にできないと明かした。

■さらに3万~4万平方キロの土地が必要に
政府は昨年9月、グリーンエネルギー開発などの環境保全事業で土地を接収された場合の賠償について厳しい規定を発表した。
環境に配慮した開発を促進している再生可能エネルギー専門家委員会の事務局長、李丹氏は、同委員会でも、占有してはならない農地、特に耕作地については明確に定めていると主張した。
「これは、越えてはならない一線です」
耕作地が再生可能エネルギー事業に使用される場合、温室への電力供給など、恩恵を共有する制度が導入されるべきだという。
しかしAFPが取材した農家の証言によると、企業は農地を荒れ地と申告して規制を逃れている。
張家口で農業をしている徐万さんは、五輪開催に向けた太陽光発電設備の建設で土地を奪われたと話す。
相手側の企業には、使用できない土地だと言われたという。「でも、農業にはすごく適した土地なのです」と徐さんは言う。
「1畝当たり3000元(約5万4000円)を支払う話になっていたのに、結局何ももらえませんでした」
徐さんの村に太陽光設備を設置した張家口億源新能源開発はコメントの求めに応じなかった。
中国工程院の研究者、江億氏は国営の業界ニュースサイトで、中国では再生可能エネルギーの需要を満たすために、さらに3万~4万平方キロの土地が必要になるとの見通しを語っている。
「どこからそれだけの土地を集めるのか。それが、この業界の発展にブレーキをかける最大の問題になっています」【翻訳編集AFPBBNews】

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