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秋の夜長のパリ。語り合う、名前すらも知らなかった二人

幻冬舎ゴールドライフオンライン

※本記事は、葛生みもざ氏の書籍『Red Vanilla』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

初めての語らい

パリのカフェはテラス席の椅子が向かい合わせではなく、外に向かって同じ方向に置かれている。なんでも日照時間が少ないので、なるべく太陽を浴びようとの意識から生まれた文化だと何かの本で読んだことがある。

私たちは一番前の席に並んで座り、その前には小さな丸いテーブルが置かれている。テラス席にはどこもたいてい赤い布製の庇が下りて、そこに電気ストーブみたいなものが取り付けてある。

「上から暖かいのが降りてくるよ。だから寒くないよ」と彼が教えてくれた。

「何を飲む?」

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「何でも。同じものがいいわ」

片言の英語で答える。彼は赤ワインを二つ注文し、私たちは秋の夜長の初めての語らいを得たのだった。

「あ、名前を書こう」

と彼が言ってくれたので、私はバッグの中から手帳を取り出す。ぱらぱらとめくると娘が小学生の頃に覚えたての平仮名で書いた短歌があった。目ざとく見つけた彼は、はっと顔色を変えた。子供の字だとわかったようだった。

「どこに書いたらいい?」

「どのページでも」と空白のページを開くと彼は自分の名前を綴ってくれた。ZAFAL RIYAADEという名前だった。

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