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【いとしい思い出たち】ムッキーちゃんと工学博士

幻冬舎ゴールドライフオンライン

※本記事は、佐東千津氏の書籍『午後の揺り椅子』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

名前に……

月に二回のノルディックウォーキングに一年ほど参加している。

夏、植物にも詳しいインストラクターの斎藤さんが、道の端っこに咲く白い小さな花を「ハキダメギク」と教えてくれた。五ミリほどのかわいい花でよく見ると五枚の花弁があり、それぞれの先が三つに分かれた繊細なつくりである。かの有名な牧野富太郎博士が、掃き溜めで見つけたからと名づけたのだそうだ。

秋、のんびり一番後ろを歩いていた友人と私は、道端の少し奥の木にきれいな花を見つけた。それは鮮やかな濃いピンクの花びらで、真ん中に青い玉が光っていた。幾つかの塊になって咲いている。枝先を折り、先頭の斎藤さんを目指して一生懸命歩いていった。

「これ何の花ですか」

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「花じゃなくて実ですよ。花は真夏に咲くけれど、今年は見られませんでしたね。ほら春に葉っぱを採って、においを嗅いだ臭い木があったでしょ。臭いからクサギ。あれです。ピンクは花びらじゃなくて萼(がく)です」

思い出した。彼が葉っぱをくしゃくしゃと丸めて、みんなににおいを嗅がせてくれた。ちょっと変なにおいがした。あのクサギだったのか。そのまま胸元に飾りたいようなすてきなブローチである。

センスの悪い名前の極めつけは、ヘクソカズラだと思う。葉を一枚採ってにおいを嗅いでみた。そんなに臭くはない。実は鶯色と茶色が混ざったような色だが、光沢がある。割ってみた。クサーイ! 名前の通りだ。夏にフェンスに絡まって咲く花を見たことがある。1センチくらいの白い釣鐘形で、先は五つに分かれている。内側の奥が紫色。きれいだと思った。

葉が臭いからクサギ、実が臭いからヘクソカズラ。一つの特徴を捉えてはいるけれど、もっといいところ、きれいなところもあるのにと思う名前である。ハキダメギクの名については本人に全く責任がない。花や木に詳しいわけではないけれど、かわいそうすぎるので、彼女らに代わってちょっと言ってみた。

「名前に納得できません」

ムッキーちゃん

友人が遊びに来たときのことである。八朔(はっさく)とムッキーちゃんを手に私は言った。

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