なぜ新宿駅は「世界一忙しい駅」なのか?
なぜ新宿駅は「世界一忙しい駅」なのか?
「都会のダンジョン」とも、外国人観光客が「100%迷子になる駅」ともいわれる新宿駅。そのややこしさや迷宮度は有名ですが、「世界一忙しい駅」のため、それも仕方のないことなのかもしれません。


 では新宿駅は、なぜ「世界一忙しい駅」なのでしょうか。考察してみたいと思います。

●新宿駅は「世界一乗降客数の多い駅」

 新宿駅は、1日の乗降客数・平均364万人をもって、「the world’s busiest station(世界で最も忙しい駅)」として、2011年にギネスに認定された、世界一乗降客数の多い巨大ターミナル駅です。

 統計の仕方に統一性が取りにくいため正確な比較やランキングは難しいのですが、暫定的な2~10位は以下のとおりです。2.池袋駅、3.大阪駅・梅田駅、4.渋谷駅、5.横浜駅、6.名古屋駅、7.東京駅、8.品川駅、9.高田馬場駅、10.難波駅(「駅別乗降客数ランキング」より)。

 なお、上記のランキングは日本のデータをもとに作成されていますが、参考となる他の世界の駅を対象とした統計と比較しても、上位約20位は日本が独占しています。

 そして2位の池袋駅ですら271万人です。このことからも、新宿駅はダントツで世界一忙しい駅であることがわかります(ただし、2008年の統データを参照にしているため、こちらの新宿駅のデータは360万人となっています)。

●放射状の9駅と6方向に繋がる地下通路

 一級建築士で昭和女子大学環境デザイン学科准教授の田村圭介氏は『新宿駅はなぜ1日364万人をさばけるのか』で、新宿の特徴に「新宿」とつく駅が10もあることをあげ、「新宿駅(JR各線、京王線、小田急線、丸ノ内線、都営新宿線、都営大江戸線)はまるで9人の子どもに囲まれた親のよう」と表現しています。

 新宿駅の“9人の子ども”は以下になります。
1)新宿御苑前駅(丸ノ内線)
2)新宿三丁目駅(丸ノ内線、副都心線、都営新宿線)
3)新宿西口駅(都営大江戸線)
4)新線新宿駅(都営新宿線、京王新線)
5)西武新宿駅(西武新宿線)
6)西新宿駅(丸ノ内線)
7)西新宿五丁目駅(都営大江戸線)
8)東新宿駅(都営大江戸線、副都心線)
9)南新宿駅(小田急線)

9人の子どもたちは、親である新宿駅を中心に放射状に繋がり広がっています。

 さらに子どもたちのなかには、“地下通路”で繋がっている駅もあります。新宿駅東側では新宿三丁目と西武新宿駅、西側では西新宿駅・新宿西口駅・新線新宿駅です。この5駅に、「新宿」はついていませんが地下通路で繋がっている都庁前駅を加えた7つの駅を結ぶ“新宿駅大地下網”とも呼べる一大ネットワークを、田村氏は「大新宿駅」と称しています。

 そして「大新宿駅」を「地下通路で繋がった七つの駅が、大きな複合体として機能しているとともに、この複合体は駅施設だけでなく、商業施設、文化施設、娯楽施設、宿泊施設と連携し、絡み合い、そこに大量の人々が流れることでその全体をつくっている」と述べています。

●内藤新宿から始まった「大新宿駅」

 ではなぜ、「大新宿駅」にはこれほどまでにヒトやモノが集まるのでしょうか。

 『完全版 新宿駅大解剖』によると、まずは江戸時代に、新宿は甲州街道の宿場町・内藤新宿として栄えたことがあげられています(ただし、内藤新宿の位置は現在の新宿三丁目駅付近)。そして、国有鉄道となる新宿駅は、1885(明治18)年に日本鉄道品川線(現・山手線)が開通し、当時の角筈村(現在の西新宿あたり)に設けられました。

 そして、国鉄の駅が新宿にできたことにより、国鉄と連絡するために私鉄のターミナルが隣接されるようになり、上記のような「大新宿駅」となっていきました。同書には「新宿駅は国鉄~JRを中心に発展してきたと言っても過言ではない」と書かれています。

 他方、1923(大正12)年に発生した関東大震災によって都心部が壊滅状態となったため、地盤が固くあまり被害を受けなかった新宿駅近辺に人々が移転したことや、1991(平成3)年の都庁の新宿西口への移転、2016(平成28)年のバスターミナルを集約した「バスタ新宿」の開業、そして新宿駅開発にともなう周辺の開発や再開発、高層ビルの建設などにより、さらに新宿駅の利用者は増えていった結果、「世界一の駅」となったのです。

●「大新宿駅」は増殖し続けるのか?

 建築家の田中智之氏は、新宿駅の解体ドローイングに取り組んだ際、「新宿駅には“全体図”がない」驚愕の事実に直面したそうです(『階段空間の解体新書』)。

 田中氏は、新宿駅をはじめとした主要駅の特徴を「もともと平面的なものであった駅が需要に応じて立体化する過程では、空間を分割というよりは、必要な空間をツギハギのように継ぎ足していく傾向がある。<中略>必要なものを必要に応じて加え、オープンエンドに拡張・成長していくいわば“無限領域拡張型”とでもいえよう」と述べています。

 複雑系では、より多くのハブとなる場所に力が集まるといいます。「新宿は今も“増殖”を続けている」と田中氏はいいます。オープンエンドに増殖し続ける「大新宿駅」は、世界一を更新し続けるのかもしれません。

<参考文献・参考サイト>
・『新宿駅はなぜ1日364万人をさばけるのか』(田村圭介・上原大介著、SB新書)
・『完全版 新宿駅大解剖』(横見浩彦監修、宝島社)
・『階段空間の解体新書』(田中智之著、彰国社)
・ギネスワールドレコーズ:Busiest station
http://www.guinnessworldrecords.jp/world-records/busiest-station
・Hatena Keyword:駅別乗降客数ランキング
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B1%D8%CA%CC%BE%E8%B9%DF%B5%D2%BF%F4%A5%E9%A5%F3%A5%AD%A5%F3%A5%B0

(更新日:2018年9月19日)

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