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唯一の友人の死…アル中男性が初めて気が付いた「本当の孤独」

幻冬舎ゴールドライフオンライン

※本記事は、田中敏之氏の書籍『追憶 ~あるアル中患者の手記~』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

悲の断片

第二節 友の死

Kを失って、私は独り孤独の中に取り残(のこ)された。

「寂(さび)しいでしょうね。いつも一緒(いっしょ)だったのに」

すれ違う人はそんな言葉を私に投げ掛(か)けていった。しかし、私にはそれがむしろ思い掛(が)けないことだった。私はそれまで自分が彼に友情を抱(いだ)いていたことを意識していなかった。私は自分が彼から離れて、孤独を保(たも)っているように思っていたのだ。

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しかし、それが間違(まちが)いだったことは、時と共に明らかになっていった。振り払(はら)っても、振り払っても、彼の思い出ばかりが懐(なつ)かしく思い出されて、こみ上げてくる寂(さび)しさをどうすることもできなかった。

それから一年余り、私は話す相手もなく、彼と遊んだ思い出の場所を独(ひと)り訪(たず)ねて回った。そして、所在無(しょざいな)く酒に浸(ひた)った。孤独の酒は、とても冷たくて、苦(にが)かった。いっときそれが私を慰(なぐさ)めることがあったにせよ、死に向かった流れであることを止(や)めようとはしなかった。

私は酒と共に倦(う)み疲れ、果ては住む家を失い、亡霊のように田舎の山野をさ迷い、雪深い山陰(さんいん)の冬を過ぎ越していった。寒さは一入(ひとしお)で、日に一度は湯原の露天風呂に通った。しかし、湯に浸(つ)かっても、かつてのように暖まることはもうなかった。それほど身も心も芯(しん)まで凍(こご)えていたのだろうか。

そして、春になって、行き倒れになるところを助けられ、大阪のアル中の施設に預(あず)けられた。あれから回復の道を辿(たど)って七年、私はやっとKの墓参(はかまい)りに行けるまでになった。

(追記)

八年前、Kの墓は犬挟(いぬばさり)峠(とうげ)の山裾(やますそ)にあって、墓土(はかつち)に立てられた白木の墓標や卒塔婆(そとば)は、しばらくは艶(つや)やかに輝いていたが、日ごとに色褪(あ)せて黒ずみ、雨の日には暗く憂鬱な影を帯びた。私は彼の墓を尻目(しりめ)に、独(ひと)り犬挟(いぬばさり)峠(とうげ)を登っていくと、彼と遊んだ蒜山(ひるぜん)高原や湯原湖のほとりを、当てどなくさ迷った。

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