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【小説】夢の中の病院で再会した男…手渡されたのは一冊の本

幻冬舎ゴールドライフオンライン

※本記事は、野村あさ子氏の書籍『夢解き』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

夢解き

ある日、私は土砂降りの雨の中を歩いていた。水たまりの中を歩いても、何故か全く水が跳ねない。靴も濡れない。辺り一面が灰色だ。道の突き当たりにコンクリート打ちっぱなしの建物がある。灰色の世界の灰色の四階建ての建物。気味が悪いと思う心とは裏腹に、私は何かに引っ張られるように、その無愛想な建物に入った。入るとすぐに「ここは病院だ」と私は思った。病院の看板など無い。しかし玄関から入ってすぐの、広くて清潔で淋しいスペースが、病院の待合室だということを感じさせた。待合室には何人か順番を待つ人がいるが、どの人の顔もよく見えない。

(受付はどこかしら)

辺りを見回すと、目の前に受付が現れ、男性の後ろ姿が目に入った。見たことのあるうなじである。

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(お父さん!)

私は何故こんな所に父がいるのかと驚くと同時に、相手に気づかれないうちにここを出ようと思った。ここで、「お父さん、何してるの?」などと親しげに声をかけるような仲ではない。しかし私が踵を返すよりも早く、男性が振り返った。

「よう、なほ子さん、」

男性は朗らかな笑顔を見せながら、私に向かって少し手を上げた。

「かっ……んざき、さん」

驚きすぎて、変な声になってしまった。父だと思ったその人は静真であった。

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