こんにちは、Yohです。
今回は縁あってBOX LLCの共同創業者である阿部の連載「FINEPLAY INSIGHT」に寄稿させて頂くことになりました。
僕はBOX LLCの経営を通じてマーケティングやブランディングに関するコンサルティング活動を行う傍ら、自ら2018年に立ち上げたスタートアップでストリートプレイヤー向けの動画管理アプリ-PAARK-および映像作品販売マーケット-PAARK Market-を運営しています。
その中で、音楽著作権がカルチャーシーンに与えるインパクトについて考える機会が非常に多く、皆さんにもこの場を借りてお伝え出来ればと思い、今回のテーマを設定しました。少し難しい話も多くなるかもしれませんが、是非最後までお付き合い頂けると幸いです。
音楽著作権とは?
そもそも「音楽に関する著作権」とは何か、非常に曖昧な理解をしている方々も多いのかなと思います。音楽に関する著作権とは簡単にいうと、作曲家、作詞家、演奏家、歌手などの楽曲を制作するにあたって関与した人々に「これを作ったのは君たちだから、この楽曲を独占的に利用して良いよ」という権利のことです。だからこの楽曲を作った人たち(以下「著作者」といいます)以外の人が「この楽曲を使って踊ったり何かしたい!」という場合には、基本的には著作者に利用料を支払う必要があります。
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しかし、楽曲を利用したい人がその都度著作者全員の許可を得るなり利用料を支払うことというのは、双方の手間を考えると現実的には不可能です。そのために存在する団体が、JASRACやその他の著作権管理団体です。「著作権プラットフォーム」というとわかりやすいでしょうか。JASRACを例にとると、音楽を利用したい人はJASRACにお金を支払うことで使いたい音楽を利用することが出来、著作者にはJASRACを通じてお金が支払われるという仕組みになっています。この仕組みのおかげで、しっかりと利用者から著作者に著作権料としてお金が流れる原理になっています。
ややこしいのが、著作隣接権
この著作権だけでも既に難しい話になってきていますが、それよりもさらにややこしいのが「著作隣接権」です。著作隣接権とは、音楽を作った著作者本人ではなく、例えば音楽をCDに録音して複製する機能を持つ音楽レーベルなど、音楽を世の中に伝えていくのに必要な役割を果たした人や会社に発生する権利です。音楽レーベルに所属しているアーティストが新曲をリリースする場合を例に考えると、アーティストの新曲を録音してマスターテープを制作し、それをディストリビュートする役割を担っている音楽レーベルには代表的な著作隣接権の一つである「原盤権」という権利が発生します。簡単にいうと「マスターテープを制作する」という業務を担った音楽レーベルに付与される権利なので、「その録音された音源」を利用しようとする楽曲利用者は、この原盤権を持つ音楽レーベルの許諾を取る必要があります。
この原盤権がストリートシーンにとっては実は非常にやっかいなんです。なぜなら、原盤権に関しては前述のJASRACのような管理団体が広くは存在しないからです。一部、NexToneなどの団体が音楽レーベルとの契約のもと原盤権を管理している例もありますが、基本的には音楽レーベルが原盤権を保有していることがほとんどです。すなわち、基本的にはいかにJASRACにお金を支払って著作権侵害をクリア出来ても、音楽レーベルの許諾を取らないと原盤権を侵害してしまうことになるので、楽曲を利用したいストリートシーン側からしてみると、その楽曲を使って踊ったり大会を催したりすることが出来ないのです。
ちなみに著作権および著作隣接権ともに、私的利用に関しては許諾が不要となっています。みなさんが自宅でCDを聞いたりしても怒られないのはそのためです。一方で、お客さんからお金をもらったうえでその音楽を演奏したり、歌ったり、その音楽で踊ったりする場合には全て著作権もしくは著作隣接権に関する許諾を得る必要があります。許諾を得ないでやってしまった場合には、権利侵害として権利保有者である著作権者もしくは音楽レーベルに訴えられる可能性が出てきてしまいます。
YouTubeで「歌ってみてみた」動画が投稿出来るのはなぜ?
ここで少し話が脱線しますが、YouTubeでシンガーや歌うまさんによって投稿された「歌ってみた」動画が削除されずにYouTube上で閲覧可能な状態で残っているのはなぜでしょうか。
それは、YouTubeがJASRACなどの著作権管理団体にお金を払っており、かつ、音楽レーベルとの提携を通じて構築した「Content ID」という楽曲データ管理システムで原盤権に関する管理を行なっているからです。すなわち基本的にはYouTubeでは著作権および原盤権の双方に関して、ユーザーが動画をあげても権利侵害が起きないような仕組みを作ってくれている、ということになります。