お笑い芸人としても活動している沖田は、地下ライブを行っていても以前よりお客さんが増えたと話す。「エンタメをほっしすぎて、お客さんが地下ライブにも来ている」と笑い、「“エンタメに触れたい”という想いを感じる」と観客の気持ちに寄り添うと、上田監督も「観る側も、作る側も前のめり」と同調。本作の制作過程でも「初めてのことに挑戦してやろう、やりきってやろうと思っていた」そうで、「コロナ禍で延期になったり中止になったりする映画があるなかで、“作る”という場を与えてもらえて、自分たちも救われた。やっぱり“作りたくなるものなんだ”とも思った」とものづくりをしながら、自身も背中を押されたと話す。
最新技術を使用することも含め、撮影が「とても楽しかった」と充実感をにじませた上田監督は、「この映画を観て、もっと映画を好きになったり、もっと知りたいと思ったり、作りたいと思ってもらえたらいいなと思って作った」と本作に込めた想いを吐露。この日は、そんな上田監督に対して観客から質問を受け付けるひと幕も。「伝えたかったメッセージは?」と聞かれると、上田監督は「最初は映画史125年を10分で駆け抜けるような物語を作ろうというところから始まった。“この物語で伝えるべきことはこれなのかな”と、脚本を書き直しながら自分が知っていく感じです。なにを伝えたいかということはとても難しいけれど、それは受け取ったみなさんが感じたことが正解なんじゃないかと思う。またお客さんに語ってもらうことで、映画がより豊かになっていくはず」と観客の反応が映画を豊かにし、それを感じることが自身にとっても喜びだと語っていた。
最後に上田監督は「僕にとっては、映画はワクチンのようなもの。心のワクチン」と告白。「映画館にワクチンを打ちにきているんです。人によって効く薬、効かない薬があるように、人によって効用が違うという感じもある。映画やエンタテインメントは心を整えたり、柔らかにしてくれたりする。フィクションではあるけれど、現実を変える力を持っているものだと信じている」と心を込め、会場から拍手を浴びていた。