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江戸琳派に先取りされていた「現代芸術」の奇跡 根津美術館 重要文化財指定記念特別展「鈴木其一・夏秋渓流図屏風」

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不思議な絵だ。「異様」とすら言えるかも知れない。あえて限定された色数が濃厚かつフラットに塗られ、背景は一面の分厚そうな金箔。あまりに強烈な色彩の取り合わせに、「毒々しい」と感じる人もいるかも知れない。

鈴木其一 夏秋渓流図屏風 江戸時代・19世紀 根津美術館蔵 重要文化財 左隻(部分)
※以下会場と展示作品の写真は主催者の特別な許可により展覧会紹介のため撮影。撮影:藤原敏史

いやそれを言うならいっそ「まがまがしい」と形容する方が相応しい、とさえ個人的には思う。あまりに濃厚な世界観の中には、なにかこの世のものならざる空気、異次元の、狂気にも近いなにかさえ宿っていそうだ。だからこそ、この屏風は観る者の目を釘付けにする。

なんの情報も与えられずに突然そこに立たされたとしよう。果たしてどれだけの人が日本の、それも19世紀前半つまり前近代のいわゆる古典・伝統絵画だと、すぐに言い当てられるだろうか? 強いて言えば屏風なんだから日本なんだろうとは考えられはするだろうが、筆者自身は初めて見た時には愕然というか唖然というか、「美しい」などの判断以前にただずっと目が離せなかったのは、その「異様さ」ゆえだったかも知れない。なんの光景が描かれた絵なのか、樹木が群生する山中を小川が流れていると把握・認識するだけでも、しばらく時間がかかったような記憶もある。

鈴木其一 夏秋渓流図屏風 江戸時代・19世紀 根津美術館蔵 重要文化財 右隻(部分)

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画面の下部にはフラットに、濃厚にというか「べったりと」と言ってもよさそうな群青が広がっている。近づいて見れば、そこには無数の細い金の線が複雑に曲がりくねっているのだが、その繊細さは遠目では見えにくい。

その線から「水」「水流」「渓流」をこの絵に読み取る前に、あまりに原色それ自体の存在感が強いので、青だから水だろうという「約束事」を思い出すだけでも、しばらく時間がかかってしまいそうだ。

鈴木其一 夏秋渓流図屏風 江戸時代・19世紀 根津美術館蔵 重要文化財

地面であるはずの緑の色面も、苔か下草に覆われているのをそこに見る前に、フラットな緑青に目が囚われてしまう。

すべてが静止し、どこか異次元の世界に凍りついているようでもある。

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