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超難題の修理依頼にも、無料かつ即興で対応する世界のリペア集団とは

パラサポWEB

コロナ禍という試練の中、多くの感動をもたらしてくれた東京2020パラリンピック。その大会を裏で支えたのが、選手の義肢や装具、車いすなどを無料で修理・メンテナンスをするサービスを行ったオットーボックという会社だ。世界中から集まった専門スタッフたちの驚くべき仕事内容について、オットーボック広報ご担当の佐竹光江さんと、技術者として同大会に参加した中島浩貴さんにお話を伺った。

修理が無料なのにはワケがある

オットーボック・ジャパン株式会社 マーケティング・コミュニケーション所属の佐竹光江さん

オットーボックとはドイツに本社がある総合医療福祉機器メーカーで、義肢や装具を作る業界を牽引してきた。同社ではその技術を活かし、1988年のソウル大会から毎回夏と冬のパラリンピックにおいて、アスリートたちをサポートしている。今回の東京2020大会でも、世界24カ国から106名のスタッフが集められ、22言語で対応。選手の義足や車いすをはじめとする、あらゆるものを無料で修理・メンテナンスした。このサービスが無料であることには、きちんとした理由があると中島さん。

「もしも料金が発生してしまうと、それを払える国と払えない国の格差がひらいて競技の結果に影響が出てしまう可能性があります。すべての国がメカニックを帯同できるわけではないですし、そういった金銭面でのアンフェアをなくすためにも、選手からはお金はいただきません」(中島さん)

実際問題として、修理用のパーツが手に入らない、技術者がいない、選手やチームの資金が足りないなどの理由で、自国で満足なサポートが受けられない国はたくさんあるという。

「前大会の時に我々が修理してから、一度も修理されていない同じ道具が持ち込まれることもあって『これって、前回修理したやつだよね?』などと言うこともあります」(中島さん)

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しかし、修理と一言で言っても、パラアスリートの装具や競技に使う道具はさまざま。しかも競技の直前、場合によっては競技中に、車いすや競技用の装具が壊れてしまうこともある。そんな緊急事態に備えるために、オットーボックでは万全の準備を整えて挑んでいるという。

東京2020大会、選手村内に設けられたリペアセンターの修理風景。写真提供:オットーボック18トンの工作機械と1万7300個の修理部品を用意

「東京2020大会のために、ドイツの本社から船便でグラインダーや溶接機などの工作機械を全部で18トン運び入れました。選手村に700平米の修理サービスセンターを設置した他、14の競技会場にリペアブースを設けて対応したんです。多様なリクエストに応えるため用意した修理部品は全部で1万7300個です」(佐竹さん)

その数を聞いただけで修理の規模の大きさがうかがえるが、こうしてオットーボックのスタッフたちは大会期間中、朝8時から夜の11時までシフトを組んで、あらゆるリクエストに対応。時には試合時間が遅くなり深夜2時過ぎまで待機することもあったそうだ。

そんなものまで? 想像を超えた修理の依頼

東京2020パラリンピックに技術者として参加した、オットーボック・ジャパン株式会社モビリティソリューションズ事業部の中島浩貴さん

パラリンピックの選手のための修理やメンテナンスと聞くと、車いすのタイヤのパンクや、義足の不調などを想像するが、実際の内容を聞いてみると、想像をはるかに超える仕事の領域に驚かされた。たとえば、大会の開会式や閉会式で各国の旗手が入場するシーンを思い浮かべてみて欲しい。先頭には国旗を持った旗手がいるはずだが、パラアスリートの場合、車いすや義手の選手もいるため、国旗を両手で持つことができないケースがある。そのためフラッグホルダーをゼロから手作りしたという。

東京2020パラリンピックにて、オットーボックオリジナルのフラッグホルダーを使って旗手を務めるパラアスリート ©︎Getty Images Sports

「フラッグホルダーが必要な旗手の方の車いすが、どんな形状かは当日まで分からないので、シンプルなものを作って用意します。そして当日にその場で取り付けるんですが、旗の重さで倒れてしまうとか、ホルダーのせいで車いすが漕ぎづらいということがあってはいけないので、どう取り付けるかはその場で判断します。これには経験がものをいいますね」(中島さん)

また、東京2020大会では両肩を離断した方が旗手を務める国が2カ国あったそうだ。事前に専用のベルトが準備されていたが、実際に取り付けてみるとバランスよく旗を持つことが難しかった。

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